埼玉県さいたま市北区土呂町にある彩の国東大宮メディカルセンターは、さいたま市とその周辺地域の中核的な病院として、また地域でも非常に多くの救急車を受け入れる二次救急(入院や手術が必要な重症患者への救急)医療機関として、地域に密着した医療を行っています。同院の地域における役割や今後について、病院長の藤岡 丞先生に伺いました。
当院は1982年開設の東大宮病院からはじまり、1986年には医療法人社団協友会の一員となって地域医療の中核を担う病院として発展してきました。2015年には彩の国東大宮メディカルセンターへと名称を変更。2023年には埼玉県災害時連携病院・埼玉地域DMAT指定病院となり、いざという時にも地域の皆さんへ質の高い医療を提供できるようになりました。
当院はJR宇都宮線の土呂駅から徒歩11分、車なら大宮駅より約10分、東北自動車道岩槻I.Cより約21分のさいたま市北区土呂町に位置し、アクセスも良好です。地域は公園や緑地が多く、家族連れや高齢者が安心して暮らせる街として知られています。当院はこうした恵まれた環境の中、地域の皆さんの日々の安心と健康を支える重要な役割を果たしています。
当院には内科、外科、整形外科、婦人科など多岐にわたる診療科がそろっています。また糖尿病・代謝・内分泌内科外来、血液内科外来、腎臓内科外来などの専門外来も設けているほか、内視鏡センターや予防医療センターなどの治療支援部門、放射線治療やロボット支援手術などの専門治療にも注力しています。
当院の特徴は、診療科や職種を越えた強固な連携ができることです。特にがん診療の面では、診断から手術、放射線治療、化学療法、さらに緩和ケアまで、高い知識と技術を身につけた多職種の力を集約し、患者さんを中心にした質の高い医療を提供しています。
当院は、救急医療に力を入れており、2023年には5,000件を超える救急搬送を受け入れました。新規患者さんのうち約60%が救急か紹介患者であり、機能分化という観点でいうと、かかりつけというよりは紹介して来院いただく病院といえます。
さいたま市では救急搬送の仕組みが機能する中、当院も大きな役割を果たしています。やはり働き盛りの人が治療を終えて社会に復帰していくのを見ると嬉しいですし、「どこの病院に入院するか」となったときに、顔が見える病院でありたいと思います。
当院は2021年4月に、手術支援ロボット“ダビンチ”を導入しました。当初は泌尿器からスタートし、2022年からは外科も始めています。傷が小さくて済む、奥の方までカメラが入り細かな出血でも見つけられる、今まで縫うのが難しかったところも縫えるなどのメリットがあり、明らかに手術の精度が上がっています。ダビンチ手術は医師と看護師だけではできず、臨床工学技士を含むチームとして行います。これによりモチベーションが上がり、職員全体の士気が高まっているのも効果の1つと言えるでしょう。
また、地元の中学生を対象にダビンチ体験会を開催しており、好評を博しています。「将来医療従事者になりたい」と言ってくれる子も出てきて、ダビンチ導入は地域貢献にもなっていると大変嬉しく思っています。
当院では、救急を中心とした教育活動にも注力しています。たとえば日本救急医学会の認定コースである “ICLS”は、心臓マッサージに加えて除細動器や挿管介助、薬剤の知識を得ることで患者の蘇生を学ぶことができます。
近年の当院での主催は15回に上り、2024年1月からは外部の受講生も受け入れております。医師や看護師、臨床工学技士、放射線技師、リハビリテーション療法士、臨床検査技師などさまざまな職種からの応募者が多く抽選で参加者を決めている状態です。実際、約900人の医療従事者のうち、延べ277人がこのコースを修了しているのはとても意義のある数字だと自負しています。急に倒れられた方に対し、実際に処置をするのは医師であるものの、看護師や技師たちがICLSを学ぶことで倒れた人のところに集まった全員が共通認識をもって蘇生を行えることは、救命率を上げることにつながると思っています。これだけの人数が認定されている病院は全国で見ても少なく、当院はかなり救急への意識が高い病院だといえるのではないでしょうか。
当院は、地域の医療機関との連携を大切にしています。これにより多発外傷や命に関わるような重症の三次救急患者さんは適した他病院で見ていただき、誤嚥性肺炎や脳卒中などは当院で積極的に受け、それぞれの得意分野を生かした役割分担によるスムーズな医療を提供が可能です。他の医療機関さんとはお互いに顔が見える関係が構築できており、これからさらに連携が進むだろうと期待しています。
また地域の人に向けて、救急医療に関連するイベントを実施しています。2023年は救急の日に小学生を対象にイベントを当院で開催しました。イベントは“けがをしたとき、倒れている人を見つけたときに、自分たちで助けられる方法を学ぼう”をテーマに、医師、看護師だけではなく理学療法士、臨床検査技師、臨床工学技士も参加しました。このイベントは親御さんもお子さんと一緒に参加いただいたのですが、その中には病院にはあまりかかっていらっしゃらない方もいます。そういった方々に「病院とはこういうところで、こんな先生や看護師がいるんだな」「病気になったら救急車に乗ってあの人たちのところに行くんだ」と分かっていただきたい、という思いもあったのですが、参加された方からはポジティブなフィードバックをたくさん頂戴し、我々のモチベーションの向上にもつながったと思います。
さらには、中学生に向けて当院のダビンチをリアルに体験いただくイベントも毎年行っています。医療の先端を行くロボットを体験していただき、医療のことや当院について関心を持っていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
さらに2024年6月には地域の救急隊に向けた勉強会も開催し、56名の隊員の方に参加いただきました。勉強会で各診療科の患者さんに対して、どのような治療法があるのか、どの病院がその治療を行えるのかといったことを知っていただき、一刻を争う患者さんの搬送について理解を深めていただきました。これらの活動を今後も地域の医療機関や住民の皆さんと連携しながら行い、顔の見える関係を引き続き構築していけたらと考えています。
彩の国東大宮メディカルセンターは“患者さんも職員も笑顔になれる病院”をモットーとしています。そしてこれからも、職員と患者さんの満足度をもっと上げていきたいと考えているところです。
多くの人が、病院は病気になってから行くというイメージを持っているでしょう。少なくとも、あまりポジティブなイメージはないはずです。私は医療の本質は“患者さんに寄り添う心”だと考えており、当院では病院でありながら病院でないような安らぎの環境を醸し出すことを心がけています。冒頭の写真にもあるように、院内各所にある木と水をイメージしたインテリアを見てホッと一息ついていただけると嬉しいです。
また私たちは患者さんからいただいたお叱りの言葉もお褒めの言葉も、大切にパソコンのスリープ画面や電子カルテの画面などに載せていつでも見られるようにして、職員のやりがいにつながっています。どうか小さなことでも心配せず安心して彩の国東大宮メディカルセンターを受診していただき、ご意見をいただけたら幸いです。