院長インタビュー

神戸大学との連携で診療強化をはかる甲南病院

神戸大学との連携で診療強化をはかる甲南病院
具 英成 先生

一般財団法人甲南会 法人本部長  一般財団法人甲南会 甲南病院 院長

具 英成 先生

この記事の最終更新は2017年12月26日です。

兵庫県神戸市の高台にて長きにわたり地域医療を支える一般財団法人甲南会 甲南病院は、神戸大学との連携強化を機に新病院へのリニューアルを推進しています。2017年に院長として就任された具 英成院長に、病院の再編、統合の目的やこれからの病院運営についてお話を伺いました。

当院は1934年(昭和9年)に、実業家であり川崎造船所の再建などで知られる平生釟三郎氏によって設立されました。平生氏の言葉、「営利本位に陥らず富める患者も貧しい患者も名医の治療や手術が受けられる病人本位の病院」を理念とした当院は、先輩方が高い志で育ててきた病院です。

当初118床だった病床数は、1987年(昭和62年)に400床となり、1992年(平成4年)には六甲アイランド甲南病院を開設しました。2000年(平成12年)には国立加古川病院の移譲を受けて加古川病院を開設し、現在、一般財団法人甲南会としては3つの病院を運営しています。六甲アイランド甲南病院では、介護老人保健施設、訪問看護ステーションも運営しています。

2017年は、さらに医療の質を高め病院の活力を上げるため、甲南病院と六甲アイランド甲南病院を一体的に運営する統合・再編へ舵を切りました。

過去3、4年に渡り神戸大学との連携強化と病床再編について議論を重ね、2017年1月からはソフト面とハード面での再構築を進めております。

リニューアルに際して建物も新たにすべく、5年の工期をかけて全面的な増改築を行い、2021年に完工、2022年にグランドオープンする予定です。

当院は、落ち着きと伝統のある空気感が特徴といえます。この独特の重厚感に信頼を寄せる方々も多く、何よりも創設時から患者さん第一で運営されてきた病院であることが、永くご支持をいただいている所以ではないかと思います。

こうした当院の伝統を引き継ぎながら、新病院は最新、最善の医療をみなさまにお届けすることをめざしたいと思っています。

新病院の完成イメージ

今回の統合は、甲南病院と神戸大学との連携強化による医療人材の充足が大前提となっています。リニューアル後の甲南病院は、神戸大学の東の拠点となり阪神間を代表する基幹病院になります。

最新の医学水準で温かい心を備えた神戸大学との連携のもと増床に合わせて医療スタッフを増員、総合病院として専門性のある高度医療を行う体制を構築していきます。

教育面においても、六甲アイランド甲南病院と甲南病院の2病院で連携を図り、それぞれの特長を活かした研修が受けられるようにする予定です。

2病院を機能分化した上で統合的運営をする理由としては、現状を分析して見えてきた、さまざまな医療課題を解決していくためです。

今回の統合では、新しい甲南病院は480床の急性期病院に、また六甲アイランド甲南病院は181床の回復期やリハビリを中心とした病院として生まれ変わります。お互いに機能を補充したうえで連携し、東灘地域の患者さんにとっては高度で専門性のある医療が身近で受けられるようになります。

特に脳神経外科や泌尿器科など、これまで手薄であった診療科も充実させ、さらには救急、母子周産期医療、感覚器運動疾患への対応を進め、みなさまの頼りになる病院を目指します。

神戸大学との連携により500床以上の規模を持つ高機能な病院へ再構築することで、患者さんにとっても働く医療人にとってもよりよい環境と働きやすい職場を提供できると考えています。

診療内容においてもっとも注力したいと考えているのは、がん医療です。

外科において対応する疾患、胃がん大腸がん乳がんなどのほか、肝がん転移性肝がん、肝門部胆管がん、胆嚢(たんのう)がん、胆管がん、膵がんなど消化器がんはすべて網羅した安心、安全の医療の提供を目標に努めています。私が大学時代に携わった臓器移植(肝臓移植、膵臓移植)については神戸大学に紹介いたします。

また内科においても、消化器内科、循環器内科などにおいて高いレベルの医療を提供できるよう力を入れています。最新医療だけでなく、標準化された診療を保険診療の範囲で貫徹する医療を提供していくつもりです。

また消化器内科については、当院では超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的逆行性胆膵管造影法(ERCP)などの機器を活かした胆膵がん診療体制を強化しています。

消化器内視鏡診療においては診断から最新の治療まで幅広く行う体制が構築されており、経口内視鏡的筋層切開術(POEM)など高度医療も導入、強化されています。

当院が提供するのは「心技一体」の医療です。医者としての温かい心といつも最善を尽くすという信念をもち、すべての患者さんの診療に全力で対応すること。これは口で言うほど簡単ではないのですが、患者さんの目線で全人的医療を目指します。

技量はもちろん重要ですが、一人ができることには限界があります。

チーム医療はその答えであり、リニューアルにより新しい、若い仲間が加わることでこの病院も新たな時代に向かいます。

医療マネジメントでは常に医療の質と安全がベースになります。医療安全を確保し、改善し続けるためには地道に、そして方法論をともなう改善が重要です。この哲学を職員全員が共有することが大切だと考えます。

今の時代はどの病院も、医療安全のマニュアルや仕組みを持っていると思いますが、それに慢心せず、日々改善をしていくべきだと考えています。

先ほども申し上げたとおり、当院は「心技一体」の医療の貫徹を目指しておりました。

これからも優れた医療人を集め、チームワークで強い組織を育て、総合力で地域医療に貢献してまいります。

今回のリニューアルを機に、時代のニーズに合った質の高い医療と、経営基盤の両輪で持続化可能な病院経営を実現したいと考えます。無駄を省き、大事なことには医療資源を惜しみなく投入する、そういった病院でありたいと考えます。

また昨今は、少子高齢化の影響などもあり病院医療から在宅医療への転換が求められています。今後はどのような地域連携の形が最適であるか、当院から新しい仕組みを発信していきたいと考えています。

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