インタビュー

良性疾患の痔、その治療と適応

良性疾患の痔、その治療と適応
佐原 力三郎 先生

東京山手メディカルセンター 副院長 兼 大腸肛門病センター長

佐原 力三郎 先生

東京山手メディカルセンターの副院長であり、大腸肛門病センター長の佐原力三郎先生はの名医として全国的に知られています。患者さん本人が治療を望んでいるかどうかを大切にする佐原先生の治療に対する考え方、どんなときに治療をすべきかなどの点についてお話をうかがいました。

治療に対する考え方・低侵襲の考え方

痔は必ずしも早期発見・早期治療を第一に考える病気ではありません

ただし、症状やその疾患による不都合があり、そのために自分がやりたい生活を諦めたり、制限せざるを得ないのであれば、それは患者さん本人にとってあまり面白い人生ではないのではないかというアドバイスをしています。

基本的に自分の身体の変化を全部受け入れて生活している方に対しては、手術はおすすめしません。ただし痔瘻に関しては、今は良性であっても治療しておいたほうがいいような活動性の痔瘻、特に深部痔瘻の場合はごくまれに悪性化する場合があるということを情報として提供しておくべきであると考えます。

他の病院で手術が必要であると言われ、セカンドオピニオンを求めて受診される患者さんも多くおられます。しかし私は、一回の診察でそこまで言い切れるケースはあまり多くないのではないかと思います。肛門疾患は自覚症状のない方もいますから、そういったものまで見つけて治療しなければならないというわけではありません。

最近多いのは、便潜血反応が陽性で内視鏡検査を行なったところ、内核が見つかるというケースです。今までそんな意識を持ったことがない患者さんが、検査で痔があると言われて受診されることが結構あるのです。しかし、「どんな症状があるのですか」と訊くと、「何も感じない」とおっしゃいます。そのような場合にはあえて治療をする必要はないと思います。ただ、痔の気がないわけではないから、生活習慣に思い当たるところがあれば改善してください、というアドバイスで十分なのです。

治療をする・しないの指標

痔瘻で排膿(うみが出ること)を繰り返すケースは手術の適応である、ということは患者さんにお伝えします

一回の肛門周囲膿瘍で切開・排膿しただけで痔瘻になるという方はむしろ少ないのです。排膿しただけで上皮化・瘢痕化してそれ以来繰り返さなければ、治療は必要ありません。

肛門周囲膿瘍で切開した時点で「痔瘻」として紹介されてくることもありますが、私たちのところでは必ず排膿を繰り返すかどうかということを確認してから次のステップに進むようにしています。そうでなければ、いざ手術台に乗ったらもう治っていて手術すべき病巣がないということだってあり得るのです。それは患者さんに不要な侵襲をかけるだけです。

痔瘻になっても、お酒やたばこをやめて体重も適正化し、糖尿病もちゃんと治療したら痔瘻が治ってしまったという方もいます。痔瘻を繰り返し起こすことが本人のQOL(生活の質)を落としている場合は治療すれば良くなるのですが、やはり入院費や手術代もかかりますので、患者さんにはそれなりに選択の余地があっていいのではないかと思います。