院長インタビュー

患者さんが長く通える病院をつくりたい―透析患者を切れ目なくサポートする小倉第一病院

患者さんが長く通える病院をつくりたい―透析患者を切れ目なくサポートする小倉第一病院
中村 秀敏 先生

医療法人真鶴会 小倉第一病院 理事長 院長

中村 秀敏 先生

この記事の最終更新は2017年10月13日です。

 

医療法人 真鶴会 小倉第一病院は、1972年に北九州市小倉区に開設された透析専門病院です。透析によって職を離れなければならなかった患者さんのため、九州ではじめて完全社会復帰を目指した有床透析クリニックとして誕生しました。

現在は80床の入院病床と110台の同時透析監視装置で、患者さんの透析治療を支えています。そんな同院の取り組みと今後の目標について、院長である中村 秀敏先生にお話を伺いました。

当院が開院した、1972年当時は、透析患者さんといえば20〜30代の若い方が多く、治療も現在の倍近い8時間もの時間が必要でした。そのため、透析患者さんは、仕事を辞めなければ治療を続けることができないという状況でした。

そんな状況をみて、仕事と透析治療を両立できるよう、午後6時〜深夜2時まで治療を行える透析施設を作るという試みで当院は設立されました。

現在は、透析治療だけでなく、急性期医療も受けられる一般病棟と、治療とリハビリなどを行う療養病棟を備え、透析による合併症の対応も行っています。

透析専門病院である当院では、通院透析治療だけでなく、導入前のフォローや合併症などの対応、リハビリ、お看取りまで透析患者さんのあらゆる状況に対応しています。通常、通院通常、透析を行うクリニックでは維持透析、総合病院では導入時や急性期とポイントごとの対応となることが多いです。

その点当院では、慢性腎臓病の発症から一貫してひとつの病院でフォローできるのが強みです。

 

当院には、透析専門医のほかに、常勤の循環器内科医や形成外科医がいます。非常勤ではありますが、糖尿病高血圧の専門医も勤務しています。そのため、様々な合併症の対応が可能となっています。

透析患者さんの死亡原因の4割ほどは、心不全心筋梗塞といった循環器系のトラブルです。循環器内科医がいることによって、透析患者に多い循環器系合併症の状態を把握し、異常があったときに早期の対応ができます。

また、透析患者さんは末梢動脈疾患(PAD)になる確率が高いことで知られています。特に糖尿病が原因で透析を行っている方は、健康な方のよりリスクが高いといわれており、皮膚潰瘍などを起こす方もいらっしゃいます。形成外科医は、そういった方の治療を行っています。当院では形成外科医を中心にフットケアに力を入れ、末梢動脈疾患(PAD)の予防に努めています。

そのほか、消化器内科医や歯科医なども定期的に診察を行っています。そのため、合併症がある患者さんがほかの病院を受診する手間が少なく、当院のみで治療を受けることが可能です。

 

透析治療の成績がよくなってきた一方で、近年では、長期透析による合併症や高齢化の問題が目立っています。そういった状況に対応するため、当院では2002年に療養型病床を新設しました。

療養型病床では、長期療養が必要な患者さんや、リハビリが必要な患者さんが主に入院していらっしゃいます。末梢動脈疾患(PAD)の患者さんで、下肢の血流をよくする治療を他院で受けたあとに、潰瘍の治療を当院で引き続き行うといったこともあります。

こういったリハビリのための入院はほかのクリニックからもニーズがあります。患者さんをご紹介いただき、じっくりと当院でリハビリをしてから、また以前のクリニックに通院していただくということも珍しくありません。

 

当院には、慢性腎臓病療養指導看護師の資格を持った看護師が6名在籍しています。これは全国的にも多く、上位5位に入るほどです。透析専門病院なので、透析関連の資格は取得を目指してもらうようにしています。

また、管理栄養士が5名在籍しているのも、当院の特徴です。総合病院でも、これほど手厚いところは少ないです。昨今、高齢者のサルコペニアフレイルが問題となっており、適切な栄養摂取をすることはとても大切です。この部分で、管理栄養士には非常に活躍してもらっています。

