院長インタビュー

高齢化が進むと、高齢者医療はどうなる? これからの医療の課題と未来

高齢化が進むと、高齢者医療はどうなる? これからの医療の課題と未来
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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永生病院は、東京都八王子市で高齢者を中心に、急性期から回復期、慢性期までの医療を担っている病院です。同院の地域医療への取り組みや貢献について、院長の飯田 達能(いいだ たつよし)先生に伺いました。

現在、医療現場では高齢化の進行によってさまざまな課題が顕在化しつつあります。特に最近では、独居高齢者の入院の増加、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)心不全といった慢性疾患をお持ちの患者さんの入院長期化、介護度が高い方や認知症の方の入院治療後の出口の不足などが懸念されています。当院がある南多摩二次保健医療圏(八王子市、町田市、日野市、多摩市、稲城市)も同様で、高齢化によって認知症や脳血管疾患、心不全をはじめとした心疾患糖尿病骨折など、高齢者に多い病気の増加が予想されています。

幸いにも八王子市は、急性期、回復期、慢性期の医療体制がほかの地域に比べて整っていることから深刻な問題にはなっていません。それでも、近隣の医療機関で救急搬送の受け入れができなかった患者さんが当院に搬送されてくることがあり、高齢者を中心に、希望する医療が受けにくいことがあります。

今後の地域医療を考えるうえで重要なテーマの1つが、急性期の認知症患者さんをどこが受け入れるのかということです。以前は当院も、認知症の患者さんの緊急入院を精神科で受け入れることはしていませんでした。しかし、行き場を失ってしまう認知症患者さんを減らさなければならないと考え、認知症専門病棟(精神科病棟)を開設して積極的に受け入れることにしました。主に受け入れているのは自宅から緊急搬送されてくる方や、入所している施設で体調が急変した方です。

病棟は2つあり、1つは認知症身体合併症病棟です。認知症の方は誤嚥性肺炎をはじめとした合併症を患っている方が多いことから、内科と精神科がチームを組んで患者さんを診ています。もう1つは、認知症による徘徊があっても心配なく過ごしていただける認知症専門病棟です。精神科の病棟というと、身体拘束や隔離といったイメージをお持ちかもしれませんが、当院の認知症身体合併症病棟では身体拘束や隔離といった行動制限をしません。一般病棟のように自由に移動できるようになっており、そうした環境で3か月くらい療養いただき、症状が安定したところで自宅や施設にお戻りいただいています。

2024年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟の入院料が見直され、40日を超える入院について点数が引き下げられます。それにより、高齢の患者さんが入院による加療を希望された場合には、40日が壁になって受け入れを断られてしまうケースが増えているのではないかと懸念しています。こうした状況を回避するため、当院では常に空いているベッドを確保・把握し、その情報をスタッフが共有することで、他の医療機関で断られた患者さんを積極的に受け入れる体制を整えました。

たとえば、病棟を超えてスタッフが連携を図っていると、「こっちのベッドがもう少しで空きそう……」などといった情報が院内で共有され、速やかに患者さんを受け入れることができます。私はスタッフの皆さんには常に「みんなワンチームだよ」って声をかけていますが、“断らない医療を提供して地域に貢献する”ためには、皆が1つになって取り組むことが欠かせないと考えています。

また、地域の基幹的な病院には、高齢化に伴って増えると予想される病気について充実した医療を提供することが求められます。そこで当院では急性期、回復期、慢性期の医療をシームレスに提供し、1日でも早い在宅復帰を目指しています。同時に専門性が高い医療を提供する体制も整えました。たとえば、高齢者が発症しやすいパーキンソン病については、パーキンソン病センターを立ち上げ、発症が疑われる方を含めて専門的な治療が受けられます。また、整形外科では、高齢者を悩ませている関節の病気に対応するために関節センターを開設し、人工関節や関節鏡のスペシャリストによる質の高い医療と充実したリハビリテーションを提供しています。また、脊椎の病気についても脊椎センターで、手術をしないですむ治療、たとえ手術が必要でも最小限の負担の少ない手術を提供し、リハビリテーションにつなげています。

このように医療を通して地域と深くかかわり、地域の皆さんが人生を豊かに過ごしていただくためのお手伝いをすることが、地域医療を担う私たちに求められているミッションだと考えています。

何かお困りのことがあれば、ぜひ当院を頼ってください。

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