インタビュー

小児外科医・小森広嗣先生のあゆみ―これからの小児外科

小児外科医・小森広嗣先生のあゆみ―これからの小児外科
小森 広嗣 先生

小森こどもクリニック 院長、東京都立小児総合医療センター外科 元医長(診療科責任者)

小森 広嗣 先生

この記事の最終更新は2016年06月06日です。

東京都立小児総合医療センターの外科で診療科責任者を務める医長の小森広嗣先生は、前身である東京都立清瀬小児病院の時代から、生まれつきの難治性疾患を抱えた多くの子どもたちを救ってこられました。小児外科領域ならではの重要性や今後の課題などについてお話をうかがいました。

私は最初から小児外科医だったわけではありません。小児外科の道に進むとしても、まず一般外科、つまり大人の外科で、ある程度トレーニングを積む必要があります。小児外科に限らず、外科の中でより専門的な領域に進む際、最初のトレーニングの足場というのは一般外科や消化器外科になります。私自身も最初の6年間は一般外科・消化器外科で大人の患者さんを診ていました。

大人には大人なりのやりがいも感じていましたので、正直、迷いはありました。「もうこのままでいいか」という気持ちもありましたが、「やっぱりやりたい」という心の声に従い、小児外科の道を選んだのです。

大人の外科ではやはり「がん」が大きなテーマとなります。第一にがんを「取る」ということがあり、もちろんそのあとで再建という部分もあるのですが、小児外科の場合はその基本として「再建」―ないものをつくるということがあります。再建によっていかに機能を持たせるかというところは本当に奥が深い部分であり、気管形成術は数あるうちのひとつの分野にしか過ぎません。

鎖肛(さこう・肛門が生まれつきうまく作られない先天異常)の治療にせよ気管狭窄の治療にせよ、小児外科では機能をどう持たせるかという課題に挑戦し、さらにその後で機能がどれくらい良くなっていくかを追跡することができます。大人のがんのように取っておしまいということではなく、その子どもの成長を自分も一緒にみていくことができます。

たとえば食道閉鎖や腸閉鎖、鎖肛などの場合、手術しなければ子どもは生きていくことができません。しかし、手術をすれば機能的にもほぼ普通の生活が送れるようになるケースもかなり多いのです。手術の前後でQOL(Quality of life:生活の質)が劇的に良くなるので、そのことが我々にとって励みになっています。

もちろん小児外科の仕事は良いことばかりではありません。むしろ続けていくことが困難になり、一般外科に戻ったり開業したりして小児外科を辞めていく医師も少なくありません。

しかし、誰かがやらなければならないという部分もあり、極めていけば本当にディープな世界があります。小児外科はやればやるほど興味が尽きない領域ですし、終わりがないのです。本当にこの領域に意欲と興味がある方は常に求められています。特に女性の小児外科医はまだまだ少ないのですが、女児の膣形成など女性でなければわからないことはたくさんあると考えています。

小児外科において若手の育成、後継者の問題は非常に難しく、我々も日頃からどのようにしていけばいいかを話し合っているところです。大人の診療科のように10〜20人の集団でやれば一定のことができるのかというと、小児ではそこまでの症例数はありません。ですから、この東京都立小児総合医療センターのような施設で集約して、同じことを集中的にやっていく必要があると考えています。

たとえば、世の中には高品質なサービスを安定して提供するコーヒーショップのフランチャイズがありますが、それと同じように、もう決まっている疾患については、同じ品質で同じ医療を提供して、安心して帰っていただけるようにしたいというのが私の基本的な考えです。

もちろんそれとは別に難治例もあるので、そこは試行錯誤を重ねて進歩していく部分といえます。しかし本来の小児病院の役割は、先に述べたように安心して治療を受けていただくことであり、どの子どもも同じようによくなって帰ってもらいたいということを目標としています。

東京都立小児総合医療センターの手術数は年間800〜900例ほどで、かなりの件数が集約されています。件数の多いものについては一定の高いレベルでできてきるものがありますし、気管狭窄のように年間3〜5例という希少疾病でも10年以上の積み重ねで練り込まれている部分があります。現在は私が外科の責任者として任せていただいているのですが、これをどのように変えていき、次の世代へ継承していくのか。それが私の今後のテーマのひとつになると考えています。

 

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