院長インタビュー

患者さんと同志でありたい——患者さんと共に戦う宮城県立がんセンターの取り組みと展望

患者さんと同志でありたい——患者さんと共に戦う宮城県立がんセンターの取り組みと展望
山田 秀和 先生

宮城県立がんセンター 院長、東北大学 大学院医学系研究科連携講座 婦人科腫瘍学分野 教授

山田 秀和 先生

目次
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宮城県立がんセンターは、宮城県名取市に位置しており、がんの治療に特化した病院として機能してきました。同院では、「患者さんはがんを共に治していく仲間である」という考えから、「患者様」ではなく、あえて「患者さん」と呼んでいると言います。今回は、患者さんの視点に立ち、がんの治療に当たっている宮城県立がんセンターの病院長である山田秀和先生にお話を伺いました。

宮城県立がんセンターの外観
宮城県立がんセンターの外観

当院は、1993年に宮城県成人病センターを引き継ぐ形で開院しました。開院と同時に、宮城県成人病センターの頃からある診療科に加えて、整形外科や脳神経外科などの診療科も開設しました。2011年に地方独立行政法人に移行したことにより、総長や病院長の判断で人事などの取り決めができるようになりました。このことから、病院としての体制が大きく変わり、患者さんにより安心していただける医療環境を目指すことが可能となりました。また、当院では患者さんに体だけでなく、心も回復していただくためのケアなどにも力を入れています。

当院では、2019年12月現在で26の診療科を設けていますが、その中でも特に頭頸部の領域や、血液内科などの領域で患者さんが多いのが特色です。頭頸部外科には、日本頭頸部外科学会の頭頸部がん専門医に認定されている医師が在籍しており、患者さんの生活の質を向上させるための治療に励んでいます。また、頭頸部内科には日本臨床腫瘍学会認定のがん薬物療法専門医、血液内科には日本血液学会認定の血液専門医が在籍し、患者さんに安心して治療を受けていただける医療環境を整えています。これにとどまらず、各領域のがん治療に対する専門知識を持った医師が在籍しており、多方面からがん患者さんの治療およびサポートを行っています。

手術時の様子
手術時の様子

病気にかかる前の状態により近い状態に治ることが大切であると考え、2017年にサポーティブケアチームの発足を行いました。これは、治療により脱毛や皮膚疾患などの副作用が出てしまった場合に、専門知識を持ったスタッフがチームを組んで対応するというものです。中でもアピアランス(外見)ケアなどを行うことで、患者さんの外見的な悩みにも積極的に対応しています。女性にとって、アピアランスケアはとても大切になってくると考えており、がん治療の副作用になる脱毛に対しては、ウィッグの使用を推奨するなど、少しでも患者さんの悩みが軽減するように努めています。

また、当院で治療経験のある地域の方々や以前勤務していた職員の方々などが主体となり、院内に花を飾ったり、コンサートを催したりするなどのボランティア活動を行ってくれています。そのことにより、患者さんの体だけでなく、心の面からの健康にも目を向けています。

当院では、手術による患者さんの負担を軽減したいとの思いから、今後は低侵襲手術を行える医療環境を整えていきたいと考えています。現在でも、腹腔鏡手術や内視鏡手術を取り入れていますが、今まで以上に患者さんに負担の少ない手術をするために、今後は手術支援ロボット“da Vinci”の導入を検討しています。“da Vinci”の導入により、泌尿器科を始め、呼吸器外科や婦人科などの分野の手術が、より低侵襲なものになることを期待しています。

当院は、2019年12月現在、がんゲノム医療連携病院に指定されています。がんゲノム医療とは、“がん遺伝子パネル検査”の実施を行ったうえで、個々のがんの遺伝子情報にあった治療をを提供していくものです。これにより、患者さんに適した治療を提供することができるようになるため、患者さんの体への負担と経済的な負担の軽減にもつながると考えます。今後は、がんゲノム医療中核拠点病院である東北大学病院と連携をとりながら、がんゲノム医療の提供にも力を入れていきます。

今後はさらに地域の方々や医療機関の方々に当院を知っていただくために、今まで以上に地域との連携強化を図ります。そのために、まずは地域連携室で働く職員の増員を検討していきます。そのうえで、当院で行っている緩和ケアなどの取り組みを深くアピールしていきたいと思います。

そのほかにも、当院では公開講座として“がん何でも講座”を実施しています。医療に携わるスタッフが近隣の公民館や企業に直接出向き、がんに対する理解や知識、関心を深めていただけるように定期的に講座を開催しています(2019年12月時点)。

当院では、これからさらに進むとされる高齢化に備え、合併症を持つ患者さんにも対応できるよう医療体制の見直しを行っていきます。近年では、患者さんの高齢化からがんに加えて、糖尿病や循環器疾患などの合併症も発症しているケースが見られる場合があり、今後はその傾向がさらに強くなると考えられます。当院では、今後そうした合併症への対応が十分できるように、従来からの循環器科内科や糖尿病・代謝内科に加えて、皮膚科の外来診療を開始しました。そのほか、精神腫瘍科を開設しています。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

当院はがんセンターとして、これからもがん治療のプロであるという意識を大切にしながら、患者さんの治療に向き合っていける病院でありたいと思います。また、共に闘う同志である患者さんの意思を尊重し、患者さんと私たち医療スタッフが一体となって医療を提供していける病院を目指します。

私たちはがん治療のプロであるという意識を大切にし、常に向上心を持ちながら、日々医療と向き合っています。患者さんを中心に考え、スタッフ一同「がん患者さんの人生を含めて共にがんと戦い、サポートする」という気持ちで治療を行っていきます。当院では、「よりよく治ることが大事である」と考えているため、サポーティブケアチームの発足や、ボランティア活動などのさまざまな取り組みを大切にしています。これからも、患者さんに寄り添った医療を提供できるように努めていきます。

当院には研究所が隣接しており、学位の取得を目指しながら、通常の臨床に関する仕事も学ぶことができます。また、これから始まる“がんゲノム医療”などの新しい研究について詳しく掘り下げることができるため、これからの医療体制の構築にも大きく関わっていくことができます。そして何より当院や当研究所の全面的なサポートのもと、やりがいを持って研究を行える環境が整っています。

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  • 宮城県立がんセンター 院長、東北大学 大学院医学系研究科連携講座 婦人科腫瘍学分野 教授

    山田 秀和 先生

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