小児心臓外科医を志す者が減少していることから、小児心臓外科医は現在、人手不足の傾向にあります。小児心臓外科医として数十年務められてきた大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長の根本慎太郎先生は、小児心臓外科医の未来を担う若手医師を一人でも多く育てていく必要があるとおっしゃいます。小児心臓外科領域はこれからどのように変化していくのでしょうか。根本先生のご経験に基づいたご意見を含め、根本先生にお話していただきました。
今後の課題として次に挙げられることは、若い医者の育成です。
手術を受けた子どもたちはどんどん大きくなっていきます。しかし、医師側は歳を取っていきます。
一人前になるまでに修業期間が長く、治療リスクが高く激務である小児の心臓外科医は今や絶滅危惧種ともいえる存在です。そんななかで、我々先輩医師は後進をきちんと育てる必要があります。もしも小児心臓外科医がいなくなってしまったら、日本では心臓に問題を抱えた幼い子どもが手術を受けられなくなってしまう可能性すらあるのです。これは大きな問題であり、小児心臓外科医がどんどん減ってきているという現実に対処しなければいけません。小児心臓外科医の減少は、日本の持つ潜在的なリスクですらあります。
小児心臓外科医として四半世紀務め続けてきて、臨床や研究での経験から得られた課題に対する解決法が、ようやく形になってきたように感じられます。まいた種がようやく葉っぱを見せてきた状態で、花が咲くのはまた先の話かもしれません。
私は、自分の人生をかけて臨むものがないと面白くないと考える性質です。ですから、子どもたちをとおしてその子の人生に関われる小児心臓外科医は、非常に面白い職であると考えています。私が手術をさせていただいた子どもたちが無事に成長するのを見たりするのがとても嬉しいです。
一方で、常に反省もあります。それは、『医工連携・産学連携と新開発―医療機器の新たな発明』で述べた医療機器の問題です。理想的な材料が早く開発されていたなら、この子は何度も何度も再手術を受ける必要はないのに、という思いも残ります。
小児心臓外科医は、その子が生きていることがそのまま反省につながる職業です。例え一度の手術がうまくいったとしても、あとから問題が発覚すれば、それが私たちへのフィードバックになります。その子が生きている限り、私たちは反省を続けることができます。先天性心疾患が他の診療科と少し違うのは、そういう面が大きいからではないでしょうか。
いずれにしても、生きるか死ぬかの境目を彷徨っていた子が、元気になって私のところに来て、少しやんちゃをしてくることは我が子を見るかのように嬉しいことですね。
大阪医科大学附属病院 小児心臓血管外科診療科長
日本外科学会 外科専門医日本循環器学会 循環器専門医日本胸部外科学会 認定医・指導医日本移植学会 会員日本集中治療医学会 会員
新潟大学医学部を卒業後、東京女子医科大学、米国サウスカロライナ医科大学、米国テキサス州ベイラー医科大学、豪州国メルボルン王立小児病院、マレーシア心臓病センターなど海外各地での経験を経て、大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長。フォンタン手術などの難手術をこれまでに数多くこなし、先天性心疾患をもつ多くの幼い命を救ってきた。自らが数多くの臨床を受けるかたわらで、医師や大学、企業などの垣根を超えた地域全体での医療体制に向けた取り組みや、新しい手術製品の新開発など、未来を担う子どもたちのために幅広い活躍を見せている。
根本 慎太郎 先生の所属医療機関