インタビュー

バージャー病の治療には禁煙が重要!治療法はなにがある?

バージャー病の治療には禁煙が重要!治療法はなにがある?
田口 明彦 先生

先端医療振興財団 先端医療センター 再生医療研究部 部長

田口 明彦 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年04月03日です。

2018年2月現在、バージャー病の治療は研究段階です。しかし、発症の原因が喫煙と強く関係していることがわかっています。そのため、バージャー病の治療では、まず禁煙が絶対に必要です。研究が進められている再生医療とともに、バージャー病の治療法について先端医療センター研究所の田口明彦先生にお話を伺いました。

灰皿

バージャー病の発症や病気の進行には、喫煙が関係していると考えられています。バージャー病の患者さんの93%は喫煙歴があり、喫煙の継続によって病気が進行し、すべての治療が無効になります。そのため、喫煙をしている方は、必ず禁煙する必要があり、受動喫煙にも十分な注意が必要です。

また、手足の清潔を保ち、保温に気をつけ、皮膚に傷をつけないように注意することが大切です。

バージャー病の治療では、薬物療法による内科的な治療と、手術を行う外科的な治療があります。

バージャー病の進行度や、患者さんによってどの治療法を行うかは異なります。以下では内科的な治療と外科的な治療について解説いたします。

バージャー病の内科的な治療では、禁煙指導と薬物療法を行います。

薬物療法では抗血小板薬や抗凝固薬などを使用します。抗血小板薬などを使用することで、ふさがっている血管を拡張することが期待されています。しかし、薬物療法は患者さんによって効果はさまざまです。

高い効果がみられる患者さんもいます。なかには、効果があまりみられない患者さんもいます。薬物療法は患者さんにあわせて使用する薬を変更します。

外科的な治療では、血管を形成するバイパス手術を行います。バイパス手術とは、血管や消化管などが狭窄(きょうさく)または塞がってしまっている場合にその管を迂回するように、新たな管を作成する手術です。

しかし、バイパス手術は太い血管と太い血管をつなぐため、バージャー病が進行し、血管があまりにも細くなってしまった患者さんに対しては行えないことがしばしばあります。これは指先の血管が細くなってしまい、肘から上にある太い血管とつなぐことができないからです。

また、バイパス手術以外が適応されない場合には交感神経節切除術を行うことがあります。

交感神経は副交感神経とともに自律神経系を構成する神経です。交感神経には、血管を収縮させる作用があります。そのため、交感神経節を切除することで血管の拡張を期待する手術ですが、効果が見られない場合もあります。

バージャー病は、症状によってどの治療を開始するかが異なります。

薬物療法は、初期の症状である、手足の冷えがあるときから行います。

また、手術を行う場合には足に間欠性跛行(かんけつせいはこう)*1がみられるようになると考えます。手では、安静時疼痛(あんせいじとうつう)*2や虚血性潰瘍がみられると、手術による治療を検討します。

症状や患者さんの状態にあわせて、どの治療法を行うかを考えます。

1間欠性跛行とは、歩いていると足が痛み、歩けなくなってしまう。しかし少し休むとまた歩けるようになることを繰り返す

2安静時疼痛とは、なにもしていないときでも、ズキズキとした痛みやうずくような痛みがあらわれる

バージャー病の治療では、さまざまな治療方法が研究されています。

以下では遺伝子治療や自家骨髄単核球細胞(じかこつずいたんかくきゅう)を用いた再生医療について解説いたします。また、これらの研究は保険が適用されていません。

バージャー病や閉塞性動脈硬化症などの末梢性血管の病気に対して研究されている遺伝子治療です。

この治療では、HGF遺伝子という増殖因子を持つ遺伝子を投与します。増殖遺伝子を投与することで、ふさがった血管を増殖することを期待した治療法です。この臨床研究は2018年現在で研究結果が発表されることを待っている状態です。

京都府立医科大学などの大学病院で先進医療として実施されています。

この治療法は、患者さんの骨髄のなかにある骨髄単核球細胞(こつずいたんかくきゅう)を取り出し、ふさがっている血管付近に注射をして血管の再生を期待する治療法です。一部の患者さんでは、著明な治療効果も報告されています。

田口先生

バージャー病の治療では、まず禁煙が最も重要です。患者さん自身の喫煙だけでなく、受動喫煙もしないように気をつけることが症状の進行を止めるためにも必要不可欠です。

指先の保温や、指先に怪我をしないようにすることも大切です。

バージャー病の初期症状では指先の冷えがあります。寒い場所に行くときや、寒い日は手袋などで指先の保温を心がけるようにしてください。

また、指先に怪我をしないようにすることも大切になります。バージャー病の症状が悪化すると、指先にできた小さな傷もなかなか治らなくなります。さらに悪化すると、小さな傷が潰瘍を形成し、切断をしなくてはならないこともあります。

禁煙を守り、今あるからだの機能を大切にすることが、バージャー病の治療のスタートだと私は考えています。

  • 先端医療振興財団 先端医療センター 再生医療研究部 部長

    日本脳卒中学会 脳卒中専門医日本再生医療学会 再生医療認定医日本内科学会 認定内科医日本医師会 認定産業医

    田口 明彦 先生

    米国コロンビア大学、国立循環器病研究センターを経て、現在は先端医療振興財団 先端医療センター 再生医療研究部の部長を務める。脳卒中後の機能回復治療に関する研究のトップランナーであり、世界に先駆けた研究に取り組んでいる。「脳梗塞による寝たきりの患者さんを減らしたい」という強い想いのもと、日本のみならず世界における脳卒中治療を大きく牽引している。

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