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難易度の高い「人工血管置換術」に対する川崎大動脈センターの取り組み
大動脈瘤に対する人工血管置換術は、数ある心臓血管外科領域の手術の中でも、非常に難易度の高い手術です。川崎幸病院川崎大動脈センターでは、年間650件以上(2018年1月~2018年12月実績)の人...
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難易度の高い「人工血管置換術」に対する川崎大動脈センターの取り組み

公開日 2019 年 02 月 01 日 | 更新日 2019 年 02 月 01 日

難易度の高い「人工血管置換術」に対する川崎大動脈センターの取り組み
大島 晋 先生

川崎幸病院 川崎大動脈センター・大動脈外科部長 兼 大動脈センター・センター長

大島 晋 先生

目次

大動脈瘤に対する人工血管置換術は、数ある心臓血管外科領域の手術の中でも、非常に難易度の高い手術です。川崎幸病院川崎大動脈センターでは、年間650件以上(2018年1月~2018年12月実績)の人工血管置換術を行っており、他院で手術が難しいといわれた患者さんも積極的に受け入れています。

今回は、川崎幸病院 川崎大動脈センター・大動脈外科部長兼大動脈センターセンター長である大島晋(おおしますすむ)先生に、難易度の高い人工血管置換術を標準的に行うための取り組みについてお話を伺いました。

人工血管置換術の方法や合併症ついては、記事2『大動脈瘤に対する人工血管置換術とは?手術の流れや起こりうる合併症について』をご覧ください。

難易度の高い手術ほど「標準化」が求められる

大動脈は、心臓から出た血液が全身へと流れていく通り道であり、非常に血流量の多い血管です。そのため、大動脈瘤に対する人工血管置換術を行う際に、大動脈を少しでも傷つけてしまうと、大出血が起こり、患者さんの命を落としてしまう危険性があります。

川崎大動脈センターでは、このようなリスクに対して、手術にかかわるスタッフ全員が適切な対処を行うために、手術の標準化に努めています。

たとえば、胸腹部大動脈瘤は、動脈瘤の位置によって分けた「クロフォード分類」というものがあります。当センターでは、それぞれのクロフォード分類に応じて、手術をマニュアル化しています。

手術前の準備、人工心肺のセッティング、手術の手順など、スタッフ全員が毎回決められた方法で行うことを徹底し、独自の方法は決して入れないようにしています。

難易度の高い手術ほど手術を標準化しておかないと、不測の事態が起きたとき、「誰が何をすればいいのか」と慌ててしまうことになります。そして、その間に患者さんの命を奪いかねません。

毎回決まりきった方法で手術を進めることで、手順や方法について考える時間を減らすことができ、その分「いつもと違うことが起きていないか」と注意力をはたらかせる時間にあてることができます。不測の事態に対して、迅速かつ適切な処置を行うためには、手術の標準化が非常に重要なのです。

人工血管置換術の標準化を実現するために

大動脈の外科手術におけるスタッフ教育

人工血管置換術の標準化は医師の力だけでは実現せず、手術に携わるスタッフ全員の協力が必要不可欠です。

当センターには、大動脈の外科手術(人工血管置換術や大動脈基部再建術など)における専属看護師と専属臨床工学技士が在籍しています。

手術方法などを共有する術前カンファレンスでは、手術に携わる専属スタッフ全員で、手術におけるピットフォール(落とし穴)を共有して手術に臨みます。

術中は、先ほどお話ししたように、マニュアル化された手順に則って、それぞれのスタッフが決められた方法で手術を行います。特に器械出し看護師(医師へメスや鉗子を手渡す看護師)は、マニュアルを徹底して覚え込み、看護師によって器械の渡し方やタイミングが異ならないようにしています。器械出しがスムーズにされることによって、手術もスムーズに進めることができます。

人工血管置換術のような難易度の高い手術の場合、医師の技量がどれだけ高くても、手術を成功させることはできません。たとえば、自動車レースのF1でも、ドライバーがプロなだけでなく、ガソリンを入れる人、タイヤのネジを締める人、全員がプロのF1のスタッフです。

手術も同様で、スタッフ全員が同じ手順、同じ方法で手術を繰り返すことで、安全性が高まるだけでなく、手術の効率や精度も向上していきます。

鉗子…組織をつかんだり引っ張ったりするための器具

人工血管置換術の実績を積み重ねる

人工血管置換術の標準化が実現できている大きな理由は、当センターにおける人工血管置換術の症例数にあります。

当センターでは、年間800件以上(大動脈基部再建術、胸部大動脈人工血管置換術、胸腹部大動脈人工血管置換術、腹部大動脈人工血管置換術、腹部大動脈ステントグラフト内挿術、胸部ステントグラフト内挿術含む)を実施しています。(2018年1月〜2018年12月実績)。

このように、症例数が多くあるために、人工血管置換術を種類ごとに細かくマニュアル化することが可能です。たとえば、先ほどお話しした胸腹部大動脈人工血管置換術のクロフォード分類ごとのマニュアル化に関しても、胸腹部大動脈人工血管置換術の手術件数が多いために実現できています。

方法を変えるのではなく、同じ方法を続けることで手術を洗練させていく

当センターでは、同じ方法による手術を続けていくことで、人工血管置換術の手術成績の向上に努めています。

たとえば、弓部大動脈人工血管置換術の場合、体温を20度まで冷却して循環停止状態で手術を行います。それが近年、冷却温度を25度にすることで、体温をもとに戻す時間を削減できたり、出血リスクが軽減できたりするのではないかといわれはじめています。

しかし、冷却温度を25度に変えたことによって何らかの合併症が起きてしまえば、患者さんの命を危険にさらすことになります。

当センターでは、現時点で問題が生じていない限り、新しい方法を取り入れることは基本的にはありません。安全性の高い手術を行うために、一つの方法を洗練させていくようにしています。

