社会医療法人 仙養会 北摂総合病院は大阪府高槻市にある急性期病院です。循環器分野とがん診療を強みとしながら、幅広い領域の医療を提供しています。
地域医療の中核病院として、院内連携のみならず院外の医療従事者とも連携した医療に取り組み、高槻市周辺の医療機関との高度な地域医療連携体制の構築に力を注いでいます。
北摂総合病院では現在、“隠れ狭心症”ともいうべき“冠微小血管障害”(CMD、微小血管狭心症)の診断と治療に力を入れています。胸の痛みがあるのに狭心症の診断がつかず痛みを我慢している患者さんは40代前後の女性を中心に数多く存在していますが、同院ではそのような方を詳しく診断し、治療まで行うことができます。同院での冠微小血管障害の検査と治療について、病院長の木野 昌也先生にお話を伺いました。
当院では、以下のような症状を訴える方の来院が増えています。
当院で調べると、目で診てわかるような冠動脈の狭窄がないものの、冠動脈の小さな血管である“冠微小血管”の血流障害や(冠微小血管障害)、冠攣縮性狭心症である“INOCA”(冠動脈の狭窄を伴わない心筋虚血)だったという方がたくさんいらっしゃいます。
なぜ冠微小血管障害が分かりにくいかというと、
①冠微小血管障害やINOCAについてのガイドラインは2023年の4月に出たばかりであること
②診断のためには冠微小血管の血流を調べる医療機器が必要になるが、医療機器がまだ普及していないこと
といった理由があります。
胸痛症状を有する患者さんのうち、冠動脈造影や薬物負荷試験で問題がなかったものの、冠微小循環障害を有する患者は17%を占めるとの報告があります。従来の検査法では診断が難しい患者群が相当数ある事が分かります。
当院はCoroFlowという冠微小血管の障害を調べる医療機器を2023年4月から導入しており、従来では見つけにくかった冠微小血管障害を見つけることが可能です。
実際、胸の痛みで当院にいらっしゃった方にCoroFlow検査をすると、従来の検査では問題がないと言われていた患者さんでも冠微小循環障害を認められることがあります。そういう方には胸の痛みを取るよう服薬や生活習慣改善を中心とした治療を行います。
印象的であったのはCoroFlow検査により、冠微小循環障害に問題がない事を確認し、心臓関連痛の可能性は低いと説明をさせていただき、以後、安心して生活をしていただいた当院での症例です。以後、胸痛の訴えも消失しました。この様に適切に診断を行い、“問題がない事を確認する”という事も患者へのメリットであると考えております。
問題ない、ということを確認するだけでも患者さんにとっては安心材料になるのだと学ばせていただきました。
冠動脈カテーテル検査に併せてCoroFlow検査を行います。
この検査は健康保険の範囲で受けることができます。
冠微小血管障害は理解している医師が診れば見逃すことなく診断でき、治療の道筋も明確です。しかし、ご自分が冠微小血管障害を持っていることを知らず、胸の痛みを放置されている方は多いのではないかと思っています。
微小血管障害がある方は、ない方と比べ、3年時点での死亡リスクが約4倍、心筋梗塞のリスクが約5倍高まるという報告もあります。原因不明の胸の痛みでお悩みの方はぜひ、かかりつけの先生に相談のうえ当院へ紹介を受けてご来院ください。