概要
ライ症候群とは、インフルエンザや水疱瘡などに続発し、急性脳症や肝臓への脂肪沈着などが現れる病態です。
主に小児が発症します。ライ症候群が起こることはまれですが、一度発症すると症状が重くなりやすく、死に至る例もあります。
原因
ライ症候群は、先行するウイルス性疾患に続発して発症します。先行するウイルス性疾患の代表例はインフルエンザや水疱瘡です。これらのウイルス性疾患に感染した後ライ症候群を発症するメカニズムは、完全には解明されていません。
ライ症候群の発症には、いくつかのリスク因子が関与していることがわかっています。たとえば、インフルエンザや水疱瘡などにかかった際に、一部の解熱鎮痛剤を内服することで発症のリスクが高まるとされています。
ただし、すべてのお子さんが、関連性が指摘される解熱鎮痛剤の内服によりライ症候群を発症するわけではありません。そのため、個々人が発症のリスク因子を持っていることも想定されています。
リスク因子のひとつには、脂肪酸の代謝に関わる先天的な代謝疾患があります。先天性代謝疾患を持っていると、健康なときには無症状でも、インフルエンザなどのウイルス性疾患に罹患したときに症状が現れることがあります。この状態と一部の解熱鎮痛剤の内服が重なることが、ライ症候群の発症に関与していると考えられています。
近年では診断技術が向上し、これまでライ症候群と考えられてきた症例のなかに、尿素サイクル異常症やミトコンドリア呼吸鎖異常症などの先天性代謝疾患がみつかっています。
症状
ライ症候群は、先行するウイルス性疾患に続発して発症します。先行するウイルス性疾患の代表例はインフルエンザや水疱瘡で、発熱や倦怠感、筋肉痛、皮膚の水ぶくれなどをきたします。先行するウイルス性疾患を発症してから1週間以内にライ症候群による症状が出現します。
ライ症候群の初期症状には以下のものがあります。
- 乳児の場合:下痢や多呼吸
- 年長児の場合:吐き気や頻回の嘔吐
進行すると、中枢神経障害に関連した以下の症状が現れるようになります。
- 傾眠傾向:完全に眠ってはいないが、うとうとした状態
- 易刺激性:些細なことですぐに不機嫌になる
- 異常興奮
- 手足の麻痺
- けいれん
など
さらに病状が進行すると、意識消失から呼吸停止に至ります。肝臓の急速な機能障害も伴うため、正常な止血機能が障害され、消化管出血をきたすこともあります。
検査・診断
血液検査
ライ症候群では、急激な肝機能障害がみられることもあります。そのため、血液検査では肝臓に関連した検査項目の異常がみられます。
たとえば、血液中のASTやALTという酵素の値が高くなります。またライ症候群では、肝臓が有害なアンモニアを解毒する作用が低下するため、血液中のアンモニアも高くなることがあります。肝臓は、血液を止血する「凝固因子」と呼ばれる物質を作る機能も持っています。ライ症候群を発症すると、APTT やPT と呼ばれる凝固機能に関連した検査項目も異常を示します。また、血糖を保つことができずに低血糖を呈します。
画像検査
ライ症候群では、急性脳症を起こすため、頭部CT やMRI などの画像検査で脳が腫れていることが確認されます。
その他
髄液を採取して調べる検査では、髄液細胞数の増加がないという特徴が確認されます。そのほか、ライ症候群を発症する患者さんは、基礎疾患として何かしらの先天性代謝疾患を持つ可能性もあるため、代謝異常のスクリーニング検査もなされます。
治療
治療の中心は急性脳症と肝機能障害に対するものです。
急性脳症に対する治療
脳の腫れを改善させるために、以下の治療を行うことがあります。
- 挿管管理の上呼吸回数を増やす
- 水分制限を行う
- 浸透圧利尿剤を投与する。
肝機能障害に対する治療
正常な止血機能が障害されることで起こる出血傾向に対しては、ビタミンKの投与や新鮮凍結血漿輸血などが行われます。
予防
ライ症候群は予防がとても大切な病態です。子どもの発症を回避するために、関連性が強く疑われる一部の解熱鎮痛剤を避けることが重要です。
病院の小児科などでは、インフルエンザや水疱瘡であっても、ライ症候群を引き起こすことなく使用可能とされる薬が処方されます。手元にある解熱鎮痛剤を自己判断で使用するのではなく、医師の指示に従うことが重要です。
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