インタビュー

子どもが咳をしているとき、重大な病気の可能性は?

子どもが咳をしているとき、重大な病気の可能性は?
崎山 弘 先生

崎山小児科  院長

崎山 弘 先生

この記事の最終更新は2016年04月09日です。

子どもの咳は様々な原因によって起こりますが、呼吸困難を伴っている場合は重症化している可能性があります。呼吸困難がない咳であっても、2週間以上継続しているときは、念のために結核の可能性なども考慮に入れるようにします。このように、2週間以上滞ることなく咳が続くようであれば、何か慢性的な疾患が潜んでいる可能性もあるといいます。咳における重大な病気の見極め方について、崎山小児科院長の崎山弘先生にお話しいただきました。

重症度は疾患名には依存しません。記事1『子どもの咳が止まらない どんな症状に注意する?』の繰り返しになりますが、緊急性は呼吸困難の程度によって決定します。新型インフルエンザが流行している時期においても、咳が出ても呼吸困難にならず自然に治ってしまった子どももいれば、咳は出ないけれども呼吸困難になって、治療のために入院が必要となるほど重篤に陥る子どももいました。

ただし、長引く咳があるようなら結核だけは社会的に与える影響も大きいので、現在の日本においては必ず鑑別を要する疾患と考えてよいでしょう。

日本では結核感染者はだいぶ減ってきましたが、有病率の高い地域もありますし、高蔓延国からの帰国者が感染している場合もあります。学校などに結核感染者がいると、空気感染によって一気に感染してしまう可能性もあるのです。咳が長引くときには、結核は見落としてはいけない病気だと考えます。

重症疾患を見逃さないためにも、やはり毎日2週間以上の咳が続くならば医療機関を受診しましょう。咳がない時期と咳が続く時期が交互に現れるようであれば軽度の感染症(いわゆる風邪)を繰り返している可能性も高く、重症疾患のリスクは低くなりますが、毎日毎晩咳き込んでいる場合はしっかりと対処する必要があります。

喘鳴(ぜんめい)とは、息を吸ったり吐いたりする音がゼイゼイと聞こえる状態のことを指します。喘息の子どもなどに多く見られる症状です。

合わせて、犬が吠えるような咳(オットセイが吠えるような咳ともいいます)をしている場合は、クループ症候群(喉頭が炎症を起こして腫れる病気)を起こしていることがあります。重症化すると呼吸困難を起こす可能性もあるので、病院を受診しましょう。

肺炎は肺に炎症が起きている状態であり、胸部X線検査で炎症部位が白く写ることにより判明します。ただし、肺がX線検査で白く写っているから、あるいは影が大きいからといって重症と判断できるわけではありません。

肺炎というと重症なイメージが持たれがちですが、肺炎だけではなく、呼吸困難になっているか、膿胸(のうきょう:胸膜に炎症が起きて、胸膜内にがたまってしまう状態)や敗血症(はいけつしょう:感染箇所から血液中に病原菌が侵入して全身症状を起こす)などの重症感染症を合併しているかどうかが重症の決め手になります。

赤ちゃんの場合は、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、四種混合ワクチン(百日咳ワクチンが含まれています)、BCGワクチン(結核のワクチン)などを忘れずにしっかりと打つことで、これらの疾患による呼吸器感染症の重症化を防げます。また、家族の方が自宅に感染源を持ち込まないように、マスクの着用、うがい、手洗いなどをしっかり行うことでもかなりの予防効果が期待できます。

血中酸素飽和度(血液の中に酸素がどの程度含まれているかを示す値)に注目します。その値が低ければ、咳症状の程度によらず重症と判断されます。

その他の所見(医学的な見解)では、聴診器で胸の音を聞いたときに肺胞音(呼吸音)が全範囲で聞こえるかどうかも重要となります(※雑音も指摘されることがありますが、雑音は正常時でも混じることがあります)。肺胞音が聞こえないところがあればその部分を叩いてみて、濁った音が聞こえれば肺炎を起こしていることが分かります(健康な場合は響いた音が聞こえます)。

さらに熱があったり、採血をしてみて値が悪かったりしたときは、小規模のクリニックであれば、患者さんを総合病院へ紹介して精密検査をしてもらうなどの手続きが行われます。

このように重症度の判断基準としては、きちんと肺が肺として機能しているかどうかが重要です。医師からみると、聴診器で肺胞音が聞こえて呼吸困難がなければ、慌てることはありません。

★「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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