インタビュー

院内における他科との連携-安定した質の医療を提供するために

院内における他科との連携-安定した質の医療を提供するために
篠崎 浩治 先生

済生会宇都宮病院 外科

篠崎 浩治 先生

この記事の最終更新は2016年06月03日です。

済生会宇都宮病院は従来から地域の救急医療に尽力してきた歴史があり、救急科の診療は外科との二人三脚によって成り立ってきたという経緯があります。救急の重篤な患者さんに対応するため、外科のスタッフは救急科や消化器内科と常に連携して診療にあたっています。幅広い領域に対応する精鋭集団として外科スタッフを率いている主任診療科長の篠崎浩治先生にお話をうかがいました。

済生会宇都宮病院における救急医療は以前から外科との協力の下で行なわれてきた経緯があり、昨年度までは外科の出身者が救命救急センター長として救急部門の統括をしていました。救急科の中でも特に外科系救急の医師と、我々一般消化器外科を中心に行っている医師が連携し、たとえば腹部外傷などで救急に来られた患者さんに対しても一緒に治療に当たっています。

また、救急の分野で外科系のトレーニングを受けたいという方に関しても協力をしています。たとえば慶応義塾大学病院の救急医学教室から済生会宇都宮病院に派遣された医師が我々のところで消化器外科の研修を受け、慶応義塾大学病院に戻った後に今度は済生会宇都宮病院の救急診療科に来ていただくということがあります。

そうすると、我々にとってはすでに一緒に研修をしてきた間柄であり、お互いに顔見知りですから、外傷の治療に際してスムーズに連携することができます。

ですから、たとえば救急の腹部外傷で開腹手術をしなければならないような重症患者さんの場合、いわゆるダメージコントロールサージェリー(damage control surgery; DCS)と呼ばれるような治療の流れ、つまり救命のためにいったん出血を止めた後、本格的な消化器外科の手術が必要になる場合の患者さんの受け渡しにおいてもかなりスムーズに行うことができます。

また、救急外来で初期の治療から手術まで対応をした患者さんでも、術後の管理が中長期にわたって必要になる方については、我々外科の病棟を使っていただき、外科のほうに移行していただくようにしています。

これらが比較的スムーズに行なわれるのは、実は外科でトレーニングを受けた研修医が救急と掛け持ちをしていて、研修医は引き続き患者さんを担当しつつ、主治医だけが救急から外科に変わるということが行なわれているからです。ですから、救命救急センター経由で入ってくる外傷を含めた腹部外科の患者さんの受け渡しに関しては、それぞれの分野でスムーズに行われています。

実は外科のスタッフ自体はかなり少なく、常勤スタッフは6名から多いときでも7名です。もちろんレジデント(研修医)がそれに加わりますので、トータルでは11〜12名となります。ちなみに年間の手術症例は1,400件前後で、2014年のNCD(National Clinical Database)の登録数は1,336件でした。

比較的人数の少ない中で、ひと通りすべての領域の消化器外科の手術、救急の手術を行っていることになるのですが、内科や救急科などそれぞれの診療科と融通を利かせながら進めていますので、効率よく、なおかつ質を担保しながら、医療を必要として病院に来られている患者さんのためにも、フレキシブルな対応ができるよう風通しをよくしているというところが我々の強みであると考えます。

各専門領域の敷居が高いと、おそらくこれだけの手術件数を行うことはできないと思います。たとえば胃など上部消化管の専門だから大腸の手術はしない、あるいは大腸が専門だから胆石の手術はできないというわけにはいきません。ですから、外科の各々のスタッフがひと通りすべての領域で最低限の技術という武器を身につけた上で、分担して患者さんのニーズに対応しています。

実際のところ、緊急時の内視鏡の処置や止血なども消化器内科と分担しながら行っていますし、内視鏡に限らず、さまざまな要請に応えていくためにひと通りの技術が求められるという面があります。ですから、一般的な研修のトレーニングを終えた方が2年ぐらいここで経験を積んでいただくと、かなり幅広く技術を身に付けることができます。もし卒後10年目前後で、自分の専門分野を極める方向ではなく、まずひと通りのことができるようになりたいという方には非常によい経験ができる場であると考えています。

もちろん、このことは病院に来られる患者さんに対しても、安定した質の医療を提供できるということにつながります。どの曜日のどの時間に来ていただいても、専門の医師が不在のため対応できないというようなことがないよう、もし何かあればそれがたとえ早朝・夜間であってもしっかりと対応できるということが我々の務めであると考えています。

 

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