肋間神経痛とは、肋骨に沿って走る“肋間神経”が刺激されることによって胸に生じる痛みのことをいいます。病気ではなく症状そのものを指し、神経の損傷・圧迫・感染、あるいは原因不明の異常興奮などによって生じると考えられています。ただし、肋間神経痛を自身で判断するのは難しく、医師による診断が必要です。では、どのような症状がある場合に受診を検討するとよいのでしょうか。
本記事では、肋間神経の症状や生じやすい人の特徴などのチェック観点について説明します。
肋間神経痛の主な症状は胸に生じる痛みです。この痛みは左右いずれかの胸に生じることが一般的ですが、痛みの生じるタイミングや痛み方の特徴は原因によって異なります。以下では、原因別の肋間神経痛の症状を説明します。
肋間神経痛は、肋骨の骨折や開胸手術などによる肋間神経の損傷によって生じることがあります。あるいは、変形性脊椎症や胸椎椎間板ヘルニア、脊椎や肋骨の周辺にがんなどの腫瘍が発生することなどによって、肋間神経が圧迫されて生じることもあります。このように、原因となる事柄が明らかな場合の肋間神経痛を“続発性肋間神経痛”といいます。
続発性肋間神経痛は上半身を動かしたときに痛みが生じたり、その痛みがひどくなったりすることが一般的です。時に呼吸がしにくくなるほどの強い痛みを呈することもあります。このような症状は通常、時間の経過とともに自然に収まり、動かすと再発します。
肋間神経痛は、帯状疱疹によって生じることがあります。こちらも原因となる事柄が明らかなため、“続発性肋間神経痛”の1つと考えられます。
帯状疱疹ウイルスは初回感染で水痘(水ぼうそう)を引き起こすうえ、治癒後も体に残り続け、抵抗力・免疫状態が低下したときに再活性化して、さまざまな症状を引き起こします。再活性化後の症状の1つに、肋間神経痛が挙げられます。
肋間神経への帯状疱疹ウイルスの感染による肋間神経痛は、肋骨周辺の皮膚にひりついた痛みが持続的に生じることが一般的です。
肋間神経痛には上記のような明らかな原因がなく、神経が異常興奮を起こして生じるものもあります。このような原因が分からない肋間神経痛は“原発性肋間神経痛”と呼ばれます。原因は不明ですが、ストレスや体の凝りが関与していると考えられています。
原発性肋間神経痛は、突然電撃痛が生じることが特徴です。
前述のとおり、肋間神経痛には明確な原因が存在する場合があります。以下のような方は肋間神経痛が生じやすい可能性があるため、気になる症状があればかかりつけの医師に相談するか、病院の受診を検討しましょう。
また、このほか原発性肋間神経痛の場合には、ストレスの蓄積があったり体の凝りがあったりする場合に生じやすいと考えられます。
肋間神経痛は原因によって、痛みの特徴にも違いがあります。上で述べたような症状をチェックし、気になる痛みなどの症状がみられる場合には、病院の受診を検討しましょう。診療科は内科や整形外科を検討するほか、帯状疱疹ウイルスによる肋間神経痛が疑われる場合、皮膚科を受診してもよいでしょう。また、肋間神経痛が生じやすい病気を持っている方の場合には、まずかかりつけ医に相談することを検討しましょう。
このような診療科を受診しても原因が分からなく痛みが続く場合には、ペインクリニックの受診を検討しましょう。ペインクリニックとは、さまざまな原因によって起こる痛みの治療を専門とする医療機関のことを指します。また、胸に生じる痛みは肋間神経痛以外にも、内臓の病気が原因となって生じている可能性も考えられます。そのため、胸が締め付けられる、張り裂ける感覚を伴う場合は、必要に応じて救急車を要請することも検討しましょう。
横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック 診療教授
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