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インタビュー

ナルコレプシーに有効な薬と生活サイクルの改善

ナルコレプシーに有効な薬と生活サイクルの改善
本多 真 先生

東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野・睡眠プロジェクト プロジェクトリーダー

本多 真 先生

ナルコレプシーの典型例では、多くの場合、薬物治療が有効です。薬を適切に使い、日中覚醒して行動し、夜の睡眠と計画的な昼寝をしっかりとるといった生活リズムをつくることができれば、ほかの方と変わりない社会生活を送ることが可能です。東京都医学総合研究所睡眠プロジェクトリーダーの本多真先生にナルコレプシーの治療についてうかがいます。

まず、ナルコレプシーは睡眠の病気であるということを本人と家族が理解し、病気とつきあっていく心構えをもつことが大切です。病気とわからなかったり、わかっていても健常者の睡眠不足の生活と同じに過ごそうとして無理をする方や、たくさん眠ってもどうせ眠くなるから、夜の睡眠を削って無理をしている方もいらっしゃいます。しかしナルコレプシーは「起き続けられない病気」なので、昼休みなどに短時間の仮眠を計画的にとることができれば、薬の服用を減らすことができます。また、体を動かすことが多く午前と午後に昼寝の時間がとれる生活をしていれば、薬が必要なくなる場合もあります。健常でエネルギーのある人と同じペースで何時間もパソコンに向かいつづけるのではなく、病気の特徴にあわせて計画的な休憩・仮眠と夜間睡眠の確保を行うことができれば、治療に役立ちます。

「無理」の具体例として、受験生の過ごし方を挙げてみましょう。ナルコレプシーの方が、日中は学校で勉強、夕方は部活、夜は塾、というサイクルで通常の学生さんと同じように休息なしで過ごしたとします。これは健康な人でもかなり疲労が蓄積した状態といえますが、ナルコレプシーの方の場合、眠りながら歩いたり家に着いたとたん玄関で眠り込んでしまったり、夕飯時に眠り込んでしまったりという症状が表れます。「病気の眠気」に加え普通の「寝不足」や「疲労」の反動も重なり、薬物療法でも眠気のコントロールができなくなるからです。夜間睡眠をきちんととり、生活の中に計画的な仮眠をとる工夫をしましょう。

薬物治療を行う場合も、ナルコレプシーの患者さんにとって睡眠と生活を規則的に整えることは非常に重要です。薬は、日中覚醒を維持するために必要な最低量を、適切な時間に服用します。自然な状態で入眠に向かっていけるように、半減期の長い薬は午後以降、短い薬も夕方以降は服薬しないようにし、夜の睡眠の質が悪くならないように薬の服用時間を管理する必要があります。慢性的な寝不足に対しては、薬は効きません。薬の効果を上げるためにもしっかり休息をとって、規則正しく生活していただくことが重要です。

・どんな薬を使用するか

耐え難い眠気―過眠症状に対しては、中枢神経刺激薬といわれる目を醒ます薬を用います。特発性過眠症では、中枢神経刺激薬が合ってうまく治療ができる方は約半数にとどまります。それと比較すると、ナルコレプシー患者さんでは、大部分が中枢神経刺激薬の治療反応性がよく、副作用が少なく、社会生活上の支障をかなり減らすことができます。現在日本で治療に使用されている薬はおもに3種類で、共通してドーパミン神経伝達系を増強して、脳を賦活化する作用を持ちます。

メチルフェニデート(リタリン®

ぺモリン(ベタナミン®

モダフィニール(モディオダール®

中枢神経刺激薬を服用するときのポイントは、薬の半減期を考えることです。効果は穏やかですが、半減期が10~14hrと長い薬(モダフィニールやペモリン)は朝から昼までに服用し、効果が強いけれど半減期が短い(実質的に4~5時間)メチルフェニデートは、夕方までならどうしても起きていたい時間帯の前に服用することができます。「狙った時間内の血中濃度を保つこと」と「飲むタイミング」を考える必要があります。なお、覚醒作用のある薬ですが、患者さんによっては服薬後30分~1時間程度の間かえって眠気が強くなり、それから覚醒効果があらわれる場合があります。薬の選択や服用のタイミングについては医師とよく相談しましょう。

・薬の量

薬の量は、重症度に限らず「生活がコントロールできるかどうか」が目安になります。たとえば、会社勤めではなく自営業の方など仮眠をうまくとれる環境であれば、薬の量を少なくすることができる場合もあります。

・薬の危険性

ナルコレプシーの患者さんは、医師の処方のもと、眠気や居眠りの症状を抑えるために「仕方なく」薬を服用しています。2007年頃、リタリン®は濫用が社会問題になりましたが、必要に迫られて服用し、休日は休薬や減薬する過眠症の人では、こうした副作用の出方は異なるようです。ナルコレプシーの患者さんは長期間、一定量以上の中枢神経刺激薬を服用しなければならないのですが、依存や精神病症状の副作用がみられるのは4パーセント以下と報告されています。ナルコレプシーの患者さんで依存が形成されにくい理由のひとつは、報酬系ともかかわるオレキシン神経系の働きが悪いためかもしれません。

中枢神経刺激薬は、病気でない方が服用すると、イライラしたり神経質になり、一方で気分が高揚して「ハイテンション」になる場合があります。覚醒剤依存症の人の中には、治療に用いられる中枢神経刺激薬を乱用する場合がありますが、刺激を求めて服薬量が増加し、眠らないで活動していると、幻覚妄想状態など精神病症状を発症します。現在では、リタリン®はナルコレプシーの確定診断ができた場合にのみ処方されています。処方する医師、医療機関、薬局はすべて登録制でリタリン®の流通を管理しているため、患者さんが適切に使用していて薬物依存になることはまずありません。

・副作用

短期的な副作用として、不安や緊張した時と同じような喉の渇き、動悸、胃の荒れなど交感神経刺激作用が出る場合があります。多くは飲みはじめてから1週間ほどで軽減します。長期的な副作用としては、依存、イライラしやすい、気分が高揚しやすいなどの精神症状が表れることがあります。精神病症状がみられる場合もあります。不安や緊張が高く、薬に敏感に反応する一部の患者さんや、服用量が多い患者さんにおいては特に配慮が必要なため、鎮静作用のある薬を夜の服用に追加して夜間睡眠の確保をはかる場合もあります。

レム睡眠抑制作用がある薬が、情動脱力発作や睡眠麻痺、入眠時幻覚の特効薬となります。現在存在するレム睡眠抑制薬は、すべて抗うつ薬に分類されます。なかでも、三環系抗うつ薬のクロミプラミン、イミプラミンがもっとも効果があります。ただ便秘や喉の渇きなどの副作用があったり、緑内障や心臓病の方は使用が難しいなど副作用が問題となる場合もあります。その場合、レム睡眠抑制作用は少ないですが、副作用も少ないSSRI(パロキセチン等)やSNRI(デュロキセチン等)といった薬も用いられます。2015年12月より、ヴェンラファキシン(イフェクサー®)という薬が日本でも使用できることになりました。これはSNRIですが、クロミプラミンと同等のすぐれたレム睡眠抑制作用があります。今後日本での使用が広がると思われます。

なお、夕食後など、疲労や眠気が強いときに、脱力発作が頻発する場合があります。これは覚醒中におこる典型的な情動脱力発作とは異なり、睡眠麻痺(金縛り)と類似した機序で、眠気に伴って起こるものです。この場合、情動脱力発作症状が悪化しているわけではないので、きちんと日中に起きて夜は寝るという治療を行うことが重要です。

 

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