院長インタビュー

“考える(脳)”と“動く(運動器)”をトータルで支える――横浜市立脳卒中・神経脊椎センター

“考える(脳)”と“動く(運動器)”をトータルで支える――横浜市立脳卒中・神経脊椎センター
城倉 健 先生

横浜市立脳卒中・神経脊椎センター 病院長

城倉 健 先生

目次
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横浜市立脳卒中・神経脊椎センターは、“考えること(脳)”と“立って歩くこと(運動器)”を支える専門的な医療に注力し、急性期から慢性期、在宅支援まで一貫した診療体制を整える市立病院です。脳卒中・神経疾患・脊椎疾患に加え、認知症心不全、整形外科分野にも対応範囲を広げ、横浜市の地域医療を担っています。

地域の医療連携のハブとしての役割を果たしながら、人間らしさを支える医療を実践する同院の取り組みについて、院長の城倉 健(じょうくら けん)先生にお話を伺いました。

外観
病院外観(横浜市立脳卒中・神経脊椎センターご提供)

横浜市立脳卒中・神経脊椎センターは、1999年に“横浜市立脳血管医療センター”として設立されました。当時から、脳卒中の急性期治療だけでなく、その後のリハビリテーション(以下、リハビリ)や在宅支援までを一体的に行うという理念のもと、横浜市が主体となって設計された病院です。

この一貫した診療体制は、非常に先進的な取り組みでした。当時主流だった“臓器別診療”では、心臓や脳といった臓器ごとに診療が分担されるため、どうしても全人的な視点が失われてしまいます。それに対し、“人をトータルで診る医療”を志向した横浜市の構想は、現在の超高齢社会においてむしろ時代のニーズに合致してきていると言えるでしょう。

開設当初は脳卒中とその後のリハビリに特化していた当院ですが、現在は脳神経内科・脳神経外科による神経疾患全般の診療に加え、整形外科による脊椎疾患や膝関節疾患、循環器内科による心不全などにも対応し、診療の幅を広げています。

また、急性期から回復期・維持期までを一貫して診療する体制を整え、“脳と運動器をトータルに診る病院”として進化を続けています。この“脳”と“運動器”という2本柱は、人間らしさを象徴する“考えること”と“立って歩くこと”に対応する分野でもあります。当院は、それらを支えるための診療体制を整えており、たとえば脳卒中治療であれば、24時間・365日体制で血管内治療(血栓回収術)を含めた急性期対応を行えるようにしています。地域の脳卒中診療を牽引する施設として、2022年には日本脳卒中学会より“一次脳卒中センター・コア施設(PSCコア施設)”に認定されました。

さらに、認知症領域にも注力しており、MCI(軽度認知障害)段階からの介入を目的とした“MCI・認知症センター”を設置しました。レカネマブやドナネマブといった新薬への対応も行いつつ、こうした薬剤適応外の患者さんも丁寧にフォローできる体制を整えています。今後は横浜市全体で認知症医療を広げていくため、行政と連携した取り組みにも注力する方針です。

脳卒中は発症から治療開始までの時間が極めて重要であり、“できるだけ早く必要な治療ができる場所に運ぶ”ことが後遺症を減らす鍵になります。横浜市では、脳卒中救急が年間およそ1万5,000件*発生していますが、横浜市内の32病院が連携、分担することで、ほぼ全ての患者さんの迅速な治療を可能にする救急体制を構築しています。当院はこの横浜市の脳卒中救急医療体制を主導しており、連携の維持や治療の質のさらなる向上に努めています。

また脳卒中だけでなく、認知症や神経難病の患者さんの地域包括ケアや在宅支援までを見据えた取り組みも行っており、急性期から慢性期・維持期をつなぐ地域医療のハブとして機能できるよう尽力しています。

*救急隊が症状から脳卒中を疑って搬送した件数 14,856件(2023年1月~12月)

当院が力を入れている分野の1つが“めまい診療”です。めまいは非常に患者数が多いにもかかわらず、専門的に診療できる施設は限られています。一般的には耳鼻咽喉科の領域と思われがちですが、脳卒中など脳の病気が原因で起こる“中枢性めまい”の鑑別が非常に重要であり、脳の専門医による診断が欠かせません。

耳鼻咽喉科で診ることの多い良性発作性頭位めまい症は、耳鼻咽喉科でなくても治療は可能ですが、脳卒中によるめまいは放置すると命にかかわることがあります。脳が原因のめまいを見逃さないためには、初診時に脳神経内科や脳神経外科が関与することが望ましいのです。

当院では、私自身が日本めまい平衡医学会の理事として活動していることもあり、新しい治療法の開発にも積極的に取り組んでいます。研究的な姿勢を持ちながらも、日常診療に還元し患者さんのQOL(生活の質)の向上につなげた診療を行っていることが特徴です。

脊椎外科では、立った状態でX線量を抑えながら脊椎を評価できる装置「EOS」を備えています。若年層の特発性側弯症から高齢者の脊椎疾患まで幅広く対応でき、日本国内でも数少ない機器を活用した診療を行っているのが特徴です。手術件数も多く、地域からの期待の大きさを感じています。

整形外科領域では2023年より膝関節手術用の支援ロボット(ROSA Knee System)を導入しており、低侵襲(ていしんしゅう)(体への負担が少ない)かつ精度の高い手術を実現しています。

加えて、心不全の診療や循環器リハビリもスタートしました。脳と運動器を核としつつ、心臓を含めた全人的な医療へと歩みを進めています。

リハビリ室
リハビリテーション室(横浜市立脳卒中・神経脊椎センターご提供)

当院が目指すのは、人間らしさの象徴である“考えること(脳)”と“立って歩くこと(運動器)”を守る医療です。そして、それを急性期から回復期、維持期まで一貫して担うことに大きな意義があると考えています。患者さんの状態や希望は時間とともに変化しますが、私たちは常に“患者さん本位”で柔軟に支援できる体制を築いてきました。

急性期医療やリハビリ、在宅医療がバラバラに存在するのではなく、1つの病院でまとめて担えるからこそ、連続性のある“有機的な医療”が提供できると信じています。

横浜市の医療を支える一員として、そして地域住民の健康を守る身近な存在として、これからも努めてまいります。脳の異変や体の不調を感じたときは、どうぞ安心してご相談ください。

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  • 横浜市立脳卒中・神経脊椎センター 病院長

    城倉 健 先生

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