院長インタビュー

ひとりひとりの健康と尊厳を守る、地域のための病院を目指すコミュニティーホスピタル甲賀病院

ひとりひとりの健康と尊厳を守る、地域のための病院を目指すコミュニティーホスピタル甲賀病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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静岡県焼津市にあるコミュニティーホスピタル甲賀病院は1989(平成元)年の開院以来、“地域のための病院”としての役割を担ってきました。機能分化が求められる時代において、急性期機能を拡充した同院の役割や今後について、院長である甲賀 啓介(こうが けいすけ)先生に伺いました。

先方提供

当院は1989年の開院当初より地域のための病院(コミュニティーホスピタル)を目指し、この地域の医療を支えてまいりました。当院のほかにはほとんど何もなかった地域に国道150号線が開通し、住宅が整備されるのに合わせるようにして、病院の規模も徐々に大きくなりました。田んぼの中にぽつんと建っていた127床の病院は現在、介護老人保健施設をはじめとした関連施設を合わせて27事業所・800床ほどを有する医療・介護複合体へと成長しています。

当院のある焼津市は人口約14万人(2024年3月時点)の漁港の町です。他の地域と同様に人口減少と高齢化が進むなかで、医療が直面するもっとも大きな課題は人口減少ではないでしょうか。人口減少は単に生活者が減少するだけでなく、医療現場で働く人が少なくなることを意味します。この地域に暮らす方々の命と健康を守る医療の担い手を確保し、安定した医療提供体制を維持していくことは、当院の使命だと言っていいでしょう。

こうした背景を踏まえ、私が院長に就任した2019年を境に病床数の見直しなどを行い、病院の方針を大きく変える決断をいたしました。以前から“急性期医療”と“慢性期医療”を担う病院として機能しておりましたが、現在は “急性期医療”に特に力を注いでいます。また当院での治療を終えた患者さんについては、グループ内の各施設と連携することによって“医療”と“介護”をシームレスにご提供できる体制があることも強みです。

当院では2020年5月、民間病院としては静岡県で初めて病院救急車(医療機関が所有する救急車)を導入しました。人口減少と高齢化が進む一方で、救急医療に対するニーズは高まりつつあります。救急医療の現場はすでに疲弊しており、この状況を何とか改善できないものかと考えて病院救急車の運用を決めました。

当院の救急科には日本専門医機構認定救急科専門医が複数在籍し、救急救命士とともに24時間365日体制で患者さんの治療にあたっています。救急車の年間受け入れ台数は約2,500件*、救急の総患者数は4,000人以上にのぼります。

救急科は“大きな病気を発症したり、命に関わるようなけがを負ったりしたときに診てもらうところ”だとお考えの方もいらっしゃると思いますが、決してそうではありません。急な体調不良の裏に大きな病気が隠れている可能性もありますので、“何科を受診したらよいか?”と迷うようなときには救急科を頼っていただければと思います。

*救急車利用者数……2021年:2,107件、2022年:2,398件

救急総患者数……2021年:3,125人、2022年:4,052人

当院は手術や入院が必要な重症患者さんを受け入れる二次救急医療機関であり、心筋梗塞(しんきんこうそく)脳梗塞など命に関わる病気を発症して運ばれて来る患者さんが少なくありません。心筋梗塞も脳梗塞も血管内に生じた“血栓”が原因となり、心臓や脳への血液供給を妨げる病気です。患者さんの命を守り、できるかぎり後遺症を残さないためには、一刻も早く治療を行うことが非常に重要です。

心筋梗塞をはじめとした心臓や血管の病気は循環器内科が担当し、脳梗塞をはじめとした脳の病気は脳神経外科が治療にあたります。当院にはそれぞれに血管内治療(カテーテル治療)の専門医(日本心血管インターベンション治療学会認定)が複数在籍しており、検査から治療まで一貫して行えるカテーテル室を2室備えて迅速・適切な治療につなげています。

なお、脳神経外科では脳の病気を発症するリスクを調べる“脳ドック”を実施しておりますので、病気の早期発見・早期介入のためにもぜひご活用ください。

地域にお住まいの方が病気やけがをしたときに必要な医療をご提供する一方で、皆さんが病気にならず毎日健康にお過ごしいただけるようにサポートすることも、私たちの大切な仕事です。

2012年に新設したE・F棟には予防医療センターと内視鏡センターがあり、健康診断人間ドックなどを行っています。私が消化器内科を専門にしていることもあって内視鏡検査にも力を入れており、上部・下部内視鏡合わせて年間6,000~7,000件*の内視鏡検査を実施しています。

精度の高い検査によって病気の早期発見に努め、もしも何らかの病気が見つかった場合には責任をもって治療を担当させていただきます。

*上部消化管内視鏡/下部消化管内視鏡……2021年:5,412件/1,228件、2022年:5,817件/1,239件

当院は1989年の開院から病院名に示す如く、地域医療を理念として運営して参りました。2016年の循環器内科の新設を契機として、急性期機能を拡充していきました。当初、当院を“急性期の病院”として認知されている方がどれだけいらっしゃるのかという不安もございました。

病院所有の救急車が4台あります、救急科の専門医や救急救命士がそろっています……などと言っても、これらの医療資源を十分に活用できなければ意味がありません。当院が急性期病院であることが十分に周知されるよう、広報活動に力を入れている所以です。

現在は市民公開講座にご参加いただいた方に向けて、救急科の電話番号を記載したボールペンや、冷蔵庫に貼っていただけるマグネットなどをお配りしておりますが、やはり救急医療における実績を積み上げていくことが最大の広報と言えます。当院のホームページ上に最初に現れる“24hrs 365days”の文字に象徴されるように、静岡県 志太榛原医療圏(焼津市、島田市、藤枝市、牧之原市、吉田町、川根本町)の二次救急医療機関としての役割をしっかりと担ってまいります。

先方提供

当院は、29の診療科と407の病床を有する地域の中核的な病院として、急性期における専門的な医療を行っています。各分野のスペシャリストといえる医師が連携して治療にあたるとともに、迅速かつ適切な治療を可能にする設備の充実にも努めています。今後は新たに手術支援ロボットを導入し、患者さんの体への負担が少ない低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)をご提供してまいります。

一方で、質の高い医療を安定して提供していくための仕組みづくりを進めることも院長である私の役割です。たとえば入院患者さんに提供する食事は、法人グループ共通のセントラルキッチンで作ったものをお出ししています。最近は食材をはじめとしたあらゆるものの価格が値上がりしておりますが、グループ内27の事業所で提供する食事を一括で調理すれば、一食分のコストを大幅に抑えることができるからです。

先々を見据えて戦略を立て、知恵を絞ることで業務の効率化を図り生産性を高めていく……。一見すると医療とは関係のないことのように思えますが、こうした取り組みによって地域の医療が守られていくのです。今後も無駄は省きつつも必要な投資を惜しまず、地域の皆さまの命と健康をしっかりと支えてまいります。

*病床数、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て、2024年5月時点のものです。

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