高齢者や併存疾患を抱えた方など「ハイリスク症例」の受け入れ

一般的に、80歳以上の高齢者や認知症の方、併存疾患(糖尿病や高血圧症など)を抱えた患者さんは、合併症が起きるリスクが高かったり、術後管理が難しかったりする点から、手術における「ハイリスク症例」と呼ばれます。

当センターには、他院で人工血管置換術を行うことができない、もしくは非常に困難といわれたハイリスク症例の患者さんが相談に来られるケースが多々あります。

しかし、実際に私たちがそのような患者さんとお話をしてみると、十分に手術に耐えることができると考えられる方は多くいらっしゃいます。

たとえば、85歳でも元気に活動されていて全身の身体機能にも問題がない方や、認知症であっても、会話も成立していて、リハビリテーションもしっかりできそうな方もいらっしゃいます。

当センターでは、一般的にいわれているハイリスク症例かどうかで手術の適応を決めることはありません。患者さんと実際にお会いして身体機能をしっかりと把握するようことで、人工血管置換術を必要としているできるだけ多くの方に、手術を提供できるようにしています。

充実したリハビリテーションの体制

リハビリ

ハイリスク症例といわれる患者さんに対しても人工血管置換術を行うためには、先ほどからお話ししている手術の標準化は非常に大切です。そのほか、欠かせないこととして、術後のリハビリテーション(以下リハビリ)が挙げられます。

術後早期からしっかりとしたリハビリを行わないと、特にハイリスク症例の患者さんの場合には、呼吸機能は見る見るうちに低下していきますし、下半身の筋力もどんどん低下してしまいます。

そのため、当センターでは基本的に手術翌日には人工呼吸器を離脱し、早急なリハビリを行うようにしています。また、専属の理学療法士や言語聴覚士などのリハビリスタッフが10名在籍(2019年1月時点)しており、土日祝日もリハビリを実施しています。

患者さんによっては、年齢も若く、もともとの全身状態も良好であるために、スタッフの介助がなくても、自立してリハビリができる方もいらっしゃいます。そのため、すべての患者さんにまんべんなくリハビリスタッフをあてるのではなく、ハイリスク症例のような方には集中的にスタッフをあてるようにしています。

リハビリの必要性は、患者さんによって異なります。リハビリの必要性がより高い患者さんには、必要な分だけリハビリができるような体制を整えています。

人工血管置換術における術後管理の重要性

大島先生

人工血管置換術は、術後に非常に細かい全身管理を行う必要があります。

たとえば、血液循環が保たれているかどうかを確かめるためには、尿量を1時間ごとに観察しなくてはいけません。また、手術直後は出血量が増えるため、出血量にも注意が必要です。

そのため、夜間帯も含めて集中治療室(ICU)に心臓血管外科医が常駐して、尿量や出血量を観察しています。そして、異変がみられた場合には、すぐさま処置を行える体制をとっています。

尿が1時間で100ccでないときに対処するのと、4時間で400ccでないときに対処するのでは、最大3時間のタイムロスが生まれてしまいます。このようなロスによって、患者さんの命を奪うことがないよう、細かな術後管理を徹底しています。

人工血管置換術とステントグラフト内挿術から適切な治療を選択

大動脈瘤の治療には、人工血管置換術のほかに、ステントグラフト内挿術という血管内治療があります。当センターでは、人工血管置換術とステントグラフト内挿術をバランスよく行うことで、患者さん一人ひとりにとって適切な治療の選択ができるようにしています。

どちらかの治療法に偏ってしまうと、大動脈瘤の治療法について検討する際、客観的な評価が難しくなります。たとえば、本来であれば人工血管置換術が望ましいと考えられる症例に対しても、病院側の都合だけでステントグラフト内挿術が選択されてしまうケースも少なくありません。

このようなことを防ぐために、当センターでは大動脈瘤の形態や部位などから、その患者さんにとってよりよい治療法を選択するようにしています。

セカンドオピニオンを受けるには?

当センターでは、セカンドオピニオンの患者さんを積極的に受け入れています。

セカンドオピニオンで来院される患者さんには、先ほどお話ししたハイリスク症例のために手術ができないといわれた方や、手術はできても非常に高い確率で後遺症が残るといわれた患者さんなどが多くいらっしゃいます。

また、ステントグラフト内挿術後、動脈瘤がだんだんと拡大しているにもかかわらず放置されており、不安に思ってセカンドオピニオンにいらっしゃるケースもあります。

他院にて通院や入院をされている方で、もし何か不安に思うことがあれば、当センターのセカンドオピニオンへお越しいただければと思います。その際、紹介状の必要はありません。当センター専属のコーディネーターにご連絡いただければ、セカンドオピニオンのご案内をさせていただきます。

大島晋先生からのメッセージ

大島先生 

大動脈瘤のような難易度の高い手術において、リスクを最小限にするためには、シンプルかつ標準的な方法で手術を続けていくことが非常に重要です。

当センターでは、大動脈治療を専門的に行う施設として、手術の標準化に力を注ぎ、安全性の高い人工血管置換術を患者さんに行えるような環境を整えています。

他院では治療が難しいといわれた患者さんであっても、当センターにお越しいただければ治療方法を提示することができるかもしれません。

ですから、他院で大動脈瘤を治すことが難しいといわれたとしても、諦めることなく一度ご相談に来ていただければと思います。

 

2009年に産業医科大学を卒業。沖縄・中頭病院を経て、2011年より川崎大動脈センターで心臓血管外科 大動脈疾患手術を担当。2018年から川崎幸病院 大動脈外科部長兼川崎大動脈センター・センター長に就任。

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