インタビュー

副甲状腺機能亢進症の症状-気づかずに過ごしている人も少なくない

副甲状腺機能亢進症の症状-気づかずに過ごしている人も少なくない
冨永 芳博 先生

名古屋第二赤十字病院 内分泌外科部長

冨永 芳博 先生

この記事の最終更新は2016年05月05日です。

副甲状腺機能亢進症は、自覚症状があらわれにくく、病気に気づかずに生活している方も少なくないといいます。ではどのような契機で、副甲状腺機能亢進症と気付くのでしょうか。名古屋第二赤十字病院 内分泌外科部長 冨永芳博先生にお話しいただきました。

副甲状腺機能亢進症は記事1「副甲状腺機能亢進症とは-副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気」でも述べた通りです。

副甲状腺機能亢進症の分類
副甲状腺機能亢進症の分類(冨永先生資料 一部改変)

⑴骨型

骨の量が減り、骨が弱くなって関節痛や腰痛を起こします。また、骨痛や骨変形や病的骨折などを起こしやすくなります。しかし現在は早い段階で見つかることがほとんどで、骨変形や病的骨折まで進行することはほとんどありません。また過剰に骨からカルシウムが溶け出すため、骨のカルシウムが減少して、骨粗しょう症を引き起こすことがあります。

⑵腎結石型

尿路結石(腎臓から尿道までの尿路に結晶の石が生じる病気)ができたり、腎機能障害が起こります。腎尿路結石は、尿路結石を頻回起こす方の50人に1人といわれています。

⑶無症候型

症状があらわれず、副甲状腺機能亢進症と気づかずに過ごしている方も少なくありません。しかし詳細な問診により、次のような症状が明らかになる場合もあります。

  • 神経筋・精神症状:疲れやすい、うつ状態、筋力低下、頭がぼーっとした感じ、いらいら感、不眠
  • 消化器症状:胃十二指腸潰瘍膵炎
  • 心血管系:血圧上昇

これらの症状は、副甲状腺機能亢進症であると予想することが難しく、多くの場合、内科や精神科、消化器科などを受診してしまいます。また、医師もこれらの症状から副甲状腺機能亢進症と気づくことが難しい場合が少なくありません。

副甲状腺機能亢進症カルシウムや副甲状腺ホルモンが高くなるため、次のような症状があらわれることがあります。

  • 倦怠感
  • 吐き気、嘔吐
  • 多飲多尿
  • 食欲不振
  • 口の渇き

また、体内のカルシウム値は8.4~10.2mg/dlは基準値ですが、20 mg/dlを超える場合は高カルシウム血症クライシスという命に関わる状態を呈する場合があります。二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモンを指標とした場合、原発性副甲状腺機能亢進症よりも数値が高く、症状も強くあらわれることがあります。

健康診断や他の病気の検診などで血液検査を行いカルシウム値やALP値が高値であると判明することで気づかれることがほとんどです

先述したとおり、副甲状腺機能亢進症であると思って受診する方はほとんどいません。繰り返しになりますが、消化器症状や精神症状では副甲状腺に異常があると考えつくことが難しく、またALPは肝臓に異常がある場合に高値になるため、ほとんどの医師が肝臓の異常であると判断してしまうこともあります。医師だけでなく、患者さん本人も想像することができない病気ですので、実際に得られている数字よりももっと多くの方が副甲状腺機能亢進症を患っている可能性があるといえるのです。

 

【冨永芳博先生の著書】

副甲状腺機能亢進症の外科

 

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