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大動脈瘤の外科治療はどのようなケースで行われる?

大動脈瘤の外科治療はどのようなケースで行われる?
光島 隆二 先生

医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック 心臓血管外科 副院長、札幌医科大学 医学部 ...

光島 隆二 先生

黒田 陽介 先生

医療法人 札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック 心臓血管外科部長/大動脈瘤センター長

黒田 陽介 先生

目次
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大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)を予防するためには、血管にできるだけ圧力をかけないような生活が大切です。そのために、リスク要因になる動脈硬化高血圧症の予防を意識しましょう。大動脈瘤があるだけならば問題になりませんが、(こぶ)が破裂すると命の危険にさらされてしまうため、破裂する前に適切な治療をしてリスクを下げることが大切です。今回は日常的にできる大動脈瘤の予防から、大動脈瘤が疑われる場合の検査・診断などについて、札幌心臓血管クリニック 副院長 光島 隆二(こうしま りゅうじ)先生と、同院 心臓血管外科部長/大動脈瘤センター長 黒田 陽介(くろだ ようすけ)先生にお話を伺いました。

大動脈瘤を発症する要因の1つが動脈硬化です。まず大動脈瘤を予防するために、できるだけ動脈硬化を起こさないようにしましょう。大動脈瘤の予防に特化したことではありませんが、塩分や油分の高い食事を控えること、1日3食食べて腹八分目に抑えること、栄養バランスを意識した食事を取ることなどが動脈硬化を防ぐポイントとなります。食生活以外の生活習慣では、適度な運動を行ったり、たばこを吸う習慣がある方は禁煙をしたり、過度な飲酒を避けたりすることも重要です。

また、血圧を正常な範囲でコントロールすることも、大動脈瘤を予防するうえで大切なポイントです。しぼんでいる風船を膨らますとき、最初は大きな力がいりますよね。ただ、一度膨らみ始めると、その後風船を大きくするのに必要な力は少なくなります。血管も風船と同じで、最初に膨らみ始めるときは大きな力が必要ですが、一度膨らんだ血管の瘤は簡単に大きくなってしまいます。つまり、血圧が高くなると血管が膨らみやすくなるため、血圧をコントロールすることは大動脈瘤の予防に重要なのです。

現時点では、動脈硬化を根本的に防ぐ薬は存在しません。そのため、日ごろから自分の健康状態に気を配り、まずは上述した食事療法や運動療法を行って動脈硬化のリスクをできるだけ下げることが大切です。それでも血圧のコントロールが難しい場合は、薬物療法で内科的にリスク因子を取り除きながら経過観察を行うことが必要になります。

もし、発見された時点で瘤が大きく拡大しており破裂リスクが高いケースでは、手術による治療が必要です。

未破裂の大動脈瘤が疑われる場合、CT検査で確定診断を行います。当院では造影剤を用いたCT検査で瘤の形状や大きさを確認し、治療方針を決定していきます。基本的には受診した当日に検査を実施し、即日で結果を伝えることが可能です。

未破裂大動脈瘤の形状は、瘤の形によって紡錘状(ぼうすいじょう)嚢状(のうじょう)の2種類に分類されます。紡錘状の大動脈瘤は、風船を膨らませたときに均等な形で膨らむイメージの瘤です。一方で嚢状の大動脈瘤は、風船の一部分だけがいびつに膨らむイメージの瘤です。嚢状の瘤は、血管の壁が一部分だけ弱くなっていて、弱くなっている壁が突出して膨らんでいます。壁が弱いので、紡錘状よりも嚢状のほうが破裂リスクは高いと考えられています。瘤の形状は外科治療の適応可否を検討するにあたり必要な情報です。

破裂した大動脈瘤では多くの場合、激烈な痛みを伴ったりショック状態になったりして、救急車で搬送されてきます。大動脈瘤の破裂が疑われる場合、最優先でCT検査を行います。大動脈瘤の破裂は一刻を争う事態で、早く治療すればするほど救命できる可能性が高くなり、遅れれば遅れるほど下がります 。CT検査後は、大動脈瘤の破裂かどうかを速やかに判断し、破裂していることが確定した場合はそのまま手術を開始します。

基本的に、瘤があること自体に問題はありません。一番の問題は、瘤が破れて血液が漏れ突然死してしまうことなのです。そのため、大動脈瘤を治療する目的は“瘤が破裂するのを防ぐこと”、すなわち突然死の予防です。一定の条件を満たした大動脈瘤は外科治療が適応されます。

血管には血液が流れていて常に圧力がかかっているので、一度膨らんだ血管がしぼむことはありません。薬で血圧を下げることはできても、破裂を完全に予防することは不可能です。瘤の大きさが一定以上のものや拡大が進行しているもの、破裂しやすい形のものは外科治療が適応されます。外科治療の適応にならない小さな大動脈瘤の場合は、薬物治療をはじめとする内科的治療で経過観察を行います。

胸部大動脈瘤の外科治療の適応

胸部大動脈瘤は、以下のいずれかに当てはまる場合に外科治療が適応されます。

  • もっとも太い箇所が5.5cmを超えている
  • 半年で5mm以上拡大した
  • 形が嚢状である

ただし、生まれつき血管の壁が弱い患者さんの場合は、5.5cmではなく4.5cmを超えた時点で外科治療が適応されます。また、上記のいずれにも当てはまらない胸部大動脈瘤であっても、仮性大動脈瘤の場合は発見された時点で外科治療の適応となります。

腹部大動脈瘤の外科治療の適応

腹部大動脈瘤は、以下のいずれかに当てはまる場合に外科治療が適応されます。

  • もっとも太い箇所が5.0cm以上
  • 半年で5mm以上拡大した
  • 形が嚢状である

上記に該当しない腹部大動脈瘤の場合は、薬で血圧を下げる降圧療法を行い、定期的にCT検査を実施しながら瘤の状態を確認します。

大動脈瘤の外科治療は人工血管置換術とステントグラフト内挿術の2種類です。人工血管置換術は基本的に全ての大動脈瘤に適応されます。ステントグラフト内挿術は腹部大動脈瘤が2006年に、胸部大動脈瘤が2008年に薬事承認を受けた治療法で、現在は下行大動脈瘤と腹部大動脈瘤に対してのみ適応されています。

こちらのページでは、人工血管置換術とステントグラフト内挿術について詳細に説明します。

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  • 医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック 心臓血管外科 副院長、札幌医科大学 医学部 臨床教授

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    黒田 陽介 先生

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