接触皮膚炎とは、皮膚が何らかの物質に触れることで赤くなったり、痒みや皮疹(ひしん)が起こったりする疾患で、一般的には「かぶれ」という名称でも知られています。
接触皮膚炎は、私たちが生活しているなかで触れるあらゆる物質が原因となります。本記事では、接触皮膚炎の原因となる代表的な例や症状について、横須賀市立うわまち病院皮膚科科長である大川智子先生にお話を伺いました。
接触皮膚炎とは、外からの物質が皮膚に接触することで紅斑(こうはん)や皮疹(ひしん)などの症状が現れる疾患です。次項で詳しく述べますが、普段私たちが生活するなかで触れるあらゆるものが接触皮膚炎の原因となります。
接触皮膚炎に罹患している患者さんは多く、統計的には皮膚科クリニックの外来患者の20%以上が接触皮膚炎であったという報告があります。
接触皮膚炎は、皮膚が乾燥していたり、傷があったりして外的刺激から皮膚を守るバリア機能が低下しているときに発症しやすいと考えられています。
また、職業などの環境要因も接触皮膚炎の発症に大きく関係しています。たとえば、素手で毛染めやシャンプーをする機会が多い美容師の方や、手袋の着用や手指消毒の機会が多い医療関係者、レジなどで小銭を扱う仕事をされている方など、同じものに繰り返し触れる職業に就いている方は接触皮膚炎の発症リスクが高いといえます。
小さな子どもにおいては、草花によく触れたり砂場遊びをしたりするなかで繰り返し刺激を受けることで、刺激性の接触皮膚炎を発症するケースもあります。
接触皮膚炎は、大きく「アレルギー性接触皮膚炎」と「刺激性接触皮膚炎」に分けることができます。
アレルギー性接触皮膚炎は、特定の同じ物質に対してアレルギー反応を起こすように体が感作してしまうことで発症します。
一方、刺激性接触皮膚炎は刺激の強い物質が皮膚に触れる、また界面活性剤や唾液、便や尿などの弱い刺激を繰り返し受けることでも、刺激性接触皮膚炎を発症します。オムツかぶれは便や尿などによる刺激性接触皮膚炎です。
では、実際には身の回りのどのようなものが接触皮膚炎を引き起こしやすいのでしょうか。次項では代表的な具体例をいくつかご紹介します。
前項でもお話ししましたが、接触皮膚炎は身の回りのあらゆるものが発症原因となります。そのなかでも、金属はアレルギー反応を起こしやすい物質としてよく知られています。金属アレルギーの原因となるものとして代表的なのは、アクセサリーや時計、硬貨、ベルトのバックルなどです。たとえば、レジを打つ仕事をされている方が慢性的に手の荒れが続いている場合、小銭に含まれているニッケルなどの金属が接触皮膚炎を引き起こしていることがあります。また、慢性的に腹部の湿疹が続いている方に皮膚テスト(パッチテスト)を行うと、ベルトのバックルが湿疹の原因となっていることが判明することもあります。
金属は汗などの水分に触れると成分が溶出しやすくなります。そのため、夏になるとネックレスをしている部分の肌が荒れたり、小銭を入れたズボンのポケットから汗で金属が溶出して大腿部に湿疹が出たりすることもあります。
光アレルギー性接触皮膚炎とは、光に反応する物質が触れた部分に光が当たることで起こる接触皮膚炎です。代表的な物質には、湿布薬に配合されることのあるケトプロフェンが挙げられます。
光アレルギー性接触皮膚炎では、強い炎症反応が起こるため、紅斑(皮膚が赤くなること)などの軽い症状のみならず、水膨れなどの症状を伴うこともあります。また、原因物質との接触から数日〜数週間経過していても、光が当たることを契機に症状が出現するため、患者さんのなかには湿布薬を使用したことを忘れてしまっており、何が原因で症状が出たのかわからないという方も少なくありません。
しかし湿布薬が貼ってあった部分に一致した形で症状が現れるので、比較的容易に光アレルギー性接触皮膚炎であると診断することができます。
病気を治すために使用している医薬品も、接触皮膚炎の原因となることがあります。
外用薬では、抗菌外用薬や抗真菌外用薬、まれにステロイド外用薬が挙げられます。消毒液ではポピドンヨードなどで接触皮膚炎を発症する方がいます。
衣類では、黒や黒に近い色の衣類で接触皮膚炎を発症することがあります。黒い色を出すためには「コバルト」や「クロム」といった金属が使用されることがあり、これに対するアレルギーで接触皮膚炎が引き起こされることがあります。
また、化粧品に含まれている保存料や香料が原因となることもあります。顔に慢性的に赤み、痒みが続いている際に、調べてみると化粧品が原因であることがあります。
赤ちゃんなどによくみられる「オムツかぶれ」は、主に尿や便などが長時間皮膚に触れることで引き起こされます。
オムツかぶれを防ぐためには、オムツが汚れたらまめに交換をしてオムツのなかの環境を良好な状態に保つことが大切です。それでも症状が治まらないときには、白色ワセリンなど皮膚を保護するような薬を塗ることも有効でしょう。
接触皮膚炎の症状は、紅斑、丘疹(プツプツと盛り上がった皮疹)、痒みなどです。原因物質が触れる部位に症状が現れます。これらが慢性的に持続している場合に接触皮膚炎が疑われます。ときに、接着剤やペンキに含まれているエポキシ樹脂などが揮発する物質が空気を介して皮膚に接触して全身の広範囲に症状が出ることもあります。
また原因物質に触れている皮膚が薄いほど、症状が強く現れることがあります。たとえば、原因物質がシャンプーの場合に、頭皮ではなく、目の周りや耳の後ろに症状がもっとも強く現れることが多々あります。これはお湯で洗い流すときにこれらの部分を伝って流れることで発症してしまうからであると考えられます。
接触皮膚炎が重症化すると、前述の症状に加えて皮膚が赤く腫れ上がったり、水膨れになったりすることがあります。
まれではありますが、強い炎症によって発熱したり、慢性的に皮疹が出続けていることでリンパ節が腫脹したりすることもあります。
接触皮膚炎は、紅斑や皮疹などの症状が消えたあと、火傷や傷と同じように色素沈着して跡が残ってしまうことがあります。
また接触皮膚炎が慢性的に繰り返し起こっている場合、皮膚が厚く、ごわごわとした苔癬化と呼ばれる状態になります。このような状態になると塗り薬も効きにくくなってきてしまいます。
ですから接触皮膚炎では、慢性的に症状が持続している場合は放置をせずに、医療機関できちんと原因精査を行い、それに合わせた治療を行うことが大切です。
接触皮膚炎の一番の治療は原因となる物質との接触を避けることです。アレルギー性の場合、原因検索のための検査には、「パッチテスト」という皮膚テストを行います。接触皮膚炎の症状に対する治療として、ステロイド薬の塗布や抗ヒスタミン薬の内服を行います。
記事2『接触皮膚炎(かぶれ)の検査と治療法とは?』では、これらの検査方法や治療法について詳しく解説します。
横須賀市立うわまち病院 皮膚科 科長
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