院長インタビュー

魚沼地域の高度な医療を集約し未来を担う 魚沼基幹病院

魚沼地域の高度な医療を集約し未来を担う 魚沼基幹病院
鈴木 榮一 先生

新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院 病院長

鈴木 榮一 先生

目次
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魚沼基幹病院は、米どころとしても知られる新潟県の魚沼地区に位置し、魚沼医療圏での医療の充実を目的として設立された病院です。地域医療を安定的に維持するため、高度な医療を集約した病院として質の高い医療を提供しています。

同院の特徴について病院長の鈴木 榮一(すずき えいいち)先生にお話を伺いました。

外観
(魚沼基幹病院ご提供)

魚沼基幹病院は、魚沼医療再編に伴って2015年7月に設立され10年目を迎えた病院です。

当院が属する魚沼医療圏は十日町市、魚沼市、南魚沼市、湯沢町、津南町で構成され、神奈川県と同程度の広さであるものの人口は20万人弱という地域です。当院は、名前のとおりこの地域の基幹病院として、地域で医療を完結できるよう設立されました。この地域は医師が不足している場所でしたが、このプロジェクトで地域の医療を再編成し、医療体制や医療人への教育の充実を図った結果、現在は十分機能するレベルの病院になったと自負しています。

当地域では地域全体の医療・介護の問題を解決するため、“うおぬま・米(まい)ねっと”という地域全体で医療・介護の情報を共有するシステムを立ち上げました。これは、当病院内に設置されているNPO法人魚沼地域医療連携ネットワーク協議会が主幹として行っているものです。

高齢者数がピークを迎え、それに対して労働者人口の不足が予測される2040年に備え、この情報共有システムを導入しました。デジタル活用で地域の連携を円滑にし、限られた医療資源・介護資源を有効に活用する目的で運用されています。

おかげさまで、例えば魚沼市の65歳以上の8割以上の方が加入するなど、多くの患者さん、地域の先生方や施設の皆様にご利用いただき、地域内で効率的な情報共有に役立っているのではと感じています。たくさんの方にご加入いただくことで、それだけ連携もスムーズになり早い処置につながります。無料で登録できますので、これからも多くの方に利用していただけたらと思います。

NICU
NICU(魚沼基幹病院ご提供)

当地域での周産期医療資源の集約化を行った結果、現在魚沼医療圏で分娩を行える医療機関は当院と1診療所のみ(2024年4月時点)となっています。ハイリスクな妊婦さんや早産などの難しい状況の赤ちゃんも現在は当院で対応可能なことから、時間がかかる他地域への搬送は大幅に減少しました。新生児部門ではNICU(新生児集中治療室)とGCU(新生児回復期治療室)を備えており、医療が必要な赤ちゃんには集中治療と成長のサポートをすることができます。

ドクターヘリ
ドクターヘリ(魚沼基幹病院ご提供)

当院は三次救急病院として断らない救急医療を行っており、この地域で必要な医療はこの地域で完結できるよう、地域救命救急センターを設置しています。広範な医療圏への対応としてドクターヘリが離着陸できるよう屋上にヘリポートも設置しています。当院で対応が難しい場合は他院へヘリ搬送することも可能です。

また場所柄、冬はスキー、夏場でも登山事故などの外傷患者さんが多いのが特徴でもあります。もちろん外傷だけでなく、高齢化の進んだ地域なので、脳卒中や循環器系の急性期患者さんの救急搬送も多くなっています。

からだにやさしい治療センター
からだにやさしい治療センター(魚沼基幹病院ご提供)

当院の“からだにやさしい治療センター”は、低侵襲医療という体への負担が軽い方法による治療を行うセンターで、患者さんにも親しんでいただけるようこの名前にしました。従来、手術となると皮膚や筋肉などの切開を伴うことは当たり前でしたが、近年、カテーテル治療や腹腔鏡下手術、放射線治療など、体への負担を少なくしながら治療をする方法が多くなっています。侵襲性を抑えた治療は、体の傷跡だけでなく、早期の社会復帰や経済的な負担の軽減も期待でき、患者さんにとってのメリットが大きいと思います。

当院は各診療科で行ってきた低侵襲治療をさらに推進するため、診療科を横断したセンターとして取り組んでいます。

放射線治療機器
高精度な放射線治療機器(魚沼基幹病院ご提供)

当院は2021年に地域がん診療連携拠点病院の指定を受けました。これは、全国のどこでも質の高いがん医療を受けられるよう、基準を満たした医療機関に対し厚生労働大臣が指定するものです。原則として2次医療圏に1か所整備することを国は目指しており、当医療圏では当院がそれにあたります。

当院では手術、化学療法、放射線治療のがん治療三本柱を患者さん一人ひとりにあわせた最適な方法で行っています。化学療法では外来における治療が可能であるほか、放射線治療においては高精度な放射線治療機器や動体追跡システムを導入して、従来よりも精密に“あてるべきところにあてる”治療が可能となりました。さらに、腫瘍センターを中心に緩和ケア室、がん相談支援センターの設置や、地域の医療従事者とも合同カンファレンスを開催するなど、地域におけるがん治療の連携拠点としての使命を果たしてまいります。

当院は“地域全体でひとつの病院”を合言葉に地域医療連携を進めており、この地域に暮らす方が住み慣れた場所で医療や介護を受けられることを目指しています。

かかりつけの先生から当院にご紹介いただき、当院での治療を終えた後はまた地域の先生へお願いする、その後なにかあればまた当院がお力添えをする、そういった地域医療を円滑に回す歯車の1つとして地域に貢献したいと考えています。

また、医療従事者の育成は当院の大きな役割の1つです。新潟大学地域医療教育センターが併設されており、配置された教員は病院勤務とともに教育や研修も行っています。今後も医師だけでなく、看護師や技師などのメディカルスタッフを育成し、未来の医療人を育てる中心地となるよう活動を続けていきます。

地域をつないでともに未来を育て、そしていのちをつないでいく、そんな病院を目指してこれからも地域のために力を尽くしてまいります。

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