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介護医療院の創設に関する提言-空床を利用したケアミックス病院など柔軟な転換を

介護医療院の創設に関する提言-空床を利用したケアミックス病院など柔軟な転換を
安藤 高夫 先生

医療法人社団永生会理事長/衆議院議員

安藤 高夫 先生

これまで、長期療養を要する要介護高齢者の方は、「介護療養型医療施設」と呼ばれる介護機能を兼ねた医療施設を利用されていました。しかし、必ずしも医療を必要としない方の社会的入院などが問題となり、厚生労働省は10年ほど前から「介護老人保健施設(老健)」への転換を促してきました。とはいえ、施設への転換は決して容易なものではなく、厚生労働省が幾度と提示してきた介護療養型医療施設の廃止はこれまで複数回にわたり延期され、2018年の改定では「介護医療院」の新設されることが決まりました。

本記事では介護医療院の望ましい在り方や、早期転換を促進させるためのアイデアについて、医療法人社団永生会理事長の安藤高朗先生にお話しいただきました。

(インタビュー:2017年9月)

介護医療院とは、既存の介護療養型医療施設(介護療養病床)を廃止し、その転換先として創設される新たな介護保険施設のことです。病院経営者のなかには、介護医療院への転換を視野に入れている方も多数おられます。

2017年に公布された「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案のポイント」では、新たな介護保険施設に関して以下のような記載がみられます。

2 医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)

① 「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナル」等の機能と、「生活施設」としての機能とを兼ね備えた、新たな介護保険施設を創設

※ 現行の介護療養病床の経過措置期間については、6年間延長することとする。病院又は診療所から新施設に転換した場合には、転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できることとする。

② 医療・介護の連携等に関し、都道府県による市町村に対する必要な情報の提供その他の支援の規定を整備

(参考:厚生労働省「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案のポイント」http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193-06.pdf )

支えてもらいながら歩いている高齢者

介護療養型医療施設の廃止は、これまで幾度か延期されてきました。廃止という方針が取り決められた2007年から10年以上の歳月が経過し、現在では人口の高齢化に伴う要介護者の増加や医療費の増大など、医療と介護を取り巻く景色は様変わりしています。

介護療養型医療施設では、一定の基準を満たした重症の要介護高齢者の方しかみることができず、カバーできない高齢者も増加しています。医療を提供しながら住まいとして機能する介護医療院への転換は今の時代背景を映した一つの形であり、社会全体ですみやかに移行するべく推し進めていく必要があるといえます。

介護医療院は、大きく2つの形態に分けられます。

ひとつは、これまでの介護療養型医療施設を踏襲する「従来型」、もうひとつは介護療養型老人保健施設等からの転換を想定している「老健型」です。前者は医療的管理のもと、長期療養と介護を必要とする要介護者の方向けのサービスを提供する施設であり、後者は要介護者の方にリハビリテーションなども提供するなど、在宅復帰も視野に入れた施設です。このようにコンセプトが異なるため施設基準もそれぞれ個別に設定されており、厚生労働省の発表資料によると、従来型の医師数が48対1であるのに対し、老健型は100対1となっています。

また、介護医療院とは異なりますが、介護付き有料老人ホームなどの特定施設も重要な転換先の一つとして、考えられています。介護付き有料老人ホームは、訪問診療と訪問看護が「外付け」されている介護・生活施設と捉えることができます。

従来型と老健型の介護医療院、そして介護付き有料老人ホームなどの特定施設などが、今後社会で大きな役割を果たす施設となっていくのかもしれません。

者さんのいない複数のベッドがある病室

現在、日本の医療界が抱えている目下の課題は、社会保障費の高騰と提供体制の効率化です。そして、それに付随した病床数の削減も叫ばれています。日本は今なお病床数が多く、厚生労働省も早期にこの問題を解決しなければならないという意識もあり、介護医療院への転換を促しているようです。

介護医療院は介護保険施設という枠組みに入るため、現行の介護療養病床の病床数としてはカウントされなくなり、病床数削減にもつながります。

しかしながら、一つの施設の方向転換には人材面の問題や経営的な問題も絡みます。国が介護医療院への早期転換を求めるのであれば、既存の介護療養型医療施設とほとんど同じ人員配置でよいと認める、加えて、介護療養型医療施設よりも高い診療報酬をつけるといったインセンティブが必要なのではないでしょうか。

労働人口が減少傾向にある地域では、介護医療院を作ったとしても、看護師や介護福祉士が集まらないという可能性があります。こういった地域では、既存の病棟のなかの一部を介護医療院として利用してもよいのではないかと考えます。

