インタビュー

外科における内視鏡治療-胸腔鏡・腹腔鏡を用いた内視鏡手術の導入

外科における内視鏡治療-胸腔鏡・腹腔鏡を用いた内視鏡手術の導入
篠崎 浩治 先生

済生会宇都宮病院 外科

篠崎 浩治 先生

この記事の最終更新は2016年06月02日です。

済生会宇都宮病院の外科の特色として、一般的には消化器内科で担当することの多い領域でも外科のスタッフが協力して消化器/一般外科疾患に関して幅広く診療を行っています。また、質の高い医療を提供するため、胸腔鏡・腹腔鏡を用いた内視鏡手術も積極的に導入しています。済生会宇都宮病院の外科における内視鏡治療について主任診療科長の篠崎浩治先生にお話をうかがいました。

大学病院や専門病院であれば通常は消化器内科が担当しているような領域に関しても、済生会宇都宮病院では我々外科が、消化器内科と協力して診療することが多くなっています。消化器内視鏡も含め、消化器一般に関しては診断から治療までの診療を一貫して外科で行うケースも少なくありません。現在のところ一般的な外科の手術を中心とした治療・外来・入院に加えて、食道・胃・大腸および肝胆膵領域の内視鏡診断・内視鏡治療を行っています。

早期食道がん胃がん大腸がんに対する内視鏡治療においては、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)など難しい治療に関してはこれまで主に外科で行っていました。現在は消化器内科の充実により両科で協力して診療する体制ができるようになりつつあります。

ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)による胆道系疾患の内視鏡診断や、胆管結石に対するERCP下のEST(内視鏡的乳頭括約筋切開術)およびEPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術)といった肝胆膵領域の良性疾患に対する内視鏡診療に関しても、外科を中心として行ってまいりました。

また、同じく肝胆膵領域に対する超音波内視鏡による診断と治療については、2010年より当科で本格的に導入し、EUS(超音波内視鏡)やEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)を年間合計120件前後行っています。

また、消化管がんに対する抗がん剤による化学療法は化学療法専門医とのカンファレンスを定期的に行い、主な日常診療は外科で担当しています。さらに、乳腺外科については乳腺専門医により、診断・治療を一貫して外科で行っています。

我々外科の独自の取り組みとして、医療の質を全国的な水準に高めるためにがんに対する内視鏡治療(胸腔鏡・腹腔鏡)の導入を進めてきました。私自身の専門である食道がんの胸腔鏡手術は、ここ数年ですでに導入が完了しています。導入にあたってはパイオニアである東海大学の小澤壯治教授に定期的に手術にお越しいただいて指導を頂き、最新の鏡視下手術を行っています。

胃がんの内視鏡治療は、内視鏡センター長の木全(きまた)医師がこの地域ではもっとも早く10年以上前に始めています。導入にあたっては私と木全医師が藤田保健衛生大学の宇山一朗教授に直接指導を受け、最初の数例は宇山先生に直接手術指導していただき、その後5年間は東海大学の松井英男先生(現・川崎高津診療所 所長)にすべての手術に指導を頂き、質の高い手術手技の安定化を行いました。現在、胃がんの腹腔鏡手術は胃がんの手術全体の約7割を占めています。

大腸がんの腹腔鏡手術も導入が完了しており、この地域としては自治医科大学に次いで早く、現在は年間200件を超える結腸・直腸癌手術の8割近くの症例を腹腔鏡手術で行っています。一般的な消化器がんの手術数としては、胃がんが年間100〜120例、大腸がんが200例弱です。この地域では2つの大学病院に次いで、栃木県がんセンターと同じくらいの件数になっています。

一方で肝臓がんの腹腔鏡治療は、現在のところ限られた症例にのみ行っています。また膵臓がんについては、がんの確実な診断がついているものは腹腔鏡手術を避け、前がん病変とされるような膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPNM)などについて腹腔鏡治療を導入しています。

がん以外の一般疾患としては腹壁ヘルニア・鼠径(そけい)ヘルニアに対して、再発例や他院での手術後について腹腔鏡手術を導入しています。したがって、全国的に一般の病院で行なわれているような腹腔鏡・胸腔鏡の鏡視下手術についてはここ5年ほどでかなり導入が進み、平均的な水準以上のことができるようになっています。

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