院長インタビュー

地域に密着し、治し支える医療を提供―盛岡市立病院の取り組み

地域に密着し、治し支える医療を提供―盛岡市立病院の取り組み
加藤 章信 先生

盛岡市立病院 病院長・ 盛岡市病院事業管理者、全国自治体病院協議会 理事

加藤 章信 先生

目次
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盛岡市立病院は、岩手県盛岡市の本宮にある市立病院です。超高齢社会に必要とされる医療を提供するため、地域に密着し、治し支える医療を提供する役割を担う病院として、さまざまな取り組みに尽力しています。

今回は、同院の役割を果たすための取り組みや、地域の方々に向けたメッセージなどを、院長である加藤章信先生にお伺いしました。

盛岡市立病院の外観
盛岡市立病院の外観

当院は1960年に、鉈屋町にあった盛岡市民病院と中央通りにあった盛岡市立病院が統合して、鉈屋町に設立された病院です。1999年には、院内が手狭になったことや建物の老朽化から本宮に新築移転を行い、現在に至ります。

2019年1月現在で診療科は、内科、外科、脳神経外科など15科設けています。早期の消化器がんに対して内視鏡手術で治療ができる消化器内科や、患者さん一人ひとりに合わせた治療プランを提案する、糖尿病・代謝内科などがあります。より高度な治療が必要だと判断した場合には、連携する岩手医科大学附属病院などに紹介します。

当院の周辺には大学病院や県立病院などの、岩手県一帯の患者さんを診る大きな急性期病院があり、日々たくさんの患者さんの治療を行っています。そうした地域にある当院の役割は、地域に密着して、患者さん一人ひとりに時間をかけ、治すだけではなく地域に戻るところまでを支える、あるいは病気との付き合い方を一緒に考えていく「治し支える医療」を提供することだと考えています。そのため当院は周辺の医療機関と連携し、急性期治療が完了した患者さんの受け入れを積極的に行っています。

患者さんの治療方針などを決定するカンファレンス中の様子
患者さんの治療方針などを決定するカンファレンス中の様子

当院の役割である、地域に密着し、患者さん一人ひとりに時間をかけて「治し支える医療」を提供するための取り組みをご紹介します。

当院には、地域包括ケア病棟を備えています。地域包括ケア病棟とは、手術などの治療を完了したものの、退院後の療養生活を送るにはまだ不安があるという方が、ご自宅や施設への復帰の準備のために入院する病棟です。治療を終えた患者さんのなかには、すぐにもとの日常生活を送ることが難しい方がいらっしゃいます。たとえば、高齢の患者さんなどでは、入院生活のなかで食欲や運動機能が低下してしまい、退院後にお買い物や料理などの日常生活を送ることが難しいということもあるでしょう。地域包括ケア病棟は、そのような方々を支え、社会復帰していただくための病棟として機能しています。最大60日間の入院が可能で、日常生活を送ることを目標としたリハビリテーションも提供しています。

また、地域包括ケア病棟では、糖尿病患者さんの教育入院なども行っています。

高齢化が進む昨今、認知症を患う方も増加傾向にあります。認知症患者さんのなかには暴れてしまって傷を負ったり、ご家族の方に傷を負わせてしまったりする方などがいらっしゃいます。そうした方々を、当院の神経精神科で診療しています。認知症患者さんはご高齢の方が多いため、認知症以外にも、生活習慣病や糖尿病などの合併症を持っている方もいらっしゃいます。当院は、合併症をお持ちの方も、入院していただきながら合併症の診療が可能です。

また、精神疾患をお持ちの患者さんの高齢化により、精神疾患と合併症を併発されている高齢の患者さんが増加傾向にあります。そのような患者さんも、当院で診療しています。

当院は神経精神科の病床を有しているため、精神疾患の患者さんの入院が可能です。さらに、当院は総合病院であるため、内科、外科、および眼科などの診療科があります。そのため、認知症や精神疾患とともに、合併症をお持ちの患者さんに治し支える医療を提供することも、当院の役割だと考えています。

当院では、どのような医療を提供したらこの患者さんは幸せに過ごすことができるようになるか、ということを考えて、診療しています。たとえば、90歳の高齢の患者さんに肝臓がんが見つかったとします。手術によってがんを切除する治療方法もありますが、手術は体への負担が大きく、がんは治ったとしても、場合によっては寝たきりになってしまうこともあります。起こりうるさまざまな可能性を見極めて、患者さんやご家族に丁寧な説明を行い、患者さんの生活環境や希望などを考慮したうえで、治療方法や緩和ケアを提案しています。

