院長インタビュー

「地域に役立つ病院でありたい」公立能登総合病院の信念と取り組み

「地域に役立つ病院でありたい」公立能登総合病院の信念と取り組み
吉村 光弘 先生

公立能登総合病院 事業管理者

吉村 光弘 先生

目次
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公立能登総合病院は、石川県能登半島の中央部にある七尾市に位置する医療機関です。

救命救急センターをもつ3次救急病院であると共に、地域完結型医療を目標とした「在宅診療」や「精神科デイケア」の充実など、地域の皆さんに幅広い診療を行っています。人口の減少と高齢化の進む能登半島全体に目を向け、医師不足・看護師不足が顕著な能登北部の医療状況の改善にも協力していく体制を整えています。そんな同院の事業管理者であり、内科の医師でもある吉村 光弘先生と、看護部長の上野谷 優子氏にお話を伺いました。

病院外観

当院は、1943年9月に七尾市と中能登町の住民が中心となって開設され、その後幾度かの改称・統合を経て、1965年に現在の病院名である「公立能登総合病院」となりました。1997年には地域災害拠点病院、2000年には居宅介護支援事業所、救命救急センターとして指定され、地域に密着した病院として多くの患者さんの健康に寄り添って参りました。

2018年11月現在では、19の診療科と434の病床(一般病床330床(うち開放病床32床))を持つ総合病院として、地域の患者さんを支えています。

当院は2017年に、低侵襲手術支援ロボットダヴィンチを導入しました。ダヴィンチは、鮮明で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像のもと、医師が手元のレバーを動かして手術ができる手術支援ロボットです。ダヴィンチを使用することで、腹部の切開部分が小さくなるため、術後の回復が早く、患者さんにかかる負担も少なくなります。同様の理由から、鎮痛剤が少なくでき、輸血による合併症リスクの低減も期待できます。また、ダヴィンチのロボットアームは人間の手より可動域が広く、手ぶれ補正もされています。

当院では、2017年12月から前立腺がんの全摘手術でダヴィンチを使用しています。2017年12月から2018年11月までの12か月で、40件実施しました。今後はさらに腎臓がんなど幅広い手術で活用していく予定です。

能登全域の住民によりよい医療を提供したいという思いで、当院では毎年新たな取り組みにも力を入れています。2013年にあった日本医療機能評価機構による病院機能評価の更新認定審査では無事認定をいただき、同年12月にはデイケア・作業療法棟の新築もいたしました。翌年2014年の4月からは新しい強度変調放射線治療装置を稼働させています。がん組織により正確に照射することで、周囲の健康な細胞を可能な限り傷つけずに「切らないがん治療」が可能です。手術をすると大きな負担がかかってしまう高齢者や、顔面や首の機能を温存できる頭頸部のがんに効果があることを期待しています。

手術室に直結する救急救命センター 

当院は、2000年に救命救急センターに指定されました。20の病床を有し、救急搬送されてくる患者さんを24時間365日対応しています(2018年11月時点)。

2か月に一度は、救急搬送された事例を皆で検討する救急事例検討会を開いています。また、地域救急の充実のため、全能登地区の医療機関・消防本部が一体となるようなネットワークの強化を目指しています。

当院では、能登地区の自治体病院精神医療の拠点として、精神センターを開設しています。100床の病床を持ち、精神科の医師などが不足している能登北部の支援のために、医師や臨床心理士などの派遣をも行っています(2018年11月時点)。また、精神科領域全般にわたって、広い範囲で治療を行い、精神科デイケア・精神科作業療法・カウンセリング・医療福祉相談・精神科訪問看護などにも取り組んでいます。患者さんの社会復帰を手助けできるように努めています。

早朝のノーサイドミーティングで職員からアイディアを募集

当院では、職員の新しい発想を積極的に取り入れるため、月に一度、朝の10分間に「ノーサイドミーティング」を開催しています。よりよい病院を作るためには、働くスタッフの声を取り入れることが、何よりも大切だと私たちは考えているからです。皆さんの声を尊重し、提案があったアイディアに関しては、可能な限りで実現化することを目指しています。

