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インタビュー

失明を予防していくこと―眼科における公衆衛生

失明を予防していくこと―眼科における公衆衛生
小野 浩一 先生

順天堂大学  医学部 眼科学講座 准教授

小野 浩一 先生

「公衆衛生」は医学の分野のひとつです。「公衆衛生」では、ひとつひとつの病気よりもう少し大きな枠組みで地域の病気や健康を考えます。病気のタイプは国とその時代によって異なります。例えば、かつての日本は、感染症の流行頻度が高い状況でした。しかし、公衆衛生のレベルが上がるに連れて徐々に慢性疾患が増えてきました。このように、国や時代によってどのような病気を重点的に対策していけば良いのかは異なっているのです。

眼科における公衆衛生の考え方の基本は、失明の予防です。しかし、眼科においても、公衆衛生レベルが上がるに連れて、失明の原因となる病気のタイプが変わってきます。ジョンズホプキンス大学を経て、現在は順天堂大学眼科学准教授を務められる小野浩一先生に失明予防についてお話を伺いました。

世界の失明患者数のうち、80%は予防できるということが知られています。今回は、この失明をどうやって防ぐのかを考えます。一般に、社会経済が進むにつれ失明原因の疾患は目の前方の病気から目の後方の病気へと変わっていきます。

目の横断図

目の横断図

発展途上国などの衛生状態が悪い国(時代)では、目の「前方」の病気が多くあります。目の前方とは「角膜」・「水晶体」のことを指します。具体的には、トラコーマクラミジアによる2次的に角膜の混濁を引き起こすの炎症)に代表される角膜の感染症や・白内障(はくないしょう・目の中のレンズが白く濁ってしまう病気)などです。
一方、生活状況(公衆衛生レベル)が良くなると何が起こるのでしょうか。目の後方の病気が多くなってきます。目の後方とは「網膜(もうまく)」や「視神経」を指します。具体的には、次記事でご説明する糖尿病性網膜症緑内障(りょくないしょう・眼圧が上がり視野が狭くなったり視力が落ちる病気)、加齢黄斑変性 (かれいおうはんへんせい・年齢を重ねることによりものがゆがんで見えたり視力が落ちる病気)です。

発展途上国で失明が多い理由は、健康教育が不十分なために健康増進が進んでいないことや、病院や医療従事者などのインフラ(医療における基盤)が整っていないことが挙げられます。

特に目の前方の病気を原因とする失明を防ぐためには、住民の教育が重要です。WHOの基本的な戦略は、プライマリケア(すべての人にとって健康を基本的な人権として認めるという考え方)を充実させて母子保健・住民の教育を行うということです。水と一般的な衛生を整えたり、清潔の重要性や食事の教育を行うだけでも、目の前方の病気による失明を防ぐことができます。具体的には、顔を洗って清潔にすることでトラコーマ感染の予防が、食餌指導によりビタミンAの欠乏による角膜・結膜障害や夜盲の予防を可能にしています。

このように、教育プログラムを通じて失明者を減らす成果を各地で出してきました。タイでは1980年代、今から30年前に、プログラムを導入した結果、失明の患者数が全人口の1.2%から0.6%まで減りました。先進国は0.3%ですので、かなり近い数字まで減少しています。またカンボジアやラオスは0.5%まで減らすことに成功し、非常に良くコントロールができるようになってきました。順天堂大学はWHO指定失明予防協力センターとして各国の保健省やWHOとこれらのプログラムを推進し成果をあげてきました。

少しずつ衛生状態がよくなってくると、緑内障加齢黄斑変性症・糖尿病網膜症などが失明の原因として増えてきます。目の後方の病気は、残念ながら公衆衛生のプログラムの教育や水、栄養だけでは解決できないという課題があります。以上に挙げた病気のうちの2つには注意点があります。

  • 緑内障:薬の供給システムのような、医療インフラが整っていることが必要。教育だけでは改善することができません。
  • 糖尿病網膜症:症状が現れないことや日本では眼底健診を受けない人が多いこと。

次の記事からは、糖尿病網膜症についてお話しします。

記事1:失明を予防していくこと―眼科における公衆衛生
記事2:糖尿病網膜症の症状—代表的な症状がないからこそ眼底検査が重要
記事3:糖尿病網膜症の治療―レーザー治療から手術まで

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  • 順天堂大学  医学部 眼科学講座 准教授

    小野 浩一 先生

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