生まれつき気管が細くなっている先天性気管狭窄症はまれな病気であるため、小児科医の間でもその危険性が十分認識されていないという状況があります。しかし検査によって気管狭窄症が見つかり、専門施設での治療につながるケースは増えています。東京都立小児総合医療センターの外科で診療科責任者を務める医長の小森広嗣先生に、先天性気管狭窄症の検査と診断、そして手術の適応についてお話をうかがいました。
X線撮影・CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)・MRI(Magnetic Resonance Image:磁気共鳴画像)などの画像診断により、気管狭窄の範囲と程度を確認します。確定診断には気管支内視鏡による検査が必要となります。
現在、多くの病院でCTによる検査ができる環境が整い、CTの画像所見から気管狭窄を疑うことができるようになっているため、発見率はかなり高くなっています。また同様に、エコー(超音波検査)で肺動脈スリングが見つかることもあります。
CTの画像から気管狭窄を疑って東京都立小児総合医療センターへ紹介されてくるケースは明らかに増加しています。それはおそらく学会などにおける周知が進んだことにより、病気に対する認知度が向上していることもひとつの要因であると考えられます。ただし、中には診断がついていたにも関わらず、「気管狭窄症が危険な病気である」という認識がないまま様子を見ていて、あるとき急に子どもが窒息して搬送されてくるというケースもあります。
搬送されてから手術が間に合えばよいのですが、ひとたび発症すれば窒息状態に陥るため、最悪の場合は亡くなったり、重度の低酸素脳症の後遺症が残る可能性もゼロではありません。先天性気管狭窄症は、本当に昨日まで元気だった子どもが急変しうる病気です。そしてまれな病気だからこそ、まずその存在を知っていただくことが大切になります。
手術をすべきかどうかは重症、軽症、そしてその中間の3段階の重症度によって判断します。
(東京都立小児総合医療センターのホームページより引用)
軽症の子どもについても、気管狭窄率60%以上だからといって窒息をしないという保証はありません。呼吸器科と外科で厳正に判断して、症状とも照らしあわせて、最終的に手術をしなくてもよいという場合に経過観察措置を取ります。
先天性気管狭窄症の子どもは、成長しても気管狭窄の部分だけがずっと2〜3mmのままであるわけではなく、狭いなりに年齢とともに気管内径が太くなることがわかっています。3〜4mm台になると気管の絶対径に余裕が出てくるので、多くの場合は小学校に上がると、少なくとも窒息のリスクはなくなります。安全を確保しながらその時期まで頑張れる場合は、できるだけ手術以外の方法を提案します。
しかし重症度による手術適応はあくまでもひとつの基準でしかありません。たとえば遠方から来ている患者さんをいったん家に帰してしまうと、窒息してもすぐに連れてきていただくことができません。したがって遠方の患者さんの場合には、過去に一度でも挿管(そうかん・気管内にチューブを挿入して気道を確保する処置)を必要としたことがあれば、たとえ軽症に近かったとしても事実として窒息を起こしているわけですから、手術をおすすめします。
一方、近隣にお住まいであれば、何かあってもすぐに来ていただくことが可能ですから、そういった地理的な状況も踏まえて最終的に手術を決めていきます。我々もただやみくもに手術をするわけではありません。保存的に経過を観察することができそうであれば、極力そういったお話をして、ご家族が十分納得されることが大切であると考えます。
小森こどもクリニック 院長、東京都立小児総合医療センター外科 元医長(診療科責任者)
小森 広嗣 先生の所属医療機関
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