院長インタビュー

浜脇整形外科病院は「忠恕の心」で広島の地域医療に貢献する整形外科の総合病院

浜脇整形外科病院は「忠恕の心」で広島の地域医療に貢献する整形外科の総合病院
浜脇 澄伊 さん

医療法人社団おると会 理事長

浜脇 澄伊 さん

浜脇整形外科病院は、広島市役所の近隣に位置する、全国的にも珍しい、整形外科単科の専門病院です。1978年の開設時には41床だったベッド数も、現在は160床を数えるまでになりました。施設の特徴や取り組みについて、創業者で会長の浜脇純一先生と理事長の浜脇澄伊さんにお話を伺いました。

浜松整形病院

浜脇整形外科病院が目指してきたのは、開設以来一貫して、「忠恕(ちゅうじょ:真心と思いやり)の心」に基づいた「整形外科の総合病院」です。「単科」の「総合病院」と聞くと、奇妙に思われるかもしれません。しかし現在、整形外科は極めて専門化が進んでいるため、最新医療を提供しようと思うと一人の医師がカバーできる領域はかなり狭くなります。当院は、部位別に特化した整形外科医を集め、すべての整形外科疾患に対応できるようになっています。そういう意味で整形外科の「総合病院」なのです。ここ数年でようやく整形外科の総合病院を名乗れる水準に達したと感じています。

現在、整形外科医は13名が常勤しています。当直もこの13名が当たります。医師の負担軽減を目的に、当直専門の非常勤医の採用を検討した時期もありました。しかし当の整形外科医たちが反対したのです。理由は「病棟をみない医師に当直させるのは、患者さんに対して無責任だ」というものでした。患者さんに対して思いやりや責任感の強い医師がそろっています。

常勤13名中、4名は脊椎を専門としています。この規模の病院では類をみないのではないでしょうか。また非常勤の整形外科医も2名います。麻酔科医も常勤で3名が勤務しています。

年間手術数は約1,700件。内訳は外傷が600件強、脊椎と関節の手術が350件弱、手の外科が100件弱、そのほかが350件強となっています。平均在院日数は16日前後です。医学的にお断りすべき理由がない限り、全例を引き受けています。地域への貢献を重視しているためです。患者さんは今となっては広島県内だけでなく、山口県や島根県からもたくさんいらしてくださいます。 

初診の患者さんは「整形外科総合診療医」としての診察をしています。たとえば患者さんが腰痛を訴えたとしても、その原因はさまざまです。そこで最初に「整形外科総合診療医」が基礎疾患を診断するのです。特に、浜脇純一会長が整形外科医となった40年ほど前は、整形外科は今ほど細分化されていなかったため、一人で全患者を診ていました。そのため総合診療医的な診断が可能なのです。

また高齢の患者さんが増えたため、整形外科疾患以外の合併症を持つ患者さんも多くなりました。回診していても「本当に整形外科の専門病院なのか?」と思うほどです。そこで内科疾患に対応できるよう、常勤の消化器内科医、そして非常勤の循環器内科医と呼吸器内科医を配置しました。さらに院内で対応できないと判断すれば、速やかに地域の他医療機関へ紹介します。設立時から単科病院でしたので、地域連携はごくごく自然に取り組んできているため、他科を含める医療機関との連携に心配はありません。

浜松整形外科病院で治療させていただくのは、入院加療が必要な患者さんと救急患者さんです。一般外来は、同じ医療法人社団(おると会)内の「浜脇整形外科リハビリセンター」が担当します。外来と入院の機能分化をすることにより整形外科医が自身の業務により集中し、手術技能の向上や十分な自己研鑽を積む時間を確保する環境を整えています。

浜松整形病院

 

浜松整形病院

浜脇整形外科病院は、最新技術の習得にも熱心です。たとえば、大阪大学整形外科の協力を得て、最新鋭の「ナビゲーションシステム」を導入しました。広島では当院だけです。このシステムと当院ですでに用いていた術式を組み合わせた結果、患者さんの負担を極限まで抑えられる手術が可能となりました。これに限らず、整形外科医全員が、自分の担当領域については常に、最新の技術に精通し、臨床に生かせるよう努めています。地方都市では珍しいのではないでしょうか。

そしてその結果は積極的に、国内外の学会で発表させています。整形外科の総合病院である以上、臨床は常に先頭を走っていなくてはなりません。先生方には、大学の整形外科教室以上の高度医療を行えるようにハッパをかけています。さらに、整形外科単科病院5施設が集まっての勉強会も続けています。こちらには、学会よりも身近な症例を検討します。今では、医師以外の医療スタッフ向け勉強会も同時に開催しています。

そのためでしょうか。大学からの派遣でなく、浜脇整形外科病院で整形外科を勉強したいといらっしゃる先生も増えてきました。現時点では6名です。派遣を受けている大学は、徳島大学と産業医科大学、大阪大学です。皆仲良く、学閥バリアフリーでよい意味で切磋琢磨(せっさたくま)しています。

浜松整形病院

地域を対象とした活動も積極的に行っています。その一つが「からだの音」プロジェクトです。きっかけは、学校の先生たちの声でした。「転びやすい子が増えた」、「たわいのないことで骨折する子が増えた」というような話を、数年前から頻繁に聞くようになったのです。跳び箱に手をついただけで骨折するお子さんさえいるそうです。

整形外科専門病院として、からだについての正しい情報を提供することでした。お子さんの正しい発達・発育をサポートできると考えたからです。そこで誕生したのが、「からだの音 for kids」という冊子です。毎年5万5,000部を作製し、私たちが直接、広島市内の保育園と幼稚園、そして小学校を中心に届けます。直接伺うことにより、私たちの意図を正しく先生方にお伝えできるうえ、新たな課題を知ることもできます。

加えて、「からだの音」プロジェクトの一環として、子ども向けの体操教室も開催しています。理学療法士が講師となり、月に3回、浜脇整形外科リハビリセンターで行っています。また、お願いされれば、その都度、出張教室も実施しています。子ども向け体操教室はそろそろ定着してきたので、今後はそれを手がかりに、対象を親と祖父母まで広げた「3世代元気にしようプロジェクト」へ発展させたいと思っています。また、ロコモティブシンドローム予防のための体操教室も実施しています。こうした活動が病院のブランディングにもつながっています。

浜脇先生

地域への貢献としてはこの他に、ジュニアアスリートを対象としたフィジカルチェックや講習会を行っています。中学校や高等学校へ、理学療法士が年に1回、伺う形です。また、地元実業団スポーツチームのサポートにも力を入れています。日頃のチェックだけでなく、試合にトレーナーを帯同させたりもしています。 

国際貢献にも取り組んでいます。インドネシアからのレジデント(研修医)の受け入れです。インドネシアでは今、整形外科が外科一般から独立した分野に分化し始めました。浜脇整形外科病院が開院した頃と同じ状況です。その頃を知る者がいる機関として、知識の伝達を、医学への恩返しという形でさせていただいています。

40年を超える年月を経た今、医療の源は「忠恕の心」であると、職員一同があらためて実感しています。浜脇澄伊新理事長のもとで浜脇整形外科病院、あるいは医療法人社団おると会として、今後も「忠恕の心」を忘れず、より一層、地域社会に貢献していきたいと考えています。

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