たとえば、特別養護老人ホームの利用中に容態が悪化し一般病院へと転院され、医療的処置が施される患者さんは今現在も多数おられます。このような現状を踏まえると、病院の一部の空きベッドを介護医療院として使用する、新しいタイプの「ケアミックス病院」が認められれば、病院勤務医が患者さんの変化にすぐに対応することも可能になるでしょう。

現在、地域包括ケア病棟に関しては病院や病棟単位のみならず、病室単位での申請も認められています。こういった制度を応用することで、よりスムーズな介護医療院への転換が可能になるのではないかと考えます。

また、大都市圏で一般急性期医療を担う中小民間病院のなかにも、一般病棟から介護医療院への転換を希望している施設が一定数存在します。

ご存知の通り、平均在院日数の短縮は声高に叫ばれており、経営が厳しい状態のなかで、更に空きベッドが増えるといった状況に瀕している病院も少なくはありません。私としては、一般病棟と介護医療院を「合体」させ、空床に新たな価値を持たせることは、利用者へのサービスの拡充という意味でもアイデアの一つではないかと考えています。

このほか、収容型の精神科病院から介護医療院への転換を考えているという声もあがっています。精神科医療を専門とする病院の患者さんも時代とともに高齢化しており、ADL(日常生活動作)の低下により地域へ戻すことができないという現状があります。精神科領域の疾患を持つ要介護高齢者の方にとっては、精神科版の介護医療院も一つの形ではないかと考えます。

このように、介護医療院とは地域や元の病院の特性などに応じ、柔軟に創設・使用されることができる施設であっても良いのではないかと考えています。

前の項目では介護療養型医療施設の廃止が進まない現状を述べましたが、介護医療院への転換を検討している方も少なくありません。、現在、「介護医療院への転換」は注目度の高いトピックスのひとつになっています。

実際に、競争力の強い介護医療院を作るべく、認知症や摂食嚥下障害のケアに特化した介護医療院の創設を考えているという声や、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を丁寧に行い、患者さんとご家族の希望を反映した「質のよい看取り」を強みとしたいという声も上がっています。 

レントゲン室

介護医療院は、元々あった病院からの転換だけでなく、老人保健施設からの転換や新設という選択肢も検討されています。このように、もともとの施設の設備を考えると、それぞれに異なる施設基準を作るべきであるといった議論もあるようです。例えば、老人保健施設から転換した老健型の介護医療院の場合は、検査室やレントゲン室を新たに設置する必要はないのではないかという議論です。しかしながら、介護療養型医療施設が廃止された後、さまざまなタイプの介護医療院において、ある一定以上の重症な患者さんをみることが求められるようになると推測されます。これを踏まえると、老健型や新設の介護医療院に関しても、一定の検査行為を行えるよう、施設基準を検討すべきではないかと考えています。また、医療の質を考えると、検査施設には臨床検査やX線検査、さらには調剤室といったものも必要になるのではないかと感じています。

安藤高朗先生

本記事では、病院経営を維持していくためのひとつの策でもある、「介護医療院への転換」を挙げ、掘り下げてお話ししました。

最後に、私たち医療法人社団・永生会が、これからの時代を乗り越えていくために行っている取り組みについてご紹介します。

多くの急性期病院にとって、7:1入院基本料を維持することは難しく、急性期病院の数はこれから自ずと絞り込まれていく時代に入ります。

私たちは、これまで急性期医療と回復期・慢性期医療の2つの車輪により経営を維持してきましたが、この度新たに「在宅の輪」を作り、3車輪戦略による病院の運営をはじめました。

在宅の輪のなかには、訪問泌尿器科や訪問皮膚科、訪問精神科や訪問形成外科など、あらゆる診療科が揃っており、患者さんやご家族からもご高評いただいています。

ただし、地域の在宅医療を病院が独占することはあってはなりません。主に八王子の地域医療を担う永生会は「地域とのハーモニー」を重視し、各診療所との連携を強化する取り組みを行っています。

また、永生会では、医療や介護を通じた「人づくり、街づくり、思い出づくり」をキャッチフレーズに掲げています。「ここを利用してよかった」「よい思い出ができた」といっていただけることは、医療者の達成感にもつながります。私はこのような現象をよい思い出づくりの2乗と捉えています。

また、永生会では慢性期でもしっかりと救急医療を実践できるよう、病院救急車を活用した「慢性期救急」を行うとともに、退院した患者さんのフォローも責任をもって行なっています。このようにして、連続性のあるケアである永生会版地域包括ケアが、我々の強みだと思っています。