院長インタビュー

地域医療の中核を担う三原赤十字病院が目指す医療と病院のあり方

地域医療の中核を担う三原赤十字病院が目指す医療と病院のあり方
渡邉 誠 先生

三原赤十字病院 院長

渡邉 誠 先生

この記事の最終更新は2018年03月13日です。

日本赤十字社 三原赤十字病院は、1949年(昭和24年)に三原市立三原中央病院として開院しました。1952年に日本赤十字社に移管して現在の名称に変わり、116床だった病床数も現在では226床に増床しました。開院以来、地域のニーズに合わせて、徐々に病院の規模を広げてきた同院は、三原市の地域医療の担い手でもあります。院長である渡邉 誠先生に、病院の取り組みや今後についてお話を伺いました。 

当院は、日本赤十字社を母体とした、全国に90か所以上ある赤十字関連病院のひとつです。19の診療科を構え、二次救急指定病院、災害拠点病院などの役割を果たしています。

病床の稼働率は80〜90%前後を推移しています。特に内科と外科、整形外科の患者さんが多いです。

当院が位置している広島県三原市は、広島県内でも人口減少と高齢化が進んでいる地域です。地域に根ざした医療を行うため、地域連携を強化しています。年間の紹介数はおよそ3,600件、逆紹介数は2,400件ほどであり、人間ドックの受け入れは、年間約1,900件にのぼります。

時代や地域住民の方々のニーズに合わせて、緩和ケア病床や地域包括ケア病棟、セカンドオピニオン外来、訪問看護ステーションなども開設しています。

 

当院では、「人道・博愛・奉仕」の赤十字精神を大切にし、赤十字病院であることの誇りを持って働いています。このなかでも特に力を入れているのは、「人道」です。人としてのあり方や、患者さんとの関わりを重視しています。

患者さんの思いに寄り添うことのできる医療を提供するため、人間関係におけるスキルはとても重要です。患者さんの権利を尊重しながら、質の高い医療を提供できるよう努めています。

 

当院は、広島県のDMAT(災害派遣医療チーム)指定医療機関に指定されております。この体制を整えているのは、日本赤十字社全体で災害救護を行っているためです。

災害時にはすぐに医師や看護師などの医療チームを派遣できるよう、必要な体制を常に整えています。

 

当院では、住民の方々のニーズに応えるため、この数年で病棟を増改築し、専門の病棟をいくつか開設しています。

ひとつは、2014年(平成26年)に開設した緩和ケア病床です。ここで行っているのは、がんなどの悪性腫瘍の患者さんを対象にした、心身の痛みや生活上の問題など、さまざまな苦痛を和らげるための支援です。病棟は全室個室で、明るく落ち着いた雰囲気づくりをしています。

緩和ケア病床を担当しているスタッフの多くは、専門の研修を終えた方々です。緩和ケアについて学んできた医師や、がん性疼痛看護・がん化学療法看護などの認定看護師資格を持っている看護師などを中心に、他職種のあいだで連携をとっています。

病院での支援だけではなく、地域のかかりつけ医の先生方や訪問看護ステーションなどとも連携して、自宅で生活ができるような支援も行っているのが特徴です。

また、2015年(平成27年)には、地域包括ケア病棟も開設しました。ここでは、ご自宅や施設で生活していて一時的に入院が必要になった患者さんや、急性期の治療を終えた患者さんを対象に治療を行っています。

この病棟で目指しているのは、患者さんの在宅復帰です。医師や看護師といった医療スタッフだけではなく、ソーシャルワーカーや、在宅で関わる地域のかかりつけ医の先生方、訪問看護・介護スタッフなどとも密に連携をとって、患者さんをサポートしています。

 

当院では、地域住民の方向けに出張講座や地域公開講座など、さまざまなテーマで講習や教室を積極的に行っています。

講習のテーマは、病気についての話やAEDの使い方などがあります。2017年9月には、私が肥満についてのお話をする予定です。「痩せたら何かいいことがあるのか?」という副題で、糖尿病や高脂血症、高血圧のことなども絡めてお話しする予定です。

当院が行う講習は、医師や看護師などがテーマに沿ってお話をするだけでなく、実技もお見せしているのが特徴です。たとえば、管理栄養士が出張講座を行った際には、実際に食事をつくる、といったことを行っています。

講習や教室を行うときは、必ず相談コーナーを設けて、参加されている住民の方の相談を受けています。病気の治療だけでなく、予防も重要ですので、なんでもお聞きください。

 

当院が抱える課題としては、医師の不足が挙げられます。現在、嘱託医として勤務している医師は、広島赤十字病院から定年後採用で来ている方たちです。ほかの診療科も、他院から来てもらったり、私の知り合いである医師などに協力をしてもらったりしながら、医師の数を確保しています。

当院の状況をみると、外来を受診する患者さんの数が減っています。健康診断人間ドックの啓発もしておりますが、受診数は増えていません。これは、ただ単に当院を受診されていないというわけではなく、病院の受診自体をしていらっしゃらない方が増えているためです。理由としては、医療費が高くて支払いが難しいことが挙げられます。元気な高齢者の方も多く、生活費もかかるので、医療費が高く感じるようです。

気づかないだけで、なにかの病気である可能性もあります。どうしたら受診していただけるようになるか。これはこの地域だけではなく、社会全体の課題でもあるかと思っています。

 

三原市と尾道市、世羅郡などの地域を尾三地区というのですが、この地域の医療圏には26万人の住民がいます。この地区の医療費をどう削減するか、これが課題となっています。

高度急性期の医療としては、この地区だけで1,000床も過剰です。この病床数を減らしていくため、病院同士の吸収合併などを考えていく必要があります。

 

当院の基本方針のひとつとして、「患者さま中心の医療の提供」を掲げています。

私たちが目指しているのは、患者さんの心に寄り添える医療を提供すること。患者さんがどのように思っているのかを尊重し、時間をかけてお話をするよう日々心がけています。

こちらから勝手に押し付ける医療はやめ、患者さんに納得していただいたうえで進めることが大切であると考えています。

 

渡邉 誠先生

当院は教育病院ではないため、前期研修医はおりません。しかし、研修が終わってから来ていただければ、丁寧に指導をしていきます。

地域住民の方々には、いつでも受診や相談、健診にお越しいただきたいと思っています。ぜひ、いつでもお気軽にお越しください。

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