一人ひとりの患者さんに一番適した医療が何かを真摯に考え、患者さんに寄り添って支えることを心掛けています。

盛岡市立病院に設置されているMRI
盛岡市立病院に設置されているMRI

高齢化が著しく進むこの地域では、介護施設に入居される方が増えています。入居者さんが体調を崩したときは、介護施設のスタッフの方が入居者さんを医療機関に連れていらっしゃいます。しかし、人手不足に悩んでいる介護施設では、人手が足りなくなってしまい、現場が大変だと伺っています。また、診療所やクリニックの先生方のもとに、急いで検査をするべき症状の患者さんがいらっしゃることがあります。しかし、診療所やクリニックの先生方のもとには検査に必要なMRIなどの医療機器がないことが多く、急いで対応することができません。そのようなときに、当院の地域医療連携室にお電話を一本いただければ、地域の介護施設や医療機関にすぐに迎えに行ける体制を整えています。

この超高齢社会で地域を支えるためには、地域の医療機関や介護施設との密接な連携が必要だと考えます。そのために、私は地域の開業医の先生方を定期的に訪問し、顔の見える関係を築いています。当院周辺に80か所もある介護施設にも、これから訪問させていただく予定です。

当院では、地域の方々に向けた「市立病院デー」というイベントを、毎年、院内で開催しています。当院周辺の農家の方々に、とれたての野菜や果物を売っていただいたり、当院の歯科医による口腔ケアチェックコーナーを設けたり、血管年齢を調べるコーナーを設けたりしています。また盛岡市には、さんさ祭りと呼ばれるイベントがあります。そのさんさ祭りの「ミスさんさ」という踊り子さんを当院にお呼びして、当院の1階で踊りを披露していただいています。その後、踊りを見に来られない入院患者さんのために、「ミスさんさ」さんに一人ひとりの病室を訪れていただき、一緒に写真撮影をしていただいています。ベッドの近くに、今も大事に写真を飾っている患者さんもいらっしゃいます。

また、地域の方々の健康意識向上のため、市民公開講座や出前講座を無料で開催しています。これらの講座では地域の方々に向けて、病気にならないための具体的な運動方法や食事方法などを、お話ししています。

このような取り組みを通して、地域の方々にとって、より身近な病院だと感じていただければと考えています。

加藤先生

若手の医師の皆さんには、患者さんに寄り添った医療を提供できる医師になっていただきたいと考えています。よい医師へ成長するために大切なことは、総合的に診療する力を培うことができるファーストタッチの診療を、数多く経験することだと思います。高齢の患者さんは、複数の病気を抱えていることがあり、全身を総合的に診療することを医師に求めていらっしゃいます。ですから、たとえば消化器内科の担当だから呼吸器内科は診ない、ではなく、内科医として総合的に診ることができる医師を目指してください。

当院では、ファーストタッチの診療を数多く経験できます。また、じっくりと時間をかけた研修を心掛けています。職員には、親戚のお子さんを預かったような気持ちでよい医者に育てよう、と伝えています。患者さんに寄り添った医療を提供できる医師になれるよう、職員一同で育てていきますので、当院の取り組みに共感していただけた方は、ぜひ当院にお越しください。

当院は、地域に密着した病院として、患者さんとのコミュニケーションを大事にしていき、治し支える医療を提供していきます。また、患者さんの心に届く医療を提供するにはどうすればいいかを職員一同で考え、行動します。なにかご不安なことがあれば、当院にご相談ください。お電話でのお問い合わせも、いつでもお受けしております。

2019年9月に、盛岡市内にある岩手医科大学附属病院は、紫波郡矢巾町に新設移転します。岩手医科大学附属病院の移転後の夜間救急につきましては、地域の皆さんにご迷惑をおかけすることがないよう、当院の救急医療体制を強化する予定です。近隣の病院と協力し合い、今よりもさらに充実した救急医療を提供できるようにします。

当院の治し支える医療によって、患者さんから「盛岡市民病院は私を大事にしてくれる病院」と感じていただける病院になれるよう、職員一同全員で尽力してまいりますので、今後とも当院をよろしくお願いいたします。

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    加藤 章信 先生

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