院長インタビュー

誰もが気軽に受診できる病院を目指して-関西電力病院の取り組み

誰もが気軽に受診できる病院を目指して-関西電力病院の取り組み
千葉 勉 先生

関西電力病院 院長、京都大学 大学院総合生存学館思修館特定教授 

千葉 勉 先生

この記事の最終更新は2017年12月20日です。

関西電力病院は、1953年、関西電力健康保険組合直営病院として開設されました。当時は100床の規模でしたが、診療科を徐々に増やすとともに増床し、現在は400床で運営しています。

1967年には一般病院となり、社員以外の住民にも門戸を広げて診療を行うようになりました。20125年前には建て替えも行っています。

「患者さま満足度No.1」を目標に掲げる関西電力病院では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。院長である千葉 勉先生にお話を伺いました。

もとは関西電力社員が受診する健康保険組合病院だった関西電力病院が礎になっています。社員以外も受診できる一般病院となってからは、「患者さま満足度No.1」を掲げて、患者さん中心の医療を目指しています。

当院は400床、28診療科という中規模病院でありながら、医師数は約150名、看護師は400名以上(*2017年11月時点)、それ以外のコメディカル部門も手厚い人員を配置しているのが特徴です。

当院の柱のひとつが、糖尿病をはじめとした生活習慣病の治療です。もともと、前院長であった清野医師(現総長)が日本糖尿病協会や日本病態栄養学会の理事長をしており、その流れが今も続いています。

生活習慣病の治療の中心となっているのが生活習慣病センターです。ここでは腎臓内科や循環器内科、脳外科などと協力しながら、生活習慣病が原因となっておこる動脈硬化性疾患の予防・再発防止を目指しています。

患者さんに関わるのは、医師だけではありません。栄養士による栄養指導や、理学療法士・健康運動療法士による運動指導などもあわせて行い、患者さんの生活をサポートしています。

当院は、地域のがん診療拠点病院に指定されています。がん診療は、生活習慣病と並ぶ当院の柱のひとつです。患者数の多いがんに対しては、レベルの高い医療を提供していきたいと考えています。

がんによる死亡数は肺がん胃がん大腸がん、肝臓がん、すい臓がんと続くとされています。消化器は、がんとは切っても切り離せないものなのです。そのため、消化器ががん診療でもっとも重要な部分だと考えています。

以前は産科も備えていたのですが、現在はそれを閉鎖し、婦人科に集約しています。婦人科ではがん診療に特化するようになりました。また、血液内科は、無菌室を5床備えています。

がん診療を行う上では、集学的医療を大事にしています。がんの治療は、手術をして終わりではなく、手術後も化学療法や放射線治療、そして緩和ケアと長きにわたります。

以前は緩和といえば、治療法がなくなった終末期の方に行う医療という意味合いが強かったのですが、今はそのようなことはありません。

積極的な治療を続けながら行う緩和ケアも重要視されつつあります。精神的なケアや痛みのケアなど、緩和ケアが対象とするものは、必ずしも終末医療ではないのです。

医療が進歩したことにより、がん患者さんは以前よりも長生きできるようになりました。そこで考えなければいけないのが、QOL(生活の質)を高めるためにはどうすればよいのかということです。チーム医療こそがその答えだと思っています。医師だけではなく、あらゆる職種の人が集まってケアに当たること、そしてこの部分を充実させることが大事だと思います。

当院では、心臓血管外科での診療を2年ほど前から始めました。日本人の死因はがんが多いのですが、それに次ぐのが心疾患です。冠動脈の狭窄や閉塞に対する治療はかなり進んできましたが、近年になって問題となりつつあるのが高齢者の弁膜症です。

弁膜症といえば、以前は小児のリウマチ熱によるものが多かったのですが、今は加齢によって弁膜不全を起こす方が増えてきました。当院ではこの弁膜症にも注力しています。

当院の整形外科と形成外科は、手の外科領域に特徴があります。

2006年に、当院では「手の外科センター」を立ち上げました。顕微鏡下で行うマイクロサージェリー技術を使った再建術をはじめ、慢性関節リウマチによって変形した関節の再建術や人工関節の手術など、手術件数は年間300件以上にのぼります。

私たちは、自分たちの家族に受診したいと思ってもらえるような病院を目指しています。

今の社会は、地域連携が重要です。当院も、周辺の開業医の先生や介護施設、訪問看護の事業所の方々ともチームとなり、コミュニケーションをとって、総合的にケアができるようにしていかなくてはなりません。

地域に根ざした医療を行うということが、我々の目標のひとつです。高齢化が進んでいる一方で、新しく地域に入って来る方もいらっしゃいます。そういったいろいろな層に対応していくことが、これからの当院の課題でしょう。

地域に住んでいる方々が、どなたでも気軽に来院できる病院であるよう、職員一同努力していきたいと思っています。

当院には、関西電力医学研究所が併設されています。病院に研究所が併設されているところは多くありません。

研究所で行っているのは、臨床研究が主です。現在行われているのは、糖尿病を中心とした生活習慣病の研究や、食事内容と糖尿病の関連をみる研究、がんの治療効果に関するもの、遺伝子解析などです。また、緩和ケアにおける医療の質の向上に関する研究も行っています。

私自身としては、教育体制をしっかり整えていきたいと思っています。病院長として安定した経営を行うことももちろん大事ですが、人を育てることも非常に重要です。

現在当院で働いてくれている人たちが次の場所でも活躍できるよう、ここでの教育を柱のひとつにしていきたいと考えています。

また、教育が大事であるということを伝え続けることも必要だと思っています。当院では、看護科や検査科、リハビリテーション科、薬剤科などいろいろな部署の職員を集めて勉強会を開いていますが、互いに教え合うことで得られるものも大きいはずです。
医療だけでなく日本全体が今後どのように変化していくかは、ひとえに教育にかかっているところが大きいのではないでしょうか。