日頃の多忙な業務のなかで充実したコミュニケーションが取れなくても、病院の現状や取り組みを共有し、これからを考えていくうえで、このようなミーティングの場は非常に大切です。

職員の要望やアイディアを記録したノート
職員の要望やアイディアを記録したノート

よいと感じたアイディアや要望は、個人的なノートにメモしており、その数は10冊を超えました。患者さんのためになる提案であれば、少し無理をしてでも実現したい。そんなことを考えながら、毎月どんなアイディアを聞くことができるのか楽しみにしています。

本日は、過去のミーティングでスタッフから提案があり実現した当院の取り組みの一部をご紹介します。

看護師特定行為研修(創傷管理)の様子

2017年4月に護師特別行為研修を実施する学校を院内に設立しました。2018年3月には4名が研修を終了し、さらに現在は能登地域の2つの病院のスタッフが研修中です(2018年11月時点)。

出前保健室で地域の皆さんの健康意識の向上に貢献

当院では、勤務している看護師が地域に出向き、地域住民の健康増進と福祉向上を目的とした「出前保健室」の活動を行っています。出前保健室では、主に健康相談・血圧測定などの健康チェック・健康体操など・各種テーマ活動を実施し、予防医療への貢献を目標としています。過去に開催したテーマは、「認知症予防」「動脈硬化高血圧を予防する食事法」「自宅でできる運動」「自宅での介護方法」など多岐にわたります。地域のニーズに合わせて、来院いただく前に出向いて行う医療活動を、今後も行っていきます。

認知症デイケアサロンを開催し、認知症患者さんの豊かな生活をサポート

当院では認知症の患者さんに対して、さまざまなアプローチを行っています。なかでも、認知症に特化した、認知症ケアサポートチーム(Dementia Support Team・通称DMT)は、認知症患者さん一人ひとりにより適切なケアを行うことができるよう、工夫を凝らしたアクティビティや細かな年間計画をたてています。

2018年5月9日に開催した「看護の日」イベントの様子

寝たきりの患者さんや、入浴することが難しい患者さんを中心に、よい香りのするアロマやソープを使用した、ハンドケアやフットケアを実施しています。患者さんご本人がお好きなボディソープやアロマオイルを取り入れ、体を清潔にするだけではなく、心地よく過ごせるお手伝いをしています。これらの取り組みは「出前保健室」でも行われ、看護師によって地域の皆さんに提供しております。

当院では、子育て中の母親を支援していきたいという思いから、2018年4月より、出産後の母親たちが集うサロン「ベビママ+(ベビママプラス)」を開設しました。

近年、子育てで孤立してしまい、育児不安を抱える母親が増えています。このサロンでは、地域で子育て中の母親同士が交流するだけでなく、子育てに対する不安や悩みを妊娠中から継続的に関わりのある助産師に相談することも可能です。

2018年7月4日のアメリカの独立記念日の当日の病院食に、星条旗のついたオムライスが患者さんに出されました。毎日、約900食を作る栄養部のメニューとしては、かなり手のかかる料理です。

オムライスは小児と若い患者さん限定のメニューです。国旗を立てたのはオムライスにかけたケチャップが、かぶせたラップにくっつかないようにするためでもありますが、入院中の子供たちが、大好きなオムライスとアメリカ国旗をきっかけに、患者さん同士やスタッフとの会話がはずめば、少しの癒しにもなるかも、と考えた栄養部の工夫です。

患者さんの誕生日にはミニケーキ、七尾青柏祭には紅と緑の長まし饅頭、1月7日には七草がゆと、年18回ほど行事食を提供してがんばっています。

星条旗の乗ったオムライス

当院は、地域の医療機関と連携しながら、救命救急センターを核として、「救急を断らない」ことをモットーとしています。また、日本内科学会の内科認定教育病院として、若い人材をしっかり育てあげる病院になれるよう努めています。

能登半島における高齢化は急速かつ顕著であり、求められる医療ニーズはどんどん変化していくでしょう。当院は開院当初から地域に根付いた病院であるという自負を持ち、今後とも地域の皆さんの健康を守る医療機関として、努力を続けていきたいと思っています。

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