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インタビュー

左心低形成症候群(HLHS)とは? 原因・症状

左心低形成症候群(HLHS)とは? 原因・症状
平田 康隆 先生

東京大学医学部附属病院 心臓外科 准教授

平田 康隆 先生

左心低形成症候群(HLHS)は、通常4つの部屋で構成される心臓のうち左室が非常に小さい(低形成)ために、あらゆる症状が起こる疾患です。胎児あるいは生後まもなく発見されますが、適切な治療が行われない場合、生後1か月以内に死亡することがあるため、胎児診断などによる早期発見が望まれます。

左心低形成症候群の原因や症状、胎児診断の重要性について、東京大学医学部附属病院の平田康隆(ひらた やすたか)先生にお話を伺いました。

通常、心臓は4つの部屋にわかれており、全身を巡り酸素が少なくなった血液がまず右房、そして右室へ入ります。その後、血液は右室から肺動脈を通り肺へ、肺で酸素をもらった血液は左房、左室へ入り、左室から全身に、血液が巡ります。

左心低形成症候群は、全身に血液を送るべき左室が非常に小さい(低形成)ためにうまく機能せず、最終的に右室を使って全身に血液を循環させます。左心低形成症候群は、まだ患者さんの体が小さい時期に、非常に細い大動脈を肺動脈につなぎ合わせる難易度が高く侵襲(身体的な負担)の大きな手術を行う必要があるため、単心室症と呼ばれる病気のなかでも比較的重症度が高く、手術死亡率も高い重篤な心疾患です。

先天性心疾患(生まれながらに心臓に疾患がある)は100人に1人の赤ちゃんに発生し、左心低形成症候群はそのうち1.2〜1.4%といわれています。つまり、1万人の赤ちゃんに1人ほどの割合で発症すると推定されます。

先天性心疾患は1つの遺伝子異常によってではなく、さまざまな遺伝子異常が関係して起こります。あるいは、遺伝子以外の原因との組み合わせによって起こることも多いです。最近の研究では遺伝的な要素も一部関連するといわれていますが、はっきりとした原因は解明されていません。

胎児の心臓の血液循環は、心臓(部屋や動脈)の発達に影響を与えます。

人の体は、卵子と精子が出会ってから最終的に体を形成するまでに、複雑な過程を辿ります。子どもが胎内にいるとき心臓には卵円孔という穴があり、母体からの血液を循環させるのに役立っています。(卵円孔は生後しばらくしてから血液の行き来がなくなり、ただのくぼみになります)

通常、胎児の血液は卵円孔を通って左室へ入りますが、なんらかの原因によって卵円孔が小さいことがあります。すると、左室に送られる血液量が減ってしまい、胎内成長の過程で左室や上行大動脈が未発達(低形成)になることがあります。

左心低形成症候群は、チアノーゼ、多呼吸、ショック状態などの症状があらわれます。

チアノーゼ

通常の心臓は部屋が4つあり、動脈血(酸素を含む赤い血)と静脈血(酸素を含まない黒い血)が混ざることはありません。しかし、左心低形成症候群の場合、動脈血と静脈血が混ざるため、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる)が起こります。

多呼吸など心不全の症状

肺に血液が流れすぎることで心臓に負担がかかり、多呼吸など心不全の症状が出ます。

動脈管が閉じるとショック状態に陥る

胎児の心臓には動脈管(大動脈と肺動脈をつなげる血管)があり、生後1日ほどで自然に閉じます。しかし左心低形成症候群の場合、動脈管が閉じると下半身に血液が流れなくなり、ショック状態に陥ります。そのため、動脈管を開いておく薬(プロスタグランジン)を点滴静注し、下半身への血流を維持します。

また、ショック状態の1つとして尿量が減少することもあります。

心臓は全身と肺に血液を送り出しますが、左心低形成症候群になると心臓からの血液はほとんど肺にいき、全身に血液が巡らなくなります。このように肺に血液が流れてしまうことを「ハイフロー」といいます。

通常、生まれた直後は血液が肺へ流れにくいのですが、2〜3日経つと肺へ血液が流れやすくなります。そのため生まれてから日数が経つほどに左心低形成症候群のハイフローは強くなり、症状は悪化していきます。左心低形成症候群は適切に治療を行わない場合、生後1か月ほどで死亡することがあります。そのため左心低形成症候群は、まず診断できること、そして診断された場合には適切な治療を始めることがもっとも重要です。

左心低形成症候群と診断される(または異常に気付く)ケースでもっとも多いのは、胎児診断です。左心低形成症候群は心臓の大きな部屋が1つしかない形状(単心室)のため、胎児診断で発見されやすいのです。

生後まもない子どもにチアノーゼがあり、何らかの心臓病が疑われる場合、ほとんどの症例にエコー(超音波)検査を行います。その後、さらに心臓や血管の詳しい状態をみるために専門医による検査を実施します。

胎児診断は、非常に重要です。胎児診断で子どもの病気がわかれば心の準備もできますし、その病気について学んでおくことも可能です。左心低形成症候群の場合、段階的に手術が必要であるため、特に心の準備が必要と考えます。

生まれる前に左心低形成症候群とわかっていれば、新生児期に起こる急激な症状悪化を回避できる可能性が上がります。左心低形成症候群は動脈管が閉じてから発見された場合、非常に予後が悪いです。そのような事態を避けるためにも、胎児診断による発見は重要といえます。

記事2『左心低形成症候群(HLHS)の検査・治療』では、左心低形成症候群の検査と治療について解説します。

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  • 東京大学医学部附属病院 心臓外科 准教授

    平田 康隆 先生

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