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インタビュー

ナルコレプシーの検査と診断

ナルコレプシーの検査と診断
本多 真 先生

東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野・睡眠プロジェクト プロジェクトリーダー

本多 真 先生

ナルコレプシーの患者さんの睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠の訪れが非常に特徴的です。東京都医学総合研究所睡眠プロジェクトリーダーの本多真先生に、ナルコレプシーの検査と診断についてうかがいます。

ナルコレプシーかどうかを診断するための検査としては、睡眠の検査、白血球型を調べる血液検査、脳脊髄液を採取する腰椎穿刺という検査があります。

現在は、脳波、筋電図、心電図、鼻の空気の流れ、酸素飽和度、胸・脚の動きなどをひと晩で調べるのが一般的です。これは、さまざまな夜の睡眠障害がないことを確認するために行います。睡眠の状態を脳波と目の動きで判定するのは、覚醒度が脳波の波の形(周波数)と相関するとわかっているからです。

私たちの眠りは、レム睡眠とノンレム睡眠によって構成されています。

ノンレム睡眠(脳の眠り)

「うつらうつら」「すやすや」「ぐっすり」などの言葉で表現できる、浅い眠りから深い眠りまでの総称。ノンレム睡眠は3段階に分類される。

レム睡眠(体の眠り)

脳活動が活発で鮮明な夢を見る。ほとんど覚醒しているのと同じような状態。ただし、体の動きは伴わず、姿勢を保つ筋肉は弛緩させられている。

夢の中で飛び跳ねてもベッドから落ちないのは、レム睡眠のスイッチが入ると、脳の活動と筋肉の運動とのつながりを積極的に遮断するから。

私たちの体は、眠りについてから目覚めるまで、ノンレム睡眠とレム睡眠のひとまとまりである睡眠周期を通常4~6回繰り返します。通常、脳の眠り(ノンレム睡眠)が先に起こり、次に体の眠り(レム睡眠)が訪れます。脳の休息が優先され、はじめに深い眠りで脳を十分休ませてから、体を休ませようとするのです。そのため、明け方(目覚め)に向かってだんだんレム睡眠が増えます。ノンレム睡眠中は脳の温度が下がりますが、レム睡眠中には脳の温度が上がりますので、睡眠後半でレム睡眠が増えることは、朝目が覚めてすぐ脳が働くための準備にもなっています。

通常の睡眠サイクル

ところが、ナルコレプシーの方の睡眠を調べてみると、夜眠りについた直後(15分以内)にレム睡眠(体の眠り)が訪れる場合が約半数あります。レム睡眠は、脳の働きは覚醒しているのと同じように活性化している状態でありながら、筋肉の緊張がなくなります(弛緩状態になります)。つまり、頭は起きているつもりなのに体が眠ろうとしてしまうので、覚醒と睡眠の中間的な、一種の「ねぼけた」状態が生じてしまうのです。お祓いを受けるほど非常にリアルな悪夢体験(入眠時幻覚)や金縛りを体験してしまうのはこのためです。

ナルコレプシーの睡眠サイクル 
緑部分がレム睡眠。上記のグラフと比較するとレム睡眠が入眠してすぐ訪れていることがわかる。

(※反復睡眠潜時検査…昼間の眠気の重症度検査。昼寝を繰り返すタイプの場合に行う検査。寝つくまでの時間の平均値8分以下で入眠時のレム睡眠が2回以上起こるとナルコレプシーと診断します。)

このノンレム睡眠―レム睡眠の組立ての特徴は、ナルコレプシーを診断するうえで非常に重要な要素です。ナルコレプシーの患者さんは、この入眠時のレム睡眠が非常に起こりやすいという特徴があります。

99%以上のナルコレプシーの方は、白血球の血液型であるHLAが特定の型をもつことが知られています。HLA(Human Leukocyte Antigen)とは、拒絶反応など、自己と他者を区別しコントロールする役割をもっています。HLAとの関連が知られる病気には、慢性関節リウマチSLE全身性エリテマトーデス)、ベーチェット病などがありますが、すべて自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、本来自分を守るべき免疫機能が、なんらかの理由で自分自身を攻撃してしまう病気です。ですから、ナルコレプシーの発症原因も自己免疫疾患なのではないかと考えられ研究がすすめられていますが、まだ明確な証拠は得られていません。

HLAの型には多くの対立遺伝子が存在しますが、日本のナルコレプシーの患者さんは、HLA-DRB1*15:01-DQB1*06:02という遺伝子型の組み合わせを持っていることが特徴です。実は、HLA遺伝子型はもっとも大きなナルコレプシーの原因遺伝子であると判明しています。しかし、一般健常者の12~13%がこのHLA遺伝子型を持つため、このHLA型の有無は診断基準に入れられておりません。

典型的な情動脱力発作をもつナルコレプシーの患者さんの9割が、脳脊髄液中のオレキシンA(視床下部から出る覚醒性の神経伝達物質)の濃度が測定限界以下であるという特徴もあります。「測定限界以下」とは、「異常なほど濃度が低い」という意味です。ナルコレプシーを診断する場合、このオレキシン濃度が110pg/ml以下か同時に測定した正常者の平均値の3分の1以下であると定義されています。最新の睡眠障害国際分類での診断基準では、この脳脊髄液中のオレキシン濃度が異常低値であることだけで、情動脱力発作が存在しなくてもナルコレプシーと診断できることになっています。濃度が下がるのはオレキシンをつくる神経細胞が90%以上なくなってしまうことが原因なのですが、なぜオレキシン細胞が消失するか原因はわかっていません。

典型的な情動脱力発作を持ち、HLA陽性のナルコレプシー患者は、その約96%がオレキシン濃度の低値を示す
(脳脊髄液中のオレキシン濃度と白血球の血液型には深いつながりがあります。典型的な情動脱力発作をもつ患者さんのうち、白血球の血液型がナルコレプシーに特徴的なもの(HLA -DQB1*06:02)を持っているならば、その96%で脳脊髄液中のオレキシン値が異常低値となるのです。脳脊髄液の検査には腰椎穿刺という手技が必要になりますが、どこでも簡単にできるわけではないため、白血球の血液型検査によって予測ができると考えられる)

ナルコレプシーの患者さんはちょっとした刺激で目が覚めやすく、昼寝をした場合の眠りの持続が10~30分と短いことも特徴です。夜間睡眠では経過とともに中途覚醒が増加する場合も多くみられます。

一方で、特発性過眠症の患者さんは、合併症として、頭痛、冷え性、立ちくらみなどの症状を持つ方が多く、朝昼問わず非常に目覚めにくい、無理に起こすと酔ったようなねぼけた状態(睡眠酩酊)になり、会話が成り立たないほど目覚めが悪いといった特徴をもちます。ナルコレプシーの寝起きのよさと対照的です。

 

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