福島厚生連 白河厚生総合病院は、1944年に県農業会白河厚生病院として、福島県白河市に開院しました。1958年に総合病院となり、2008年に新築移転、徐々に規模を大きくしながら現在に至っています。
病床数は471床と、県南二次医療圏では唯一の総合病院であり、日々多くの患者さんを受け入れています。同院の現在行っている取り組みや病院の現状について、院長である前原 和平先生にお話を伺いました。
当院は、全国に約110病院ある厚生連グループのひとつです。
厚生連は、もともと医療過疎である農山村部に良質の医療を提供することを目的に設立された団体であり、地域医療を使命としています。
2008年に新しく病院を建てる際には、陽の光に満ちた、明るい構造を意図しました。
病気であることをふと忘れられるような、広くて明るい病院を目指しました。
新築移転後は、患者さんの数も増えました。2015年には地域包括ケア病棟を開設し、地域のニーズにも応えられるように努めております。
当院は救急告示病院として、救急車による搬送を年間約3,000台受け入れています。この数は、県南二次医療圏全体の60%を占めています。
地域の中核を担う病院として、基本的に救急の受け入れは断らない方針です。夜間は当直医師が少なく、対応が難しいこともありますが、日中はすべて受け入れるようにしています。
当院は分娩数が年間800件ほどと多く、地域の妊婦さんに加え、都心から里帰り出産をされる方もいらっしゃいます。
当院の産婦人科と小児科は昔から医師が比較的充足しており、当院が地域の周産期を担っているといっても過言ではありません。大学もそういった意識をもって医師を派遣してくれているのだと思います。
外科における腹腔鏡手術は年々増えており、当院では近年、年間平均120件以上行っています。さらに積極的に行っていきたいと考えております。
2015年(平成27年)4月、福島県立医科大学寄付講座白河総合診療アカデミーを開設しました。ここでは、病院総合医の育成と、臨床研究を行っています。
関西から4名の指導医を招聘し、後期研修医が加わって、今では12名体制になっています。
後期研修医といっても、ここにいるのは卒後3〜10年ほど経った医師たちです。救急医療専門医も2名います。このアカデミーに所属する医師たちが当院の救急医療を担ってくれたことにより、日中の救急搬送を断ることがなくなりました。
「からだの学校」は、地域住民の方々を対象にしたプロジェクトであり、京都大学と協同して行っています。生活習慣を改善して疾病予防につなげようというものです。
このプロジェクトを始めた背景には、福島県民の寿命の短さがありました。福島県は、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈瘤での死亡率が高く、動脈硬化による死亡率が日本一といえます。
この基盤には、喫煙率や食塩摂取量、肥満率が高いという悪しき生活習慣があり、これを改善する必要があります。
具体的な取り組みとしては、参加者に手帳かアプリで日々の生活習慣を記録してもらい、病院や保健福祉センター、地域のマーケットなどにおいてある端末に記録したデータを読み込ませると、アドバイスがメッセージとして出てくるというシステムです。
また、端末にデータを読み込ませるごとにポイントがたまり、一定数たまると景品と交換できます。
このプロジェクトを2年行ってみて感じたことは、本当に参加してほしい方、つまり生活習慣が芳しくない方には、なかなか参加してもらえないということです。
積極的に参加してくれるのは、もともと健康意識が高い方であり、プロジェクトで改善できる伸びしろは、小さくなってしまいます。この壁を突破するのは、非常に難しいことに気づきました。
開始当初は、一般住民を対象に行っていましたが、現在は当院で治療した患者さんにも参加してもらうようにしました。もちろん希望者のみですが、全員に勧めるようにしております。
また、最近は、町内会へ出向いて出前講座を行っており、心筋梗塞での死亡率が高いといった事実を伝えると非常に驚かれます。
なんとか生活習慣を改善し、動脈硬化性疾患を予防する必要性を伝えなければと感じています。
当院は地域の災害医療拠点病院、感染症指定病院として、一般的な医療を提供するだけでなく、緊急事態にも対応してまいりました。
2009年(平成21年)4月に新型インフルエンザのパンデミックが起きました。5月1日に発熱外来を設置し、6月に福島県内で第1号の症例を報告しました。国の推計では、この地域では最大64名の入院患者が発生するとのことでした。そのため、当院は90床、ワンフロアを準備しましたが、この準備病床数は全国9位でした。その後、2010年3月まで1,231例の症例を診療し、東北一と自負しております。
2011年には東日本大震災が起こりました。当院では、震災が起こる以前から地震を想定した災害訓練を毎年行っていました。それは、大地震が起こったが当院の診療機能は保たれているという設定で、押し寄せる患者さんにどう対応するかという訓練です。その想定訓練が、実際の震災時の状況にまったく重なったため、各部署からスムーズに報告があがって来ました。
この地域の震度は6強でしたが、病棟は免震構造であったため、無傷でした。
人的損害もなく、エレベーターも1時間後には自然に復旧したため、発災したその日から通常診療を続行するという判断を下しました。
市内の水道管破裂により水圧が下がってしまい、綺麗な水が手に入らず、透析が行えなくなるかもしれないという問題も生じましたが、それでもなんとか継続することができました。被災3県の災害拠点病院としてもっとも優れていると報道されました。
罹災後は避難所の巡回や一時帰宅した方の医療を担うチームの派遣も行い、その実績は県内一です。
こういった活動は、職員全員が同じ気持ちをもち、一丸となってくれていたからこそできたことであり深く感謝しております。
当院で行った職員アンケートの結果をみると、職員のみなさんは、地域の中核病院で働いているということに誇りをもっていることがわかりました。
この医療圏の中心に自分たちがいる、そのことがモチベーションにつながっています。
「白河厚生総合病院がないと地域の医療が成り立たない、私たちがこの地域を支える」という高い意識を職員はしっかりもっており、大変頼もしく思っております。
白河厚生総合病院 前院長、福島県立医科大学白河総合診療アカデミー センター長
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