この記事の最終更新は2015年10月11日です。
先天性心疾患の手術には大きく分けて姑息手術(こそくしゅじゅつ)と根治手術(こんちしゅじゅつ)の2種類があります。このふたつの手術はどのようなものなのでしょうか。また、何が違うのでしょうか。大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長の根本慎太郎先生にお話をお聞きしました。
先天性心疾患の手術は、姑息手術と根治手術の2種類があります。
姑息手術は、直列循環に修復するための根治手術ができるまでに状態を安定させたり、根治手術のための条件を整えるべく行われる手術です。
姑息手術で代表的な方法には、ブラロック・トウシック手術という、人工血管を使って鎖骨の下の動脈と肺動脈の間に道筋(シャント)を作って小さな肺動脈を育てて、肺での酸素の取り込み量を上げるものがあります。
一方で、根治手術は正常に近い状態に治す手術です。根治手術をするにあたっては、人工心肺装置を使うなど、非常に大がかりな手術になります。
ここから、姑息手術について詳しく説明していきます。
先天性心疾患の手術は複雑な場合も多くあり、「根治手術の準備のための手術」を繰り返さなければいけない場合があります。例えて言うならば、最終目的地にたどり着くまでに何度か飛行機を乗り継いでいくようなものです。その中間地点までにたどり着く航路を「姑息手術」といいます。
繰り返しますが、姑息手術はあくまでも乗り換えの中間点であり、患者さんの状態を整え、状態を良くしていくための手術です。それに対して、根治手術はすごろくでいえば上がりのところに行くようなイメージで、直行便ともいえます。ただし、新生児や小児の手術はいきなり直行便で行くことが容易ではないケースが多いため、我々は姑息手術を駆使してなんとか根治手術に持っていけるようにしています。
言葉から来るイメージとは違い、姑息手術はその場しのぎの手術ではなく、根治手術を目的として患者さんのコンディションをととのえるための手術です。そのため、次のステップへ行けるか評価していく必要もあります。
次のステップに進むために、たとえば手術だけでなく薬による内科的治療やカテーテル治療があります。つまり、手術と内科的治療は相互補完して、先天性心疾患の治療が行われているのです。そのために姑息手術や内科的治療が手を組んで患者さんの治療に励む必要があります。
大阪医科大学附属病院 小児心臓血管外科診療科長
日本外科学会 外科専門医日本循環器学会 循環器専門医日本胸部外科学会 認定医・指導医日本移植学会 会員日本集中治療医学会 会員
新潟大学医学部を卒業後、東京女子医科大学、米国サウスカロライナ医科大学、米国テキサス州ベイラー医科大学、豪州国メルボルン王立小児病院、マレーシア心臓病センターなど海外各地での経験を経て、大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長。フォンタン手術などの難手術をこれまでに数多くこなし、先天性心疾患をもつ多くの幼い命を救ってきた。自らが数多くの臨床を受けるかたわらで、医師や大学、企業などの垣根を超えた地域全体での医療体制に向けた取り組みや、新しい手術製品の新開発など、未来を担う子どもたちのために幅広い活躍を見せている。
根本 慎太郎 先生の所属医療機関
大腸がんの腹腔鏡手術が主な専門。そのほか、大腸がんの治療全般も専門。大腸がんの手術では低侵襲で安全な手術を目指し、合併症発生率も低い。ICG蛍光法を用いた血流評価やリンパ流評価によるオーダーメイドの手術療法の開発なども行っている。直腸がんついては、肛門温存手術の実績も多数。