インタビュー

良性疾患の痔、その治療と適応

良性疾患の痔、その治療と適応
佐原 力三郎 先生

牧田総合病院 肛門病センター長

佐原 力三郎 先生

この記事の最終更新は2016年04月22日です。

牧田総合病院 肛門病センター長の佐原 力三郎(さはら りきさぶろう)先生は、患者さん本人が治療を望んでいるかどうかを大切にしているといいます。佐原先生の治療に対する考え方、どんなときに治療をすべきかなどの点についてお話をうかがいました。

は必ずしも早期発見・早期治療を第一に考える病気ではありません。

ただし、症状やその疾患による不都合があり、そのために自分がやりたい生活を諦めたり、制限せざるを得ないのであれば、それは患者さん本人にとってあまり面白い人生ではないのではないかというアドバイスをしています。

基本的に自分の身体の変化を全部受け入れて生活している方に対しては、手術はおすすめしません。ただし痔瘻に関しては、今は良性であっても治療しておいたほうがいいような活動性の痔瘻、特に深部痔瘻の場合はごくまれに悪性化する場合があるということを情報として提供しておくべきであると考えます。

他の病院で手術が必要であると言われ、セカンドオピニオンを求めて受診される患者さんも多くおられます。しかし私は、一回の診察でそこまで言い切れるケースはあまり多くないのではないかと思います。肛門疾患は自覚症状のない方もいますから、そういったものまで見つけて治療しなければならないというわけではありません。

最近多いのは、便潜血反応が陽性で内視鏡検査を行なったところ、内痔核が見つかるというケースです。今までそんな意識を持ったことがない患者さんが、検査で痔があると言われて受診されることが結構あるのです。しかし、「どんな症状があるのですか」と訊くと、「何も感じない」とおっしゃいます。そのような場合にはあえて治療をする必要はないと思います。ただ、痔の気がないわけではないから、生活習慣に思い当たるところがあれば改善してください、というアドバイスで十分なのです。

痔瘻で排(うみが出ること)を繰り返すケースは手術の適応である、ということは患者さんにお伝えします。

一回の肛門周囲膿瘍で切開・排膿しただけで痔瘻になるという方はむしろ少ないのです。排膿しただけで上皮化・瘢痕化してそれ以来繰り返さなければ、治療は必要ありません。

肛門周囲膿瘍で切開した時点で「痔瘻」として紹介されてくることもありますが、私たちのところでは必ず排膿を繰り返すかどうかということを確認してから次のステップに進むようにしています。そうでなければ、いざ手術台に乗ったらもう治っていて手術すべき病巣がないということだってあり得るのです。それは患者さんに不要な侵襲をかけるだけです。

痔瘻になっても、お酒やたばこをやめて体重も適正化し、糖尿病もちゃんと治療したら痔瘻が治ってしまったという方もいます。痔瘻を繰り返し起こすことが本人のQOL(生活の質)を落としている場合は治療すれば良くなるのですが、やはり入院費や手術代もかかりますので、患者さんにはそれなりに選択の余地があっていいのではないかと思います。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が23件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「痔」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。