インタビュー

痔、注射で治るALTA療法

痔、注射で治るALTA療法
佐原 力三郎 先生

牧田総合病院 肛門病センター長

佐原 力三郎 先生

この記事の最終更新は2016年04月21日です。

内痔核の治療法として、注射によって切らずに治すALTA療法が注目されています。ALTA療法はどんな場合に有効なのでしょうか。牧田総合病院 肛門病センター長の佐原 力三郎(さはら りきさぶろう)先生にお話をうかがいました。

注射療法自体は昔からありましたが、今脚光を浴びているのはジオンという薬剤の硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸の合剤によるALTA療法です。

この注入薬によって、切除をせず、なおかつ昔のような腐食療法で核を脱落させるという方法をとらずに治そうという治療法です。2005年から認められた治療法ですが、使用方法によっては思わぬ合併症を来すことがあるので厚労省の指導により所定の講習を受けた医師に限り使用可能な薬剤です。

ALTAはもともと中国にあった「消痔霊」という薬液が元になっています。それを日本の会社が精製して安全性を高めたものがジオンです。その主な成分である硫酸アルミニウムカリウムは、いわゆるミョウバンです。これを精製して不純物が入らないようにしながらタンニン酸とともに局所に注入すると、無菌性の炎症が引き起こされます。そのことによって線維性に組織が縮小し、血管の周囲は線維化しますが、組織が壊死するということはありません。結果として出血性・脱出性の内痔核が劇的によくなります。

ALTA療法のメリットは、何と言っても患者さんにとって負担が少なく楽な治療だということです。術後の痛みや出血も、手術に比べて有意に軽いという結果が出ています。外来日帰り手術も行えますし、入院しても短期間で済みます。

その一方で、同じ内痔核の治療法で比較すると、切って取る「結紮(けっさつ)切除術」よりも再発率は高くなります。しかし患者さんの希望として、再発率が高くても日帰りや短期間の入院で楽に治せるほうがいいという方には、ALTA療法を行なっています。

ALTAは内痔核に対する治療方法ですが、内痔核単独の病態というのはそれほど多くありません。むしろ内外痔核、あるいは混合タイプであることが多いのです。その場合、全体的にお尻が腫れる、肛門から核が脱出する、あるいは出血するという症状を併せ持つようになります。したがって、ALTA療法で内痔核だけを固めても、外痔核が気になっている人は治療に対して満足が得られないことになります。

そこで外痔核は手術で取りつつ、術後の出血や合併症が多い内痔核にはALTAを注入するといった併用療法が行なわれます。また、大きめの内外痔核は今までどおり結紮切除という手術療法をとりながら、次に控えているそれほどでもない内痔核についてはALTA療法を行なうというやり方もあります。このように同じ肛門の中でも個別の部位によって、あるいは進み具合によって治療法を変えることも併用療法と呼ぶことがあります。これらは術者の采配によって行なわれます。

また、ひとりの患者さんで3カ所以上など、何カ所も同時に手術をすると術後の肛門狭窄(きょうさく)(狭くなること)を起こす方が少なからずいます。本来はそのようなことは避けられるはずなのですが、手技上やや不慣れであった場合など、3、4カ所を切り取ると、それが治ったときには肛門が狭くなってしまうということがあります。何カ所も切り取りたくないという場合には、メインの痔核は結紮切除で取って、残りは注射で固めるといったアレンジも可能です。

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