先天性気管狭窄症(せんてんせいきかんきょうさくしょう)は生まれつき気管が細くなっている病気です。重症の場合には風邪などをきっかけに窒息を起こし、命にかかわることもあります。東京都立小児総合医療センターの外科で診療科責任者を務める医長の小森広嗣先生に、先天性気管狭窄症の原因と症状についてお話をうかがいました。
先天性気管狭窄症は生まれつき気管が細くなっている病気です。子どもはもともと気道が細いのですが、この病気のために気管の中がさらに狭くなっていると急に窒息状態に陥ることがあるため、迅速な診断・治療が必要とされます。
先天性気管狭窄症の発生頻度は、正確なデータとして把握しづらい部分がありますが、まれな病気であることは確かです。おそらく小児科医の間でも、気管狭窄という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのような病気なのかは知らない医師のほうが多いでしょう。小児外科で実際に症例を扱ったことがない限り、気管狭窄の実際の手応えや病気の怖さ、どのような治療をするのかといったことを知る機会は少ないのです。したがって、以前は突然死など原因不明で亡くなっていた子どもたちの中にも、おそらく先天性気管狭窄症のケースが含まれていたのではないかと推測されています。
先天性気管狭窄症がなぜ起こるかという原因はわかっていません。
気管は本来、15〜20個ほど連結した馬蹄形の気管軟骨と、膜様部という平滑筋から成り立っており、内腔に粘膜が張っています。その馬蹄形が何らかの理由で輪状軟骨(りんじょうなんこつ)というリング状の骨として形成されてしまい、結果として気管狭窄を引き起こします。
肺動脈スリングとは先天異常の一種であり、肺動脈(心臓から肺につながる太い血管)が気管に絡まるような形で肺につながってしまっている状態です。この肺動脈スリングは先天性気管狭窄症と合併しやすいことが知られており、併発率はおよそ50%といわれています。ただし、肺動脈スリングと気管狭窄症はそれぞれ個別のものと考えられ、気管狭窄についてはその狭窄率および範囲、つまり正常な気管に比べてどの程度狭くなっているか、どれくらいの長さにわたって狭くなっているかということを、症状と経過から判断します。
(関連記事:寺田正次先生記事「肺動脈スリングとは。肺動脈が通常通りに形成されていない先天疾患」)
気管狭窄率が40%以下(気管内径が2mm前後)の場合、生まれてすぐに窒息して運ばれてくることが多いのですが、逆に気管狭窄率が60%以上(気管内径3mmないし4mm以上)であれば、風邪をひいたときに息苦しくなる程度です。場合によっては無症状で経過してしまい、たまたま検査でX線撮影をしたときに気管が細いことに気づかれる子どももいます。
割合としては気管内径が2〜3mm程度の子どもが多く、親御さんに詳しくお話をうかがってみると、喘鳴(ぜんめい・呼吸に伴いゼイゼイ、ヒューヒュー音がすること)など、何かしら発見につながるような症状が以前からあることが多いようです。しかし中には親御さんが症状に気づくことなく、たまたま風邪をひいたことで窒息状態になり、病院に搬送されるというケースもあります。
したがって症状を細かく診ていくことは非常に大切です。先天性気管狭窄症はまれな疾患であるため、実際には気管狭窄ではないことが多いとしても、しつこい喘鳴があればやはり気管狭窄の可能性を念頭に置きます。CT撮影(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)をしたうえで、早めに医師に相談しましょう。
小森こどもクリニック 院長、東京都立小児総合医療センター外科 元医長(診療科責任者)
小森 広嗣 先生の所属医療機関
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