インタビュー

日本人に多い過眠症、ナルコレプシー

日本人に多い過眠症、ナルコレプシー
本多 真 先生

東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野・睡眠プロジェクト プロジェクトリーダー

本多 真 先生

この記事の最終更新は2016年02月22日です。

眠気は身近なものですが、病的な眠気「過眠」は、不適切な時に眠り込んでしまう、あるいは総睡眠時間がのびてしまう症状をさします。過眠症状が3か月以上つづき生活に支障が生じると病気として治療の対象になります。このうち過眠症状の原因が脳にあると考えられる病気を過眠症といいます。過眠症は重症度によって違いはありますが、歩行中や会議など、通常ならば寝てはいけない重要な場面でも我慢できないほどの強い眠気に襲われてしまう、突然眠ってしまうという特徴があります。ナルコレプシーについて、東京都医学総合研究所睡眠プロジェクトリーダーの本多真先生にお話をうかがいます。

ナルコレプシーは、「過眠症」のひとつです。過眠症をごく簡単に説明すると「眠くなる病気」です。眠くなる病気の中には、いくつか種類があります。

眠くなる病気の代表的な原因は、「寝不足」と「睡眠時無呼吸症候群」です。現在日本人の睡眠時間自体が非常に短くなっていますが、睡眠量のみならず質も悪くなっていることが問題視されています。睡眠時無呼吸症候群の場合、「しっかり睡眠時間をとっても眠りの質が悪いために」眠くなります。夜の眠りが障害される代償として日中に眠くなるのです。ですから、眠りや目覚めの調節機構自体は正常に働いていると考えられます。

ところが、夜の眠りの量や質に関係なく眠くなる過眠症があります。これを「過眠症」と呼びます。ナルコレプシーは、その「過眠症」のなかでも代表的な病気です。脳の覚醒中枢の働きが悪くなっているために、起き続けられずに眠り込んでしまうと考えられています。

特発性過眠症は、過眠症のなかでナルコレプシーと並ぶ代表的な病気のひとつです。

量・質ともに十分な睡眠をとれていて、体も脳も十分に回復しているにもかかわらず、脳がまだ眠ろうとするシグナルを出てしまうのが特徴です。ナルコレプシーとは反対に、睡眠中枢が必要以上に働いてしまう病気と考えています。

特発性過眠症では、睡眠中枢が働いている一方で覚醒中枢(目を覚まそうとするシグナル)は正常に働いていると考えられます。そのため「目が覚めようとしながら眠ろうとしている」とても矛盾した状態です。ですから、特発性過眠症の方たちは目を開けていることはできます。しかし、眠気で常にボーっとして一日中すっきりしない、という症状に悩まされてしまうのです。

ナルコレプシーの患者さんは、日本では600人に1人存在するといわれています。しかし、本人はなかなかこれらの症状を病気と認識しないことが多く、周囲の人々も気づきません。「なんとなくだらしない」「意欲が足りない」「真面目にやっていない」から、大事な場面でも眠ってしまうのだと思ってしまうのです。周囲も本人もそう思っているため、病気と疑うことがなく病院を受診することがありません。そのため、診断すらされないのです。

また、症状があっても、たとえば自営業や畑仕事で生計を立てている方のうち、2時間程度ごとに休憩をとり、短時間の昼寝ができる環境が整っている場合には、特別な治療をしなくても自然に生活が成り立っている場合もあります。統計はありませんが、日本で治療をうけている方は1万人に満たないと思われます。もし生活の支障が軽い方を含め、症状を持つすべての方が受診して正確な患者数を把握できたならば、実際の患者数は多くなると思われます。

性差はないとされます。ただし、ナルコレプシーが原因で社会生活に何らかの支障をきたし受診する方は、男性が多いです。女性の場合、結婚して家庭に入る方が少なくないため、会社勤めよりも時間や生活を自分でコントロールできる環境をつくりやすいことも影響しているかもしれません。

ナルコレプシーは、病院を受診しても、専門的な検査の施設や睡眠障害の診断ができる医師がいなければ、てんかん睡眠時無呼吸症候群を疑われ、適切な治療に至らない場合があります。今では病名の認知や診断が浸透してきましたが、まだまだ早期の診断・治療に至らないような患者さんが多い病気であるといえるでしょう。

 

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  • 東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野・睡眠プロジェクト プロジェクトリーダー

    本多 真 先生

    精神科臨床医よりキャリアをスタート。スタンフォード大学睡眠研究所への留学後、睡眠研究の世界に。2018年5月現在、月6日で神経研究所附属晴和病院にて睡眠専門外来をしながら、東京都医学総合研究所にてナルコレプシー/過眠症に焦点をあてた研究をすすめている。

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