たんじーるびょう

タンジール病

別名
アルファリポ蛋白欠乏症
最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

タンジール病は、HDLコレステロールの値が異常に低くなる指定難病のひとつです。アルファリポ蛋白欠乏症とも呼ばれます。この病気では、血液中を流れるHDLと呼ばれるリポタンパク粒子をつくることができません。そのため、生まれつきHDLコレステロールの値が異常に低くなり、さまざまな身体所見や症状が現れます。

現時点では、世界でも100例程度の報告しかない非常にまれな病気です(2018年5月時点)。

タンジール病は、あらゆる年代で発見あるいは発症する可能性があります。また、遺伝形式上、男女ともに発症する病気です。

原因

タンジール病の原因は、ABCA1と呼ばれるたんぱく質の遺伝子変異による機能異常です。ABCA1は、HDLをつくる物質のひとつです。ABCA1の機能異常によってHDLがつくられなくなると、この病気が起こります。HDLがつくられないためにHDLコレステロールの値が異常に低くなります。

*HDLコレステロール:HDL(体の細胞で余剰となったコレステロールを肝臓に運ぶ粒子)の中に含まれるコレステロールのこと。HDLは脂質が蓄積して動脈硬化を起こした血管からもコレステロールを引き抜くことができます。そのため、HDLコレステロールを「善玉コレステロール」と説明することがあります。

症状

タンジール病では、本来余ったコレステロールを取り除いてくれるHDLがうまく機能しないために、各臓器にコレステロールが蓄積していきます。コレステロールの蓄積によって、さまざまな身体所見や症状が現れます。ただし、患者さんによって現れる身体所見や、症状の重症度は異なります。

オレンジ扁桃

オレンジ扁桃は、タンジール病の身体所見のひとつです。オレンジ扁桃とは、喉にある扁桃腺(へんとうせん)がオレンジ色あるいは黄色になることです。さらに、扁桃腺が腫れて大きくなります。

肝臓や脾臓の腫大

肝臓が腫れて大きくなることがあります。また、脾臓(ひぞう)が腫れて大きくなる場合もあります。脾臓の腫大に伴い、血小板が少なくなったり貧血を起こしたりすることがあります。

目の角膜混濁

目の角膜にコレステロールが沈着し混濁することがあります。視野がくもった感じになり、視力低下につながります。

各臓器へのコレステロールの蓄積

リンパ節、胸膜、腸管粘膜、皮膚、角膜などにコレステロールが蓄積することがあります。

末梢神経障害

末梢神経障害による知覚障害や運動障害などが現れることがあります。知覚障害では、痛みや温度を感じにくくなります。

狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の発症

余ったコレステロールが取り除かれず蓄積すると、動脈硬化(動脈の壁が厚くなったり硬くなったりすることで、血管が細くまたもろくなる状態)が進行しやすくなります。動脈硬化の程度が強くなると狭心症心筋梗塞脳梗塞などの病気を引き起こすことがあります。

検査・診断

タンジール病は、HDLコレステロールの低い値と、身体所見や症状をもとに診断されます。

血液検査

タンジール病の診断では、血液検査によってHDLコレステロールと血中アポA-1濃度の値を調べます。HDLコレステロールが10mg/dL未満、血中アポA-1濃度が10mg/dL未満であると、この病気の可能性があります。ただし、他の病気(アポA-I欠損症やLCAT欠損症など)でも同様の検査所見を認めるため、HDLコレステロールの値だけで診断されることはありません。

症状の確認

血液検査の結果とともに、以下の症状が2つ以上現れていることを確認していきます。

遺伝子検査

遺伝子検査によってABCA1の遺伝子異常が確認されれば、確定診断となります。

治療

現時点では、タンジール病の根治的治療はありません(2018年5月時点)。そのため、経過観察をしながら、主に症状を和らげる、あるいは進行を遅らせる治療が行われます。

狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の予防

もっとも注意しなくてはいけないことは、狭心症心筋梗塞脳梗塞などの病気が起こることです。そのため、動脈硬化を進行させる他の危険因子をコントロールすることが大切です。たとえば、喫煙をしている場合の禁煙や、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の管理が行われます。

扁桃腺の摘出・角膜移植

オレンジ扁桃に対する治療では、扁桃腺を摘出する治療が行われることがあります。また、角膜混濁に対する治療として、正常の角膜を移植する角膜移植が行われることがあります。

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