インタビュー

ナルコレプシーとのつき合い方、治療ができる病院は

ナルコレプシーとのつき合い方、治療ができる病院は
本多 真 先生

東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野・睡眠プロジェクト プロジェクトリーダー

本多 真 先生

この記事の最終更新は2016年02月26日です。

ナルコレプシーの患者さんは、社会のサポートや就業環境の理解を得るのに大変苦労されます。患者さんの生活について、東京都医学総合研究所睡眠プロジェクトリーダーの本多真先生にお話をうかがいます。

ナルコレプシーは長期経過とともに症状がなくなる人も1割程度いらっしゃいますが、基本的には長期にわたってつきあっていかなければならない病気です。しかし、睡眠と生活を規則正しくしてうまく組み立てること、薬を適切に使うことで、多くの場合、社会生活の支障はほとんどなくなります。治療が遅れると、社会生活に不適応を起こしてしまうことが多いので、中学や高校時代にまず病気に気づき、早期に診断し治療を開始することが重要です。

職業運転手や高所作業など、万が一眠気や情動脱力発作が生じた場合に命にかかわるような仕事をのぞけば、一般には職業選択に制限はありません。起き続けるのが難しい病気なので、日中の仕事に加えてイレギュラーに仕事が入ったり、一定の頻度で夜勤をしなければならない仕事も、生活リズムが崩れやすく、疲労が蓄積しがちな場合は、避けるようアドバイスします。ただし、睡眠時間や眠気のコントロールを工夫によって乗り越えることは可能なので、制限はあるにしても基本的には「できない」仕事はないと考えてよいと思います。

ナルコレプシーの患者さんには下記のような合併症が報告されています。もしこれらの症状がある場合は、日常生活をスムーズに送るためにそれぞれに対応する治療を行う必要があります。

気分障害(うつ病・うつ状態)     3人に1人

不安障害                             4人に1人

肥満(病気の初期に急速にすすむ)   3~4割

ナルコレプシーの患者さんの4割は肥満になります。病気になってから1年で10kgも増えてしまう場合も少なくありません。居眠りが多く運動が少なくなるから、あるいは目を覚ますために甘いものを多くとるから、と考えられがちですが、食事量が少ないのに太る場合もあり、現在では基礎代謝が落ちることが太る原因であることが知られています。このためダイエットをしたときに、その効果が出にくい特徴もあります。

現在体重増加に対する特効薬はありません。まずは現在以上に体重が増えないようにすること、夜間の間食を一定以下に制限すること(夜中目が覚めると甘いものを食べてしまう患者さんがいます)、そしてそれを根気強く続けることです。肥満が続くと糖尿病や睡眠時無呼吸症まで引き起こす可能性があります。大きな努力をすればダイエットに成功する人もいることを心にとめ、希望をもって運動や食事による体重コントロールにとりくむことが大切です。

なおわたくしたちの研究から、一部の患者さんでは何らかの理由で必要時に長鎖脂肪酸※がエネルギーとしてうまく使われないため、疲れやすく眠りやすくなる可能性がわかってきました。

※炭素が鎖のようにつながった分子を「炭素鎖」と呼ぶ。脂肪酸はその長さによっても分類でき、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸がある。

ナルコレプシーの患者さんでは、「ナルコレプトイド性格」という特徴的な性格への変化が多くみられます。おおざっぱで諦めやすい一方で、人がよく頼まれると断りにくい性格です。課題や日課を最後までこなせない(眠気や持続性の問題)、うまくいかないと対人関係も人任せになり(easy going)、自己主張を続けるより初めから諦めてしまいやすいといった点が問題になります。「ナルコレプトイド性格」は穏やかで人柄がよい一方で、社会生活を送るには障害になることもあります。大事なことを継続し自己主張もできるようになると、生活面での障害が減るはずだと考えています。

ナルコレプシーにおける生活障害の視点は、ほとんど言及されることがないのですが、非常に重要だと思っています。専門医療機関でも、「日中の眠気がコントロールされているか」という点に焦点をあわせてうまく治療できているかを評価しており、眠気以外の生活の支障が注目されることは稀です。ナルコレプトイド性格は、病気そのものによる影響と社会的な失敗経験によって二次的に形成されると考えられています。患者さんたちにはぜひ、自信をもち根気強く生活の課題に取り組んで、自己実現を目指すことの重要性を理解いただければと思います。

望ましいのは、ナルコレプシーの診断に必要な検査設備がある施設で、ナルコレプシーの診療をしている専門医がいるところです。精神科、心療内科、小児科、神経内科でも診断治療が可能な施設があります。

日本睡眠学会では、ホームページでナルコレプシーやその他の睡眠障害を診断・治療できる施設のリストを掲載しています。『睡眠医療認定医リスト』というページがあり、その中に『睡眠医療認定機関』という施設一覧が掲載されています。全国で睡眠医療を行っている施設を探すことができます。Aと書かれている施設が、ナルコレプシーを含む睡眠障害全般の診断が可能な医療機関です。Bと書かれている施設は、睡眠時無呼吸症候群の診断治療に特化した施設です。

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    本多 真 先生

    精神科臨床医よりキャリアをスタート。スタンフォード大学睡眠研究所への留学後、睡眠研究の世界に。2018年5月現在、月6日で神経研究所附属晴和病院にて睡眠専門外来をしながら、東京都医学総合研究所にてナルコレプシー/過眠症に焦点をあてた研究をすすめている。

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