院長インタビュー

予防と治療の2軸を確立し、一貫して提供する鹿児島厚生連病院

予防と治療の2軸を確立し、一貫して提供する鹿児島厚生連病院
前之原 茂穂 先生

鹿児島厚生連病院 院長

前之原 茂穂 先生

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この記事の最終更新は2019年04月02日です。

鹿児島県鹿児島市与次郎の海沿いにある鹿児島厚生連病院は、健康管理センターと病院が一体化している病院です。「予防から治療に至る一貫体制」を堅持し、健診から治療までの導線をスムーズにしています。同院の強みや、地域の方々の健康を守る取り組みについて、院長である前之原茂穂先生にお話しを伺いました。

鹿児島厚生連病院 外観
鹿児島厚生連病院 外観

JA鹿児島県厚生連は、1977年、地域の方々やJA組合員の健康問題に対応するために設立され、巡回健診を中心とした健診施設「健康管理センター」としてスタートしました。1985年にJAが天保山記念病院を取得し、1996年に鹿児島厚生連病院と名称を変更。現在は健康管理センターと病院が一体化し、「予防から治療に至る一貫体制」が整いました。

当院では、重症化した肝疾患や、肝臓がんなど、さまざまな肝機能異常のある方の診断と治療を行っています。急性期の治療を終えた患者さんのリハビリテーションや、社会復帰のためのケアも行っており、スタッフを含めた病院機能の充実を進めてきました。

鹿児島厚生連病院の機能や施設を更に整備しようという基本構想がたちあがり、2018年5月には新病院の竣工に至りました。

健康管理センター 受付
健康管理センター 受付

定期的に健診を受けているにも関わらず、進行したがんが見つかる患者さんがいることで、早期発見の啓発が大切だと考えました。そこから、発見後すぐに治療を受けられるようなシステムを作る、つまり健康管理センターと病院の一体化を進めました。

健診で異常があった場合、精密検査を必要とします。近年特に内視鏡検査のニーズが高まっており、通常の健診を受けた後すぐに内視鏡による精密検査を受けたいという患者さんもいます。内視鏡検査部門は、院内でも特に注力している分野です。内視鏡検査を行える部屋が8室あり、人間ドックや精密検査なども可能です。健康管理センターと病院が一体化したことで、麻酔科*や内科などの診療部門との連携もありますので、スムーズに精密検査を受ける事ができます。

さらに、健康管理センターの健診データと病院の診療データを一括して、内視鏡検査部門で結果を確認できるようにしたことも、迅速な治療につながる大きなメリットです。

当院には「健診というひとつの予防」と、「重症化した方々も治療がうけられる消化器・呼吸器・循環器疾患の専門病院」という2つの軸があります。この軸となる医療がしっかり連携していることが強みです。

麻酔科標榜医:白石 良久先生

当院では、悪性腫瘍、重篤な慢性肝炎肝硬変などの治療に対しても、精力的に取り組んでいます。肝硬変とは、血液を介したウイルスの感染やアルコールの過剰摂取、肥満などにより、原因となる肝炎が引き起こされ、ゆっくりと肝硬変へ進行したのち、腹水、黄疸、脳症などの症状を繰り返す、改善の難しい病気です。重症化した方は社会復帰が難しい場合もあります。そのため、肝硬変患者さんの診断・治療では、生活習慣自体を見直して、元気に社会復帰できるようにサポートすることが大切です。

当院の肝臓を治療するグループは、鹿児島県内の他病院と連携しながら、全国の肝臓疾患治療に携わる医師との情報交換を行い、患者さんの社会復帰の手助けになるよう、看護師や管理栄養士、薬剤師を含めたチーム医療を行っています。

入院患者さんの中には人工透析が必要な方もいます。これまでは透析が行える施設にお願いしたり、あるいは入院前の段階でご相談したりしていました。しかし、肝障害に対する治療を担う以上、腎臓の病気に対する治療も当然必要になってきます。そのため、将来的には院内で透析ができるように、設備やスタッフをそろえているところです。肝障害の重篤な患者さんが、急にほかの病気を併発したときは、たとえ透析施設を備えていても対応が難しい場合があります。その点、当院には日本消化器病学会認定の消化器病専門医や日本腎臓学会認定の腎臓専門医が在籍しているため、急性期の患者さんの治療も行うことができます。中規模の病院であっても専門医がいる病院という特徴をいかし、医師を中心としたチームによる治療を行うことで患者さんの社会復帰を目指します。

桜島が望める食道・談話室
桜島が望める食道・談話室

退院に向けた全ての方々の、自宅での料理を支援する取り組みも当院の特徴です。院内には、患者さんが家庭料理を作れるような調理実習室がありますので、地域の方々を集めて、管理栄養士や調理師と一緒に調理の勉強や食について考えています。JAの支援でできた病院ですので、地域貢献といった面でも恩返しをしていきたいと思っています。

病棟の患者さんは食事が一番の楽しみです。医療も提供しますが、おいしい食事も提供して、満足して快適な入院生活を送っていただけるようにと考えています。また、外来の患者さんにも、食事指導は可能です。医師や看護師だけではなく、管理栄養士や調理師など、さまざまな職種で連携を取り実施しています。

1人の患者さんを元気にするためにはどうしたらいいのか、皆で知恵を絞り、手助けして、患者さんがにっこり笑って食べられるようになる。それこそが最大の喜びです。患者さんにも、笑顔で食事をゴールに目指して「チーム厚生連」の皆で頑張っていこう、と伝えています。

現在の健康管理センターには、もともとは消化器内科の治療も行っていた医師も在籍しております(2018年6月時点)。そのため、消化器疾患に対して理解が深く、そのうえで総合的な診断の説明をしながら啓発運動を行っています。

患者さんに向けては、健康塾や市民健康講座などを行っています。また、厚生連病院は、離島に巡回健診に行くだけではなく、健診結果についての説明会や報告会を行っています。その結果に基づいて、行政やJAの職員と一緒に、さまざまな啓発活動を行っています。

当院はJAを運営母体としているため、農村医学という形で地域の保険と医療の向上に努めてきました。そういった指導や、教育活動が評価されて、2017年10月には日本農村医学会学術総会における「金井賞」を受賞しました。このような活動も当院の重要な役割だと思っております。

女性専用フロア
女性専用フロア

女性に多い乳がんや、子宮がんなどの早期受診・発見につなげられるよう、女性専用フロアを展開しています。乳がん検査に関しては、しこりを調べる乳腺超音波(エコー)検査や、乳がんやその他の乳腺の病気を発見する乳房X線検査(マンモグラフィー)などを取り入れています。

大事なのは、どの病気でもかかる前にチェックし、検査後のフォローができるようにすることです。

女性専用フロアができ、来院しやすくなることで、早期発見のきっかけになるのではと思います。

フロア内のスタッフも女性のみであり、女性の受診者さんが検査着のまま移動しやすい環境をつくりました。リラックスできる環境で安心して検査を受けていただけると思います。

前之原先生

皆さんが病気にならないよう、病気が早期発見できるようにお手伝いをする。もし病気が進んで、治療に専念するときには、元気に回復することができる空間として鹿児島厚生連病院が役に立てばよいと思っています。患者さんが本当に安心して信頼できる、患者さんに寄り添っていける病院になれるよう、職員一同、努めていこうと思います。

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