当院の強みは、さまざまな職種が連携して取り組みを行っていることです。

なかでも珍しいのが、リハ栄養です。リハビリをするとき、アミノ酸を摂取すると効率的に筋肉量がアップするというデータがあります。これをもとにリハビリスタッフと栄養科が協力して、効果的なリハビリができるような取り組みをしているのです。

また、これまで170回以上行なっている糖尿病教室も、関わるのは糖尿病療養指導士だけではありません。さまざまな職種が関わりながら、患者さんのサポートをしています。

当院には専属のイラストレーターがいて、オリジナルイラストのストックが3,000点以上あるのが特徴です。広報誌やパンフレットなどは、イラストの力が大きいと思っています。

これはたまたま、イラストレーターから看護師になったという経歴の方を採用したのがきっかけです。採用当初は看護業務とイラストの仕事を両方行ってもらっていました。しかし、イラストの仕事が増えたため、今はイラストレーターとして働いてもらっています。看護師として働いていた経験がいきたイラストを描いてもらっています。
院内でのイラストの仕事は、広報などのほかにもたくさんあります。栄養科からオーダーを受けて食材のイラストを描いたり、医療安全や感染対策のマニュアル作成のために、手を洗う場面をイラストにしたりなどです。線を太く、色をわかりやすくという工夫をして、患者さん目線でわかりやすいイラストになっています。

患者さんやそのご家族が見てわかりやすく、スタッフが説明をしやすいイラストは、非常に役立ちます。今後は、小さなお子さんでもわかるような、説明用のマンガも作成したいと考えています。

 

 

 

 

透析に関わるほとんどの過程は当院で診察できます。しかし当院で対応が難しい部分は他院の協力を得ています。

たとえば、急性心筋梗塞脳血管障害がんなどは当院だけでは治療ができません。また、腹膜透析に必要なカテーテルの挿入も当院では難しいため、これらに関しては近隣の総合病院などをご紹介しています。

また、当院の形成外科医は、ほかの医療機関でも診察を行っています。主に、北九州市内で当院の診療圏外となる病院や、山口県下関市や大分県中津市の病院など、直接当院にお越しになることができない患者さんのPADのフォローが目的です。必要時は入院も受け入れています。当院を拠点として3県6施設にまたがる下肢救済の地域モデルは全国で例を見ない取り組みだと思っています。このように、さまざまな場面で他院と連携して診療を行っています。

「職員満足度なくして、患者満足度なし」をモットーに掲げている当院は、働きやすく、福利厚生が充実していることが特徴です。有給休暇の取得率は100%近く、ワークライフバランスが取りやすいです。

日頃の疲れをリフレッシュできる制度をいくつか設けており、温泉地の宿泊施設を利用したり、研修を兼ねた海外旅行に行ったりもできます。日頃から部署間の交流も多く、職員同士の仲もよいです。

ストレスを抱え、疲労も回復できないという状況では、患者さんに優しくすることはできません。職員にとって働きやすい環境を作ることも、患者さんによい医療を提供するためには大切なことだと考えています。

当院にとって、施設の新設と在宅医療が今後の課題です。週3回、年間156回通院するということは、患者さんにとって大変な負担になります。しかし、退院して通院が難しいとなると、療養病棟が満床になり、急性期の患者さんも受け入れられなくなってしまいます。

そのため、当院で施設も作り、そちらに入所していただければと考えています。3年後くらいをめどに新病院の建設計画があり、施設も併設する予定です。ここに訪問看護ステーションも参入できたら、当院で急性期医療から切れ目なく患者さんをみることができます。
透析患者さんを受け入れてくれる施設は、通院サポートなどが難しいため、あまり多くありません。病院での療養・リハビリと施設入所、在宅支援を上手く連携させて、長く同じ病院で透析ができるようにしたい、というのが今後のビジョンです。

当院は、腎臓病や糖尿病になってもおいしく食事をとれ、元気でいられるようなサポートができる病院を目指しています。今後は新病院も建設の予定もあります。現在よりさらに充実した体制で、一貫した診療ができるように取り組んでまいります。

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