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脂肪腫の手術が行われる状況は?~手術の流れや、悪性だった場合の治療法~

脂肪腫の手術が行われる状況は?~手術の流れや、悪性だった場合の治療法~
川井 章 先生

国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長(希少がんセンター長)

川井 章 先生

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脂肪腫(しぼうしゅ)とは脂肪組織からできた良性の軟部腫瘍(しゅよう)で、体のどこにでも生じる可能性があります。通常は痛みなど自覚症状を伴うことはないとされていますが、まれに脂肪腫が神経を圧迫して麻痺などの症状が生じることもあります。

良性腫瘍であるため、診断が確定すれば治療を行わずに経過観察でも問題ないとされていますが、必要に応じて手術で摘出することが検討される場合もあります。では、どのような場合に手術が行われるのでしょうか。

前述のとおり脂肪腫はあくまで良性の軟部腫瘍であるため、診断に間違いがなければ、通常は経過観察でも大きな問題になることはありません。しかし、腫れなど見た目が気になる場合などには、本人の希望を考慮して手術による摘出を検討します。

なお、典型的な脂肪腫の手術は、形成外科や整形外科のクリニックでも行われますが、腫瘍の大きさがゴルフボールより大きい、かたい部分があるなど、少しでも悪性腫瘍の可能性が疑われる場合には、専門的な施設の腫瘍整形外科を受診することが強くすすめられます。

一般に手や足にしこり(腫瘤(しゅりゅう))を見つけた場合、大きさが5cm以上(ゴルフボールより大きいもの)、あるいは腫瘍が一様に柔らかくない場合などは、良性の脂肪腫ではなく脂肪肉腫*など悪性の軟部腫瘍である可能性も考えておく必要があります。なぜなら、悪性の軟部腫瘍を良性の脂肪腫と間違って手術してしまうと、再度の手術が必要になるほか、場合によっては再発や転移を生じ、生命の危険も生じるためです。

このような重大な間違いを起こさないためにも、手術を行う前には丁寧な診察に加えて、MRIなどの画像診断をきちんと行い、典型的な脂肪腫の所見であることを確認しておくことが非常に重要です。

*肉腫:悪性腫瘍のこと

脂肪腫など軟部腫瘍の画像診断としてはMRIがもっとも有用です。

脂肪腫の場合、MRIでは内部が均一で高輝度の腫瘍として描出されます。一方、典型的な脂肪腫(大きさがゴルフボールより小さい、腫瘍全体が非常に柔らかい、MRIでT1,T2強調画像ともに均一な高輝度を呈する)の所見と異なる場合には、悪性腫瘍を含むそのほかの軟部腫瘍である可能性も考えられるため、次に生検*が行われます。

検査によって診断を確定した後に、今後の治療方針を決めるなどの慎重な対応が望まれます。

*生検:腫瘍の一部を採取して組織検査を行うこと

小さな脂肪腫の摘出手術は、日帰り手術か短期入院で行うことが可能です。腫瘍が大きい場合や発生箇所・状態によっては、全身麻酔を要するため入院が必要となります。

脂肪腫の一般的な摘出手術の流れは下記のとおりです。

  1. 腫瘍の直上を切開する。
  2. 出血によって血腫が広がるのを防ぐために丁寧に止血を行う。場合によっては、術後、創内に血がたまらないようにドレーン(体液を排出する管)を留置する。
  3. 傷が目立たないように縫う。

万一、摘出した腫瘍が悪性と判断された場合は、早急に追加の専門的な治療を行うことが必要です。

多くの場合、悪性の腫瘍細胞の取り残しがないよう、初回の手術で汚染された部分を含めて腫瘍付近を大きく切除すること(追加広範切除術)が必要になります。さらに場合によっては、放射線治療や抗がん剤による薬物治療が必要になる場合もあります。

なお、これらの治療は専門的な施設の腫瘍整形外科で行うことになります。

手術にかかる費用は、脂肪腫の大きさや場所、状態によって異なるほか、入院する場合には金額が上がることがあります。さらに病院によっても費用は異なるので、担当医とよく相談するようにしましょう。

また、脂肪腫の手術では健康保険が適用されるため、費用の負担を減らすことができます。なお、医療保険の給付金として手術給付金がもらえる場合がありますが、自身が加入している生命保険や共済組合によって異なるので治療の前に確認するとよいでしょう。

脂肪腫は良性腫瘍ですが、これまで述べたように脂肪腫と思って摘出をしても、まれに脂肪肉腫など悪性のケースもあります。また手術を行う場合、脂肪腫の大きさや発生箇所によって日帰りか入院かなど治療法が変わってきます。そのため、治療の見通しや、万が一悪性であったときのことも含めて、担当の医師と十分に相談をしたうえで手術を検討することが大切です。

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