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インタビュー

公開日 : 2016 年 12 月 05 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

西太平洋地域でのポリオ根絶を達成し、SARSを制圧するため陣頭指揮をとった尾身茂先生は、国際感染症対策の功労者として世界的に知られています。しかし、尾身先生が取り組まれている問題は、国際感染症という一領域にとどまるものではありません。

20年間にわたりWHO日本人職員として活躍し、日本国内でもパブリックヘルスと向き合い続けたことで、客観的にみえるようになった「日本の美点と課題」とは、どのようなものでしょうか。尾身茂先生にお話いただきました。

はじめに-自分の軸は1つではない

私は1990年から20年間、WHO(世界保健機構)に籍をおき、ポリオ(小児麻痺)根絶やSARS(重症急性呼吸器症候群)制圧など、国際感染症領域の諸問題に力を注ぎました。39歳から59歳までというまさに働き盛りの時期をWHOで過ごし、特にポリオ根絶に関しては第2の青春を燃やすかのごとく、無我夢中で取り組んだものです。

しかしながら、私自身が自分という人間を考えるとき、国際感染症というある種の「枠」を設けてしまうことは、いささか窮屈であるように感じます。

というのも、私が上述の職務に全身全霊を費やしたのは、「国際感染症が自身の専門であったから」でも、「国際感染症問題に個人的な興味を持っていたから」でもないからです。

医療に関心を抱く若い方々や、今現在チームのリーダーとして何らかのミッションを担っている方々の参考になればと思い、本記事では、私を突き動かしてきた原動力たるもの、そして、自身の軸ともいえる3つの柱についてお話しします。

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)の理事長として

慶應義塾大学法学部で3年間法律学を学んだのち、自治医科大学に一期生として入学し、医師の道を進みはじめた私の経歴は、非常にユニークだといわれます。また、医師として歩んできた道のりも、一般的な医師の方々と比べるとやや異色であるように感じます。

現在、私は地域医療を支える目的で設立された組織、JCHO(ジェイコー、独立行政法人地域医療機能推進機構)の理事長を務めていますが、これは自治医科大学の卒業生であることが関係しているのかもしれません。

JCHOでの職務は、私を作る3本柱のうちのひとつであり、現在の主たる仕事でもあります。

JCHOでの取り組み-地域医療機能の向上

医療に求められるものは、時代のニーズに応じて変化します。かつては急性期病院における専門家、いわゆる「名医」を充実させることが要請されていました。

しかし、高齢化が進んだ日本社会が今求めているものは、急性期医療のみではありません。多くの方が「病気と共に生きていく」時代に入り、予防のための検診、治療後のリハビリテーション、介護など、地域包括的でシームレスなサービスの拡充が急務となっています。

つまり、専門医と同時に「総合診療医」の活躍も不可欠な時代に入ったというわけです。

全国57の公的病院、26の介護老人保健施設、7の看護専門学校の舵取りを行うJCHOの役割には、総合診療医や特定看護師、地域に根ざしたメディカルスタッフの育成があります。これらの業務は私たちが個人の興味関心により独自に作り出したものではなく、地域住民の要請により生じたもの、つまり時代の流れにより自然発生的に生まれたものといえます。

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