放射線科で行っている業務はX線撮影などの検査はもちろん、がんなどに対する放射線治療のほか、放射線画像の技術を用いたカテーテル治療など多岐にわたります。済生会宇都宮病院放射線科で行っている業務について、診断部に所属する薄井広樹先生にお話をうかがいました。
済生会宇都宮病院の放射線科は診断部と治療部の2つに分かれます。常勤医は全部で10名、そのうち治療部が2名、残り8名が診断部という内訳になっています。治療部は放射線治療という仕事を受け持っており、もうひとつの診断部は大きく分けて3つの仕事をしています。
1.放射線診断 | CT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)などの画像に対してレポートをつけます。画像からどのような病態が考えられるかということを主治医にサジェストする(伝える)という仕事です。 |
2.IVR(Interventional Radiology | カテーテルを血管の中に進めて治療をしたり、CTのガイド下で膿を抜くドレナージを行ったりするなど、画像診断の技術を応用して治療を行います。 |
3.RI(Radioisotope; 核医学検査) | ラジオアイソトープ(放射性同位元素)を体内に注射して、その挙動によって診断を行います。 |
診断部ではこの3つの分野を扱っており、放射線科全体としてはこれに放射線治療を加えて4つの業務を柱としています。
このうち放射線診断とIVRに関しては、たとえば夜中の緊急の場合にも必要に応じて対応しています。24時間対応可能というのが済生会宇都宮病院の放射線科のひとつの特徴となっています。
院内の他の診療科あるいは他の施設から依頼があった場合、まず患者さんを診察させていただいて、放射線治療の前にシミュレーションを行います。CTで撮影をして全体の形や位置関係を把握した上で、放射線の線量や照射する範囲などを検討して治療プランを立てます。
放射線の照射はひとつの方向からだけではなく、さまざまな方向から行うことができます。それを究極まで進めたものがIMRT(強度変調放射線治療)なのですが、現在はまだ導入に向けた準備段階ですので、治療計画用のCTを使ってシミュレーションを行い、腫瘍にもっとも集中的に効率よく線量を照射できるような方法を割り出して治療をしています。
IVRはごく小さな傷から血管内にカテーテルを入れて行えるため、手術に比べて傷が少ないことが大きな利点のひとつです。出血量も少ないので患者さんの負担・負荷を減らすことには非常に役立っていると考えます。このような、いわゆる侵襲を少なくするということに関しては、IVRは有効な方法です。
RIの代表的なものに骨シンチグラフィがあります。骨の原料となるリン酸に似た薬にRI(放射性同位元素)をくっつけて注射すると、それが骨に集まります。たとえばがんが骨に転移していると、骨が新しく作られたり壊されたりするサイクルが非常に速いペースで繰り返されるため、その部分により強く集まることになります。そのようすを画像として撮影すると、RIが強く集まっているところにがんの転移があることがわかります。
PET(Positron Emission Tomography; 陽電子放射断層撮影)も同様の原理を利用したもので、FDG(フルオロデオキシグルコース)というブドウ糖に似た薬にRIをくっつけたものを使います。がん細胞は増殖するための栄養源としてブドウ糖を多く使うので、FDGががん細胞に強く集まります。それを撮影することによってがん細胞がどこにあるかがわかります。
薄井 広樹 先生の所属医療機関