そとすしょうこうぐん

ソトス症候群

概要

ソトス症候群とは、先天的な遺伝子異常を原因とし発症する症候群のひとつです。大頭、過成長、骨年齢促進、精神運動発達の遅れ、けいれんなどを特徴とします。遺伝子異常に起因する病気は、出生後もしくは出生前から診断されるものも多いですが、ソトス症候群の診断は生後数か月や幼児期になってから、過成長や発達の遅れ(首の座りや歩くのが遅い、発語が遅れるなど)をきっかけとして診断されることも多いです。成長発達面以外にも、ADHDやかんしゃく、けいれんや心臓、腎臓、眼、骨格系などの合併症を併発することも知られており、多角的な側面を通してのアプローチが必要です。過成長は年齢と共に落ち着く傾向があり、ゆっくりではありますが発達面も成長と共に認めます。ソトス症候群をもっていないご両親のお子さんに認めることもあり、日本においては1〜2万人に1人の発生率と考えられています。

原因

ソトス症候群では、NSD1遺伝子の異常が原因です。正常なNSD1遺伝子は、ある特定の遺伝が必要に応じて適切に作動するように、調整するはたらきをしています。しかし、ソトス症候群の患者さんでは、NSD1遺伝子の一部分が欠失していたり、その機能が失われたりしています。ただし、すべての患者さんにおいて同遺伝子異常が認められる訳ではなく、NSD1遺伝子以外の関与がソトス症候群を引き起こしていることも疑われています。多くのソトス症候群は突然発症であり、両親がソトス症候群でなくてもソトス症候群の子どもが出生する可能性があります。しかし、ソトス症候群の方の場合、50%の確率でNSD1遺伝子異常が子どもに伝わり、ソトス症候群を発症する可能性があります。

症状

ソトス症候群は、過成長、発達面の遅れ、特徴的な顔貌(がんぼう)、の三つで特徴付けられます。

過成長

出生前から過成長がみられ、身長、体重、頭囲は生下時から+2.0SDを超えることがあります。幼少期では、同年齢の子どもと比較しても身体の大きさが目立ちます。年齢と共に過成長は落ち着く傾向にありますが、最終身長も平均よりは大きくなることが多いです。

発達面

発達面の遅れは、運動面・精神面に見られます。お座りが遅れたり、寝返りが遅れたり、歩くのが遅れたりしますが、最終的にはこれらの運動は達成されることが多いです。また、手先の器用さなどの発達も遅れることが多く、ものをつかんだり遊んだりするのが苦手です。筋肉の発達がうまくいかずに、哺乳面が遅れることもあります。中には経口哺乳がうまくいかずに、チューブで栄養を取らざるをえないこともあります。発語面でも遅れることが多く、筋肉の発達と共に徐々に発語も認めるようになります。そのほか、精神面も含めて、日常生活に支障をきたす症状が生じることがあります。たとえば、ADHDによって衝動性や落ち着きのなさが生じ、集団生活になじめない可能性もあります。また、かんしゃくを起こすことがあったり、突発的な感情変化を見たりすることもあります。

特徴的な顔貌

出生後からの特徴として、頭が大きいこと、前頭部の突出、前頭部の毛髪線の後退などがあります。こうした特徴は幼児期以降も引き続き認められます。

その他、臓器面の特徴

その他、各種全身臓器に関連して、合併症を見ることもあります。具体的には、心臓合併症(動脈管開存症心室中隔欠損症)、腎泌尿器合併症(水腎症膀胱(ぼうこう)尿管逆流、尿路感染症、腎形態異常)、けいれん、側弯(そくわん)(背骨の曲がり)などです。また、耳の合併症(中耳炎聴覚障害)、眼の合併症(屈折異常、斜視)、歯科的症状(早期萌出(ほうしゅつ)歯肉炎、何本かの永久歯欠損、歯並びの問題)を見ることもあります。これらの症状は乳幼児期に問題になるものもありますが、幼児期、学童期、成人になってから問題になるものも多くあります。

検査・診断

ソトス症候群を引き起こすNSD1遺伝子異常は、日本人においては、ほかの人種と比較して違いが多いことが知られています。日本人では、遺伝子の一部分が失われている「欠失」というタイプの遺伝子異常が多いです。このことを反映して日本人においては、欠失部位を検索するために、血液を用いた「FISH法」と呼ばれる検査が行われることがあります。一部の方では、遺伝子の欠失がおきていなく、FISH法では確認できないこともあります。その場合は、さらに「シークエンス法」と呼ばれる方法が検討されることもあります。

治療

ソトス症候群の治療は、症状に応じた対症療法が中心になります。乳児期の頃は、哺乳障害が問題になることもあります。経口哺乳が取れない場合には、チューブ栄養が行われることもあります。心疾患や腎泌尿器系の異常が乳児期早期に問題になることもあり、内服薬や手術的な治療介入を行うことがあります。幼児期以降はけいれんが発生することも多く、抗けいれん薬を使用することもあります。歯や骨格、眼に異常をきたすこともあるため、各種診療科と連携の上、治療介入が行われます、また、運動発達面の遅れに対しては、理学療法や作業療法を取り入れ成長を促します。療育への連携をはかるために、作業療法や言語指導が行われます。ADHDなどを合併することもあるため、周囲の環境も交えたサポート体制が必要とされることもあります。

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