連載WHO(世界保健機関)と考えるコロナ報道のあり方

【WHOセミナー】新型コロナワクチンに関するQ&A(質疑応答)

公開日

2021年05月25日

更新日

2021年05月25日

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2021年05月25日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年05月25日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

私たちの生活に甚大な影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)。国内で徐々にワクチン接種が進んでいますが、供給の課題や変異ウイルスに関する報道などもあり、混乱はいまだ収まりません。2021年4月9日に行われたセミナー「WHO(世界保健機関)と考える、非常時のメディアのあり方とは-新型コロナとワクチンをめぐる報道-」より、新型コロナワクチンに関するメディアからの質問に講師陣が回答した内容をまとめました。【新型コロナワクチンに関する質疑応答】

【プログラム】

Q 2回接種にこだわる必要はあるのか?

記者からの質問:

ファイザー社のワクチンは1回接種でも高い有効性があることを示唆するデータがあります。それならば、「1人2回接種」にこだわらずに1回接種を優先させ、国民に広く接種するほうが効果的ではないでしょうか。

木下先生からの回答:

非常に重要な質問だと思います。まず「有効性」という言葉が示すことをはっきりさせる必要がありますね。ワクチンの有効性については、▽感染予防▽発症予防▽重症感染予防――それらの効果を総合的かつ長期的に見ていく必要があります。

ファイザー社のワクチンに関しては、2回接種をすると6カ月時点でも91%の有効性があると最新の研究で分かってきました。1回接種について、短期的には高い有効性を示唆する論文は確かにありますが、2回接種と比べて長期的な有効性がどのくらい持続するかはまだ分かっていません。そのため、研究上明らかになっている有効性を確実に得るために、まずは2回接種を大原則とするという方法が多くの国で行われているということです。現状では、日本でも同じような戦略を取るのは妥当と考えます。

Q 2回接種にこだわる必要はあるのか?

Q 1回目と2回目の接種の間隔について

記者からの質問:

2回接種の際には1回目と2回目で一定の間隔を空けますが、基準の期間を目安としたとき、2回目の接種を早めた場合と遅らせた場合で、効果に大きな違いはありますか。

木下先生からの回答:

日本で承認されているファイザー社のワクチンは、3週間の間隔を開けて2回接種するのが原則です。その間隔が変わった場合にどのように効果が変わるのかは明らかになっていません。たとえば仮に2回目との間隔が5週間、6週間になった場合に効果が変わるのかについて、現状では明確なデータがないため、はっきりと言及することは難しいです。

通常、治験ではピッタリ3週間で2回目の接種を行います。しかし、こちらのページでご紹介したイスラエルでの大規模研究では、冷蔵設備やワクチン供給量の問題などがあり、実際には2回目の接種までの間隔に多少のばらつきがあるはずです。それでも高い有効性が確認されていることから、1〜2週間のずれが大きく影響する可能性は低いと考えています。

Q 2回目のワクチンの種類について

記者からの質問:

2回接種の場合、1回目のワクチンと2回目のワクチンを同じものにするための工夫などは考えられていますか。

今枝先生の回答:

現在日本ではファイザー社のmRNAワクチンの1種類が承認されていますので、現状のままなら必然的に同じものになります。また、国内で2種類目の新型コロナワクチンが承認されることがあれば、当然ながら1回目と2回目の接種で同じものを打てるような仕組みが採用されます。

Q 「コロナ禍の収束」の目安は?

記者からの質問:

WHOが定めた「コロナ禍の問題が解決した」という基準があれば教えてください。

芝田先生の回答:

WHOは2020年3月11日に「パンデミックである」との認識を表明しました。ただ、これは何らかの判断基準や規則を基に決めたものではなく、あくまでも一連のコミュニケーションのなかで認識を表明したというものです。そのため、今後WHOとして「パンデミックが収束した」と認識を示すことはあり得ますが、始まりを表明したときと同様に、何らかの判断基準や規則に基づき決定されるものではないことをご承知おきください。

WHOでは、国際保健規則(IHR)に基づき、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態「PHEIC(Public Health Emergency of International Concern:フェイク)」を宣言することが規定されており、その宣言の責任と権限が事務局長に与えられています。

2020年1月31日にはこのPHEICが宣言されました。この宣言に際しては、専門家による新型コロナウイルス感染症緊急委員会を独立して設置し、その委員会から見解と助言を得たのち、事務局長が最終判断をして宣言に至ります。そして解除の際には、同じく委員会の見解と助言に基づき最終的な判断が行われますが、直近の2021年1月の会議では全会一致で「今もまだ緊急事態下である」という助言でした。次回の委員会でも、PHEICは継続されるものと予想されます。

Q 「コロナ禍の収束」の目安は?

Q ワクチンの分配は平等に行われている?

記者からの質問:

ワクチンの国・地域の分配について著しい不平等が生じているように思います。WHOではこの現状を変えるための方策をどのように立てていますか。

高島先生の回答:

まずワクチンの国・地域の分配で著しい不平等が生じているかについて、私個人の考えをお伝えします。新型コロナワクチンの実用化に向けて治験が始まったのは2020年の夏頃であり、現状はまだワクチンの全体量が不足している状態です。ワクチンが潤沢にあるわけではない今の状態で、ワクチンの配布について不平等が生じているかを問うのは時期尚早であると感じます。

西太平洋地域には37の国・地区がありますが、まだワクチン接種が始まっていない場所は4つ、さらにワクチン自体が届いていない場所は2つです(2021年4月時点)。それ以外の国ではワクチン接種が迅速にスタートしており、残りの場所についても当然ながら対応を進めているところです。

Q 「コロナ禍の収束」の目安は?

記者からの質問:

自局の番組では意識的に、「ワクチン接種は強制ではないこと」や「ワクチン接種を証明しないと店などの利用を断られる“ワクチン差別”への懸念」などを伝えています。こうした「ワクチン接種の任意性」を伝えることは望ましいのでしょうか。任意であることをことさら強調するべきではないのでしょうか。見解をお聞かせください。

芝田先生の回答:

現在、日本において新型コロナワクチンの接種は任意であり、各人が接種するかどうかを判断いただくものです。重要なことは、一人ひとりの理解度に応じた情報が提供され、ワクチンの接種について各人がきちんと理解したうえで判断することだと思います。

そして、接種すると判断されたのであれば、不安が十分に軽減された状態で接種できる環境が整っていることが理想的です。そのために必要な情報を皆さんに伝えていただけたら幸いです。

メディカルノート代表 コメント

メディカルノート代表の井上祥です。本セミナーの事務局という大役を務めることができ、たいへん光栄です。

我々は「すべての人が“医療”に迷わない社会」をつくるべく、信頼できる医療情報の発信などを行っています。葛西先生(WHO西太平洋事務局長)にいただいた「メディアはパートナーである」という言葉を胸に、今後も邁進いたします。講師の方々、座長の今枝先生、ご参加くださった方々、本日は誠にありがとうございました。

今枝宗一郎先生 ごあいさつ

講師の方々、ご参加の皆さん、改めてありがとうございました。

メディア関係の皆さんには日頃より「正しい情報を伝えるべし」とかなり頑張っていただいていることは各所で耳にしています。これを機に、我々は1チームとなり、正しい情報を分かりやすく伝えていきましょう。そして、国民の皆さんのワクチンへの理解が深まることを心から期待します。本当にありがとうございました。

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