子どもの咳が止まらない場合、ご家族は対応に困ってしまうでしょう。とはいえ、咳が出ているからといって安易に咳止めを飲ませるのは逆効果となることもあります。咳は異物を除去するための自然な反応ですから、防御反応を止めてしまっては治療が長引いてしまうのです。今回は子どもが咳をしているときに家庭で行えるケアと、自然な経過について、崎山小児科院長の崎山弘先生にお話しいただきました。
もともと咳は、気管に入った痰などの異物を出すために現れる症状と考えられます。では、咳以外の方法で異物を排出するためにはどうすればよいでしょうか。
よく患者さんにお話しするのが、細い管に物が詰まった場合の対処法です。もし細い管に何か物がつまっていたら、管を握って振り下ろすような動作をすることによって、詰まった物質が飛び出ることを期待します。しかし、気管支に物がつまっていても、同じように子どもを抱き上げて振ることはもちろんできません。
その代わりとなる有効な対処法として、背中のあちこちをとんとんと優しく叩いて異物を移動させる方法があります。背中を叩いた振動によって、痰の位置を移動させるのを手伝ってあげるのです。叩くと子どもはむせて、ときには咳が少しひどくなりますが、咳き込んだ後は痰が動きますからすっきりとします。
痰が水分不足で粘っこくなると、当然ながら痰の切れが悪くなります。切れが悪くなると痰が気道に残ってしまい、咳の悪化を招きます。そのため、水を飲ませたり部屋を加湿したりすることが推奨されます。どちらかといえば、部屋全体を加湿するよりは、飲み物を飲ませて気道を濡らしたほうが効率もよいと思います。
鼻吸いとは吸引器で鼻水を吸い出してあげる処置のことで、鼻吸いで鼻水を取ってあげると刺激となる異物がなくなるため、咳が減るのは事実です。
ただ、鼻は刺激を与えるだけでもくしゃみや鼻水が出ますから、頻繁に鼻吸いをするとその刺激に反応して咳が出ることもあります。
鼻がかめない小さな子どもであれば鼻吸いが効果的なこともありますが、必ずしもこまめに鼻吸いをしすぎる必要はありません。鼻の異物を取ろうと思ったら、通常子どもは自分でくしゃみをします。くしゃみをすれば鼻水が出ますから、大人が鼻吸いをしなくとも症状が和らぐことがあります。
気になる場合は鼻吸いをしてあげてよいですが、あまりにも頻繁に行いすぎてしまうとかえって咳が悪化してしまう可能性があることを覚えておきましょう。
なお、ご家族が鼻水を取りたくなる代表的な理由は「鼻づまりで鼻の音がしているから」ということですが、鼻がずびずびと音を出しているのは鼻が通っている証拠です。鼻がつまっていれば、鼻から音はしません。逆にいえば、音がしている間は鼻呼吸ができているということです。鼻づまりと鼻音を誤解されている方は多いのですが、完全に鼻がつまってしまうと、くしゃみすらできなくなります。
ミルクや母乳は赤ちゃんの場合、2時間程度胃に停滞します。人間は原則として胃の中にあるものしか吐けません。そこでもしも咳き込んでしまうとミルクを吐き出してしまいますから、赤ちゃんであれば、ミルクの1回量を少なくして、そのぶん回数を多くして飲ませるようにします。赤ちゃんの胃は構造上嘔吐しやすくなっているため、胃をなるべく膨らませないようにすることが大事です。
脱水防止策としては、イオン水のような吸収の良い、つまり胃での停滞時間が短い経口補水液も適切といえます。
何らかの感染症(いわゆる風邪)からくる咳であれば、症状は1週間程度継続します。熱を出して病院に来た子どもとそのご家族には、「熱が下がったころに咳はたくさん出るから、咳だけをみればこれからもっと悪化する可能性があります」とお伝えしています。治りかけのほうが咳の回数や音の大きさは増すため、咳だけに着目すれば悪化しているように見えるのです。
ただ、これは正常な治癒の経過ですし、あらかじめ伝えておくとご家族も経過の予測がつくでしょう。
★「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。
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崎山小児科 院長
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