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医工連携・産学連携と新開発―医療機器の新たな発明
先天性心疾患に限らず、すべての手術において、精巧な手術器具や手術材料は欠かせない存在です。大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長の根本慎太郎先生は、自ら執刀をするのみならず、これら手術材料...
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医工連携・産学連携と新開発―医療機器の新たな発明

公開日 2015 年 10 月 14 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

医工連携・産学連携と新開発―医療機器の新たな発明
根本 慎太郎 先生

大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長

根本 慎太郎 先生

先天性心疾患に限らず、すべての手術において、精巧な手術器具や手術材料は欠かせない存在です。大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長の根本慎太郎先生は、自ら執刀をするのみならず、これら手術材料の開発にも従事されており、「医工連携」や「産学連携」が重要であるとおっしゃいます。根本先生に詳しく解説していただきました。

心臓手術の問題点―ほとんどの手術材料は海外製品

子どもの心臓は例えるならば打ちっぱなしのコンクリートです。つまり、体の成長とともに心臓も大きくなっていくため、幼いころに手術をしてつくった間仕切りやドアは生涯持つことはなく、患者さんの成長に合わせて間仕切りもサイズアップしなければなりません。

実は、今日まで心臓手術に使われてきた材料はすべて海外製です。具体的には牛の心膜やゴアテックス、ポリエステルなどの材料を用いており、これらをパッチとして穴を塞いだり、血管を拡げたりしています。

しかしこれら全ては海外製であり、これらに頼るあまり、もしアメリカで何かあったら日本でも使えなくなります。農作物と同じように、国産でないものは供給体制が安定していないのです。このような状況が続くと、いずれ先天性心疾患の手術は、材料がないから日本ではできないということにすらなりかねません。このように海外に頼っている現状を、どうにかして変えていかなければなりません。

子どもの体の成長に現在の手術材料はついていけない

子どもの体は成長するにつれて、心臓も血管もサイズが成長します。最初は小さくて細くてせまい血管が徐々に広がっていきます。成長に合わせて手術材料をうめた部分も成長してほしいですが、そうはなりません。そのため、体が大きくなったら手術した場所が狭くなってしまいます。牛の心膜を使っていれば石灰化して硬くなり、ヘドロのような物質が堆積していく可能性もあります。そのようにして血管はどんどん狭くなっていきます。また、人工物は感染に弱いという特徴があるため、すぐにばい菌がついてしまいます。

そのため、大きくなってからうめ込んだ手術材料を交換する再手術をしなければいけないということが多々発生します。小さいころはまだ時間に融通が利きますが、大人になってからだとたとえば大学受験の間近、社会的に重要なポジションになったときなど、どうしても時間をとれない時期があるでしょう。しかし、そのような大事な時期であっても再手術をしなければならない場合があります。

この問題を解決するために、再手術をしなくていいような素材があったらいいのではないかと私は考え続けてきました。

「医工連携」や「産学連携」による新たな手術材料の開発―根本先生の取り組みとは

再手術をしなくていいような素材がない現状を打開しようと、私たちは現在、経済産業省、農林水産省、文部科学省の助成金を頼りに、大手中小の民間企業や他大学の工学・科学部などと連携体制を取り、新たな手術材料の共同開発を進めています。

提携している企業や大学は、それぞれの強みがあります。

たとえば他大学の方々は各種の生体適合性や高分子ポリマーなどを次々と開発していきます。その開発速度は我々医学部の者とは比べ物にならないほどです。一方、大企業は製品の開発及び販売力や営業力といった「売る技術」に圧倒的な強みを持ちます。中小企業は独自の技術を駆使した「もの作り」を得意とする企業であり、新しいものを産み出す力には一定の評価があります。

帝人のホームページにもプレスリリースが出ているので、参考にしてみてください。

「医工連携」「産学連携」の意味―夢の治療よりも早急な製品の開発を

再手術には必ず一定のリスクを伴います。単純に言うと、また胸を開けることになるわけです。新生児のころから年月が経っているため、患部が癒着(組織同士が貼りついてしまっていること)している場合もあり、そうなると手術は困難なものに変わります。

再手術をすることは、医師と患者双方が大変な負担を負うことになります。また、先天性心疾患の患者さんは一度や二度ではなく、生きている限り手術を繰り返さなければならない危険があります。現在のこの状況は、決して患者さんのためになるとはいえないでしょう。そのためにも、早急に新しい手術材料を開発する必要があります。

いつか夢のような、たった一度の手術で完治してしまう治療法が現れるかもしれません。しかし、それが一般的な治療方法になるまでには相当な時間がかかるでしょう。それよりは、手術材料を開発してしまった方がよほど現実的なのです。

「医工連携」「産学連携」によって開発された医療機器の例

たとえば先天性心疾患の手術に伴い、胸骨が変形してしまう合併症がでる場合があります。これは見た目にもあまり良いとはいえません。そこで小児心臓外科医が整形外科医および企業と一緒になって、特許を取得した胸骨矯正装具を開発しました。複数の企業のなかにはブラジャーのメーカーも入っていただきました。

このように、新しい素材や材料、装具の開発が、今後の先天性心疾患の医療を大きく変えていくと考えています。

単に手術をして、それで終わりではなく、治療の裾をもう少ししっかりと広げ、新しい医療用製品で手術を補完していく仕組みをもっと確立させていきたいです。

現在、様々なレベルで開発を進めている最中です。はたして完成にどれくらいの時間がかかるかは、正直のところわかりません。しかし、私の見立てではある程度いいところまで来ているのではないかと思います。

大阪医大という枠組みを越えて―地域も、他病院も、他大学も巻き込んで医療を作り上げる

様々な大学、様々な病院、様々な企業が近隣にひしめいていますが、決してライバルではありません。それぞれが競い合うのではなく、たとえば「高槻メディカルセンター」とでも呼ばれるような、「この地域の病院に行けば必ずどこかで解決できる」と患者さんに思っていただける仕組みを作っていこうと考えています。

チーム体制を構築することで、地域別の患者さんのニーズや要望など、様々な意見を吸い上げられますし、こちらの医療体制もそのニーズに合わせて変化していくことができるからです。

新潟大学医学部を卒業後、東京女子医科大学、米国サウスカロライナ医科大学、米国テキサス州ベイラー医科大学、豪州国メルボルン王立小児病院、マレーシア心臓病センターなど海外各地での経験を経て、大阪医科大学附属病院小児心臓血管外科診療科長。フォンタン手術などの難手術をこれまでに数多くこなし、先天性心疾患をもつ多くの幼い命を救ってきた。自らが数多くの臨床を受けるかたわらで、医師や大学、企業などの垣根を超えた地域全体での医療体制に向けた取り組みや、新しい手術製品の新開発など、未来を担う子どもたちのために幅広い活躍を見せている。