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連載WHO(世界保健機関)と考えるコロナ報道のあり方

【WHOセミナー】変異ウイルスに今のワクチンは効く? 有効性に関する研究

公開日

2021年04月27日

更新日

2021年04月27日

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2021年04月27日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年04月27日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

なかなか収束しない新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)。地域によっては、第4波が襲来し油断できない状況が続いています。国内ではワクチン接種が徐々に進んでいますが、変異ウイルスの影響に不安を抱く方もいるでしょう。2021年4月9日に行われたセミナー「WHO(世界保健機関)と考える、非常時のメディアのあり方とは-新型コロナとワクチンをめぐる報道-」から、ワクチンの有効性の評価方法や、現行のワクチンは変異ウイルスに効果があるのかをまとめました。【第4章 峰宗太郎先生 講演3】

【プログラム】

ワクチンの「有効性」どのように評価している?

ワクチンの有効性の評価方法について3つの段階をお伝えします。

ワクチンの「有効性」どのように評価している?

1つ目は「免疫原性(immunogenicity)」で、ワクチンを接種した人の血清中の抗体のレベル(抗体価)が感染や発症を防ぐレベルに達したかどうか(その割合)で評価します。つまり抗体が実際にウイルスに対して機能するのか、試験管内での試験の評価ということです。

2つ目の「臨床試験での有効率(efficacy)」は、接種群と対照(コントロール)群との発症率の差を比較します。このときに標準的に行うのは、ランダム化比較試験という、研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分けて治療法などの効果を公平に検証する方法です。

3つ目は「実社会での有効率(effectiveness)」。これは多くの接種対象者にワクチンが普及した後、目的の感染症が実際にどのくらい減少したかを評価する方法です。

新たに注目されている変異ウイルス

3つの変異ウイルスに加えて、現在「P.3」「R.1」という2つの系統も注目されています。P.3はフィリピンの入国者から検出されたもの、R.1は起源が不明で、関東と東北で検出数が増加しています。どちらもE484Kという変異があり、ワクチンが効きにくくなるではないかと懸念されていますが、主たる変異がE484Kであることから、ワクチンへの影響については南アフリカ型やブラジル型とほぼ同様の状況と考えてよいでしょう。

ワクチンの「有効性」に関する研究

ワクチンの有効性を考えるときには、これら3つのどの段階で評価されているかを考慮する必要があります。この点を踏まえて、最新の研究結果を見てみましょう。

ワクチンの「有効性」に関する研究

まず免疫原性について。上のグラフは、ファイザー社のmRNAワクチン接種による抗体は変異ウイルスをどの程度中和できるのか(つまり1つ目の免疫原性)に関する基礎研究の結果です。縦軸でワクチンの中和力価(効力)を比較しています。黒色がアメリカで培養されたウイルス、白色がイギリス型、黄色がブラジル型、赤色が南アフリカ型です。ブラジル型「P.1」や南アフリカ型「B.1.351」は、イギリス型「B.1.1.7」よりも中和力価が多少低下するものの、一定以上は保たれているという結果が出ています。

また、モデルナ社のワクチンも同様に、イギリス型、南アフリカ型、ブラジル型に対して中和力価の多少の低下が見られますが、一定以上は保たれています。

次に臨床試験での有効性について。アストラゼネカ社のワクチンでランダム化比較試験を行ったところ、南アフリカ型に対して発症予防効果がおよそ10%(対照群との差)であることが分かりました。このように、変異ウイルスに対して効きにくくなるワクチンもあるのです。ただし、プレプリント(査読前論文)レベルではありますが、ファイザー社のmRNAワクチンは臨床試験でも高い有効性が出ており、基本的には今の変異ウイルスには効くと考えられています。

変異ウイルスを発生させないためには?

報道のあり方として、「変異ウイルスだから流行している」と過剰に伝える必要はないでしょう。ただ、感染の流行が続く限り変異ウイルスは発生し続けます。そのため、変異ウイルスを発生させないためにもまず「流行を抑えること」がもっとも重要です。特に、選択圧がかかっているときの長期感染では変異が蓄積しやすいため、免疫不全の方やワクチン接種後の感染者などにも注意が必要です。

実際に変異ウイルスが拡大してしまったイギリスでは、ロックダウンによって流行が急激に低下しました。つまり、変異ウイルスであっても流行は抑えられるのです。日本においても、3密を避ける、感染症対策を徹底する、あるいは人との接触抑制を行うことで変異ウイルスの流行を抑えられるはずです。

変異ウイルスとワクチンに関するまとめ

最後に、これまでの内容をまとめます。

新型コロナウイルスの変異体は日々生まれており、その中で、複数の監視・研究が必要な変異が観測されています。世界的には、イギリス型、南アフリカ型、ブラジル型と通称される3つの系統が現在注目されており、日本ではそれらに加えてE484Kを含む2つの変異が話題に上がっていますが、ワクチンに対する影響については、南アフリカ型やブラジル型と同じ考え方でよいでしょう。

ウイルスの変異で問題となるのは▽伝播性の上昇▽病毒性の上昇▽免疫逃避・耐性――の3つです。特に、南アフリカ・ブラジルの変異では免疫逃避・耐性が懸念されており、現行のワクチンでも効果がある程度低下していると思われますが、mRNAワクチンでは効果に問題はなく、また、各社が変異ウイルスに対応するワクチンの開発を開始しています。

なお、変異ウイルスに対する予防策は基本的に従来と変わりません。変異ウイルスの発生を抑えるためにも、感染の流行抑制は重要であることを改めて認識していただけたらと思います。