神奈川県相模原市にある相模原協同病院は、地域に根ざした医療を提供する中核病院です。相模原市中央区・緑区、及び津久井郡を医療圏とし、周辺地域に高度な先進医療を提供してきました。また、こちらの病院では、看護師専門外来の開設など先進的な試みも積極的に実践しています。今回は、相模原協同病院 病院長 高野 靖悟先生にお話を伺いました。
相模原協同病院が地域の農業会(現JA)による出資によって設立されたのは1945年のことです。戦時中の貧しい無医村に高度な医療を提供したいという想いのもと、太平洋戦争末期に設立されました。
その想いは今も受け継がれており、相模原協同病院は設立以来、地域に根ざした医療の提供を目標としてきました。市立の医療機関を持たない相模原市において、地域に不足する医療を提供することで市立病院のような役割を果たしてきたのです。現在も、地域医療支援病院及びがん診療連携拠点病院として地域医療を支え続けています。
当院は創設以来、可能な限り新しい設備と医療技術を導入し、地域に役立つ医療の提供を目指してきました。これが当院の強みだと思っていますし、この強みをいかしながら、これからも地域に根ざした医療提供を実現していきたいです。
当院は、医師会メディカルセンターや診療所、その他の医療機関などと密に連絡をとりながら、質の高い救急医療の提供を目指してきました。主に、早急な検査・手術・緊急入院などを必要とする二次救急患者を受け入れる役割を担っています。循環器内科では24時間365日の救急体制を組み、心停止や急性心不全を起こされた緊急を要する患者さんを受け入れてきました。また、心臓血管外科も救急患者さんを受け入れる体制を常時整え、スムーズな救急搬送の対応を行なっています。
腎機能の低下した患者さんに対する人工透析や血液浄化を行う当院の腎臓内科は、特に急性期の血液浄化において県内トップクラスの実績を誇ってきました。血液浄化は、たとえば大腸がんの摘出手術によって血液中に大腸菌が流れでてしまった場合などに必要とされるもので、これに限らずあらゆる診療科の手術において不可欠な処置です。5名の専門スタッフがいる当院では(2018年1月現在)、深夜も血液浄化の処置を行うことができる体制を整え患者さんのケアにあたっています。
当院では、高精度放射線治療センターを開設し、がん患者さんへ放射線治療を提供してきました。
放射線治療は、いかにして腫瘍にピンポイントで放射線をあてることができるかが重要であり、より高いレベルを目指して日々の診療に当たっています。
患者さんを中心とした、チーム医療も当院の強みといえます。私自身は消化器外科を専門としており、当院へ着任する以前は日本大学で肝臓移植の研究を行っていました。肝臓移植には、医師・看護師・麻酔科などが一丸となって取り組むチーム医療が不可欠です。このときの経験をいかし、当院ではチーム医療の重要性を強調し病院全体でチーム医療体制の構築に努めてきました。
現在、約500名の看護師が在籍しており、がんや糖尿病、ICUといった各分野の専門・認定看護師も15名ほどいます。それぞれの分野において活躍してくれるだけでなく、他の看護師たちの教育的役割も担ってくれています。
当院にはさまざまな看護師専門外来があります。たとえば、がん患者専門外来は、がんに苦しむ患者さんが抱える不安に対する相談窓口としても機能しています。がん治療経験者がピアサポーターと呼ばれる相談員となり、がん看護専門看護師とともに外来にて相談を受けつけています。これは、がん診療連携拠点病院である当院にとって、大変重要な取組みであると考えています。
全国の医療機関は、地域包括ケアシステムを構築し地域の医療機関の連携を強化して、地域完結型の医療提供を実践していくことが求められています。
地域包括ケアシステムが構築されれば、ある医療機関は高度先進医療を提供する病院としての役割を担い、また、ある医療機関は回復期に入った患者さんを受け入れる役割を担うといったように、地域の医療機関が役割分担をおこない、その役割のなかで連携をはかっていくことになるのです。
こうすることによって、医療機関の機能集約が進みます。先進医療を提供する医療機関は、より高度な医療設備を導入することができるようになり、回復期病院は回復期医療に特化することで質の高い医療ケアが提供できるようになります。患者さんは、ご自身が暮らす地域の医療機関でさまざまな先進医療や手厚い医療ケアを受けることができるようになるわけです。
地域医療支援病院の指定を受ける当院は、このような地域包括ケアシステムのなかで高度急性期・急性期医療を提供する役割を担うべき存在です。地域の医療機関と高度な連携をはかり、回復期に入った患者さんを他の医療機関にしっかり紹介していくことで、より多くの方々に急性期医療を提供していきたいです。
当院には、臨床工学技士や臨床検査技士、リハビリ技士をはじめとした医療技術部職員が多く在籍しています。臨床検査技士は救急医療の現場で迅速な検査を行い、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ技士は患者さんの早期回復を実現する効果的なリハビリテーションを実施することで、当院の提供する医療ケアの質を高めてくれているのです。彼らはみんな、高いモチベーションで業務にあたり、自身の専門分野で活躍してくれています。
また、症例検討会や学会への積極的な参加もすすめています。症例検討会は、症例を共有し地域医療の質を高める場であると同時に、地域へ自らの仕事を紹介する場でもあります。こうした機会は、一人ひとりのモチベーションを高めることにもつながっていると考えています。
そのほかにも、海外での研究発表に取り組む他、地域の少年野球チームに出張し、肩を壊さない運動の仕方といった内容の講習を行ったりするなど、知識を活かして地域に貢献する活動も行っています。
当院は、地域に根ざした医療機関として、地域のための医療提供を心がけてきました。地域の方々とのつながりを大切にしたいと考えており、年に6回ほど市民健康教育公開講座を開催しています。こうした取り組みを通して、地域の方々に身近な存在として感じてもらえればうれしいです。
市民健康教育公開講座では、医療や健康に対する意識を高めていただけるよう、みなさまに当院スタッフがさまざまなお話をさせていただいております。特に、当院はがん診療連携拠点病院としての指定を受けておりますので、一年に一度は必ずがんについてのお話をしています。ありがたいことに、毎回300名程の方々にご参加いただいています。ご興味のある方は、ぜひ講演会にいらしてください。
当院では、院内一丸となって患者さんをサポートする体制をとっています。当院の強みであるチーム医療の真ん中には常に患者さんがいるのです。これからも、チーム医療で地域の方々へよりよい医療を提供するとともに、当院の治療を受けてよかったと感じていただけるような病院づくりをしていきたいです。
JA 神奈川県厚生連 代表理事理事長、相模原協同病院 名誉院長
高野 靖悟 先生の所属医療